「時空転位型ロストロギア、センターポイント。装置それ自体には
大きな魔力は備わっていないが、術者の魔力を与えることで、空間や次元はおろか、
『時間』をも超越した転送を可能にすると言われている」
「…知ってるんだ」
「ロストロギア関連の事件は、いくつか担当したことがあるからね。
名前くらい、聞いたことあるさ」
「ふーん…流石だね」
少年の瞳が警戒心を増すのを、クロノは見逃さなかった。
「だが…センターポイントは未完成のデバイスだ。管理局が保管しているのは、
万が一の危険に備えてのものさ。残念だったな」
「そうでもないさ。その0.01%は、ここにある」
言いつつ、少年はポケットから小型の魔力ケースを取り出した。
「まさか!? 有り得ない! …たとえそれでセンターポイントが完成しても、
時間転送がうまくいく確率なんて、それこそ万に一つどころじゃない!
次元の狭間か虚数空間に、確実に飲み込まれるぞ! 正気か!?」
「…そうだね。僕は狂ってる。でも、それを自覚してさえいれば、
時に狂気は『覚悟』へと変わり、自分を進める力になる。違う?」
「覚悟だって? そこまでして、君は何を手に入れたい!?」
語気を強めるクロノ。それに対し、少年は強く言い放った。
「手に入れる? 違うね、僕は『取り戻す』んだ! 『闇の書』に奪われた、僕の過去を!」