湯船を見る。ふたりがゆったりとお湯に浸かっていた。
すずかが少しのぼせたように顔を上気させていた。目もうつろだ。アリサのほうも少し呆けているようだ。
「二人とも、大丈夫?」となのはが近くによると、すずかはなのはの手を取って、なのはの指を指を子猫のようペロペロと舐めだした。
「え?すずかちゃん?ちょっと・・・」なのはは慌ててすずかを解き放とうとしたけど、切ない声をあげて床にへたり込んでしまった。
なのはが体をひくつかせるたびに、手にもっている琥珀の輝きが増した。そこで、私はなんとなくだけどすずかにキーホルダーを当ててみた。
すると、キーホルダーの輝きが消えるのと引き換えにすずかの目に光が戻る。赤くなっていた顔もすっかり元通りになっていた。
「私、一体・・・な、なのはちゃん、ごめんなさい」すずかが謝る。
「い、いいよ。謝らなくても。わたし何ともないし。それよりも、アリサちゃんが…」見るとアリサは顔を真っ赤にして
少しずつ湯船に沈んでいく。口と鼻が浸かったところで動きを止めて、お湯をぶくぶくさせている。
「ヴァダディ、ヴォヨヴェニイゲナグナヂャッダ。」目に少し涙を浮かべている。
すずかの方を見ると、こっちも目を潤ませて今にも泣きそうになっている。
私はすずかの方に行き、目をじっと見詰める。そして、ぽんぽんと背中を軽くたたいた。
すると、すずかの目にたまっていた涙が一筋流れ、すずかは私の胸に抱きついてきた。
「私、どうしたの?どうなっちゃったの?」少し混乱しているようなので、私はすずかの頭を抱え、ゆっくりと撫でた。。
アリサのほうを見ると、まだ湯船に沈み込んだままのアリサをなのはが苦笑しながらよしよしと頭を撫でている。
なのはが撫でていた手を止める。アリサがなのはを見上げる。少し言いにくそうに口を開くなのは。
「ちょ、ちょっと体を洗ってくるから少し待ってて」アリサはすがるような目でなのはを見つめる。
なのははあははと乾いた引きつり笑いを浮かべてお風呂場のいすに腰をかけた。
私もすずかの嗚咽が引いたところで体を洗いに向かった。