「…過去の闇の書を滅ぼせば、『闇の書に過去を奪われた存在』である君は消滅する。
初めから、片道のつもりなのか」
「そうだね。だからこそ、成功する確率なんて関係ない。
可能性が『ある』のか『ない』のか、それだけが問題なんだ」
そう語る少年の眼差しは、決意に満ちていた。
丁度、クロノと同じように。
「…それでも、僕は君を止める。何としても。この身に代えても」
渇いた音を響かせ、白銀の杖が起動した。
「…残念だな。あなたなら、分かってくれると思ったのに」
カチ、と少年が杖を構える。刹那、空気に緊張が走った。
「あの5人じゃ、人質としては心許ないけど、仕方ないかな」
少年が薄く笑い、魔法陣を展開した、その時。
ドォン!という音と共に、塔の壁に風穴が空いた。
同時に、閃光が室内を駆け抜け、少年へと向かっていく。
「バルディッシュ!」 『Scythe Form』
ギィイイン! 少年の脇にいた剣士が、フェイトと少年の間に割り込んだ。
「フェイト!?」 驚くクロノに、背後から声が届く。
「クロノ君、よけて! シュート!」
ドォン! なのはのディバインバスターを、今度はもう一人の魔導師が受け止めた。
(…今だ!)
クロノは、局員たちの元へ全速力で飛び出した。
「強行突入か。でも甘い! 駒不足だ!」
砲撃魔法が、クロノと局員達をめがけて放たれる。再びの爆音。
「クロノ!」「クロノ君!」
「無理だね。あの一瞬で、自分と5人を同時に守り切るバリアなんて不可能だ」
「…確かに、『全員なら』、ね」
煙の中から、クロノがゆっくりと現れた。