「…自分を犠牲にして、局員達の方だけにバリアを集中させたのか。ムチャするね」
少年は苦笑いを浮かべた。
「一度砲撃魔法は見ているからね。それに、魔法陣を展開させていたとはいえ、
あの一瞬で僕と5人を同時に倒す砲撃なんて不可能だ」
「…言ってくれるじゃん。確かに、力が分散したことは認めるさ。
転位魔法で逃げる時間を失ったこともね。でも、あなたの腕だって
かなりの重傷のはずだ。出力不足とはいえ、直撃だからね」
「まあね。左腕は、しばらく使えそうにないかな」
左腕を垂れ下げたままのクロノの隣に、ユーノが駆けつけた。
「クロノ、大丈夫?」
「…なんだ、今日はフェレットじゃないのか」
「その台詞が言えるってことは、問題ないみたいだね」
やれやれといった様子で、ユーノは笑った。
「それより、どうやってここに? 結界が破壊された気配は感じなかったのに」
「僕が一部を『解除』したんだ。破壊音がしなかったのはそのせい」
「…良い腕だな、相変わらず」
「クロノから誉められるなんて、随分と久しぶりだね」
「うるさい。それより早く、局員のみんなにバリアを」
「大丈夫、もうやってるよ」
キィン! クロノの張ったバリアの外側に、もう一枚の光が重なった。
「これで問題なしでしょ?」
「ああ。にしても、なかなか良い連携じゃないか。作戦は誰が?」
「みんなで考えたんだ。集中一点突破は、君のおかげで慣れてるから」
「成る程…ただ、随分と荒っぽい突入だな」
「それはほら、壁こわしたのがアルフだから」
そう言って、2人は笑いあった。
「なのはの方に行ってくれ。…彼は、僕が止める」
「OK。言っても無駄だろうけど、『無理しないで』」
肩をぽんと叩くと、ユーノは塔の外へと飛んだ。