「…いいんですか? 一人で」
飛び去ったユーノを見ながら、少年は静かに言った。
「君の方こそ、僕らが話している間に、転位魔法の一つでも使えば良かったじゃないか」
「冗談でしょ? 談笑してたくせに、あなた達は常に僕に注意を向けてた。
逃げだそうとしてたら、逆にその場で捕まってたさ」
「…大したものだな、君も」
クロノは、思わず苦笑いした。
「第一、僕には逃げる理由なんて無い。守るべきものがないからね。
ま、人質がいなくなったクロノさんも、同じ条件か。これで五分だね」
「五分…? 違うさ。僕には、たくさんの守るべきものがある。仲間や、世界。
大切な今と…『未来』だ」
「…つくづく、意見が合わないね」
「構わないさ。何かを、そして誰かを『守ろうとする意志』が何よりも強いってこと、
教えてやる。…行くぞ」
右腕でクルクルと杖を回すと、クロノは少年に飛びかかった。
最終局面、開始。