―2日後、5番艦『フェンリル』休息室―
「…ヒマだぁ!」
ヴィータが声をあげ、椅子から立ち上がる。
「こらヴィータ、静かに」
本を閉じ、苦笑いするはやて。
「だって…はやてが久しぶりの連休で、せっかく一緒に遊べると思ったのに…」
「しょうがないわよ、ヴィータちゃん。これも、大切なお仕事なんですから」
「その通りだぞヴィータ。第一、今我らがこうして主と共にいられるのは、
管理局への協力が条件だという事を忘れるな」
「わあってるよ」
ぷん、と拗ねるヴィータ。
「シグナム。シグナムも、そんなにぴりぴりしたらあかんよ。
せっかくみんな一緒におるんやから、もっと楽しく過ごさんと。な、ザフィーラ?」
「はい」
特別捜査官として、5番艦での任務補佐についていたはやて。
レティ提督の計らいもあり、ヴォルケンリッターの四人がそれに付き従っていた。
「それにしても、今回の犯人さんって、何が『目的』なんですかね?」
「確かにな。管理局を襲っておきながら、ここまで死者がいないというのは妙だ。
以前艦船に乗り込んだときには、あの魔導師は本局への『アルカンシェル』発射を
示唆していたらしい。あれを本局に打ち込めば、それこそ犠牲者は数千人を超える。
…そういう意味では、今の行動には一貫性がない」
シャマルの用意した紅茶を飲みながら、シグナムが真剣な表情で語る。
「…みんなが、わたしの為に闘ってくれてたときと同じで、他の理由が?」
はやての言葉に、騎士達の表情が曇る。慌てて、彼女は付け加えた。
「あ、みんなの事を責めてるんと違うよ! みんなは、わたしのためを思って、
必死に闘ってくれたんやから。それに今のみんなは、たくさんの人を守る為に闘ってる。
もし、シグナム達のことを悪く言う人がおったら、わたしが絶対に許さへん!」
真剣な様子でそう語る主に、騎士達は微笑みで応じた。
「…有難うございます」 「…」 「はやてちゃん…」
「はやて…」 ヴィータが、はやてに抱きつく。はやてはよしよし、と頭をなでた。
「みんな、どーせなら、わたしらがあの魔導師捕まえて、クロノ君たちを驚かせたろ!」
「お〜♪」
笑顔で手をあげる、シャマルとヴィータ。残る二人は、微笑と共に頷いた。
―この僅か20分後、彼女達の目の前に『EMERGENCY』の文字が現れる。