―ミッドチルダ辺境、某所―
「『センターポイント』とは、また随分と大きく出たな」
「ああ、すいませんクロノさん。剣を向けたままでしたね」
少年が目配せをすると、クロノに切っ先を向けていた剣士が、剣を鞘に収めた。
「…いいのか?」
「構わないよ。あなたなら、この状況でムチャをするとは思えない。だろ?」
クロノは答えなかった。目線の先には、5人の局員が捕らえられている。
彼らの周りに立つ魔導師らしき男は、局員よりもクロノに目を光らせていた。
(3対1、か…)
少年と剣士を相手にしていては、局員が確実にやられる。かといって向こうの
魔導師を狙えば、自分がしとめられる。
先の手合わせを思えば、この少年の魔導師としてのレベルはAAA以上だ。
局員を人質に取られた為、一度は互いに手を引いたものの、
そのまま続けていても、確実に勝てるという保証はどこにもなかった。
(何か、いい手段はないか…?)
頭の中で、自分の持つ魔法を様々に組み合わせたシミュレーションを行ったが、
そのいずれも、クロノの望む結果をもたらすことはなかった。