しばらくして、なのはは牛乳と小さいボウル皿を持ってきた。お皿を置いてそこにミルクを入れると、恐る恐る子狐が近づいてきた。
でも、ある程度まで近づいたところで子狐は動きを止めてしまい、それ以上近寄ろうとはしなかったので、
私たちは狐をびっくりさせないように部屋いっぱいまで後ろに下がった。
子狐がボールに口を当て、ぴちゃぴちゃと皿の中を舐める。数分もしないうちにボウルの中身が空っぽになったようで、
からからと音を立ててお皿を鼻で回した。なのははそれを見てお皿を取ろうと子狐に近づいた。
子狐は今まで怖がっていたのに、なのはに近づいてお皿を取ろうとしていた手を舐めた。
それを見て、私は子狐に近づく。それを見た子狐は再び部屋の隅に駆け出し、縮こまってしまった。
なのはが苦笑する。私はちょっぴり悲しかった。
私はなのはからお皿を受け取り、キッチンに向かった。途中、アリサとすずかがなのはに抱かれた狐を撫でてはしゃいでるのが聞こえた。
お皿を洗ってるときにふと、拾ってきたばかりのアルフのことを思い出した。
あの狐よりももうちょっと大きかったけど、もっと人懐っこかったような気がする。
…アルフ、どこにいっちゃったんだろう。漠然とした場所はわかるのだけど、
向こうから積極的に教えてくれないと正確な場所までは特定できない。
それに、ここから大分遠い場所にいることは確か。ひとっとびで飛んでいければいいのだけど、
へたに魔法を使うわけにもいかないし…。
お皿を洗い終わって、牛乳パックを冷蔵庫に入れた。
そして、パンを一切れ明日の朝食用であろうバケットの中から取り出してなのはの部屋に向かった。
「ちょっとすずか、ずるい。あたしにも触らせてよ」部屋から嬌声が聞こえてくる。
ドアを開けるとなのはに抱かれて震えている子狐の頭を代わる代わる撫でていた。
私はパンをちぎって手のひらにおき、子狐の口元へ持っていった。くんくんと匂いをかいで恐る恐る
鼻でパンをつついた後、ぱくっと一口で平らげた。
「わぁー」なのはがうれしそうな声をあげる。私たちはパンをちぎっては与え、ちぎっては与えを繰り返した。