少年の荒い息づかいが部屋に反響する。睨み合いの後、沈黙を破ったのはクロノだった。
「『闇の書』、だと…?」
「知ってるだろ!? A級捜査指定ロストロギア、闇の書。魔力蒐集型のデバイスで、
第三者の魔力を食うことでそれを蓄積し、最後には暴走して全てを破壊し尽くす、
悪魔の書物さ! …僕の両親も、奴等に殺された…!!」
「…」
「11年前さ。平和に暮らしていた僕たち家族に、突然3人の人間と1匹の狼が
襲ってきた。そいつらとの戦いで肉体的に傷ついた父さんと母さんは、
吸収されたリンカーコアが回復しきる前に、命を落とした…!」
「それで、君は…」
「そうだ。僕は過去に立ち戻って、あの悪魔のデバイスが完成する前に消滅させる!
そして、僕たち家族の幸せを取り戻す!」
涙ながらに、少年は叫んだ。
「邪魔しないでくれ、クロノさん…。センターポイントさえ手に入れれば、
僕は必ずあなた達を解放する。その場で時間転送を行って、絶対に危害は加えない。
上手くいく可能性が低いことなんて知ってる。
だけど、歴史を大きく変えようなんて思っちゃいない。ただ、あの小さな
幸せを取り戻したいだけなんだ…! 考えてみてよ、クロノさん。
闇の書には転生機能が備わっていて、これまで何度も暴走を繰り返してきた。
僕が戻れば、闇の書に奪われた多くの命を幸せを守れる!
たとえ失敗したところで、僕と共にセンターポイントが完全に消滅するだけだ。
どちらにしたって、あなた達にデメリットなんて無いだろ!?」