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[240]jewel :【Turn against】 2006/02/07(火) 18:45:26 ID:r/l1SA2h

【Turn against】 【X】

「はっ!」
 幾度目かの少年の斬撃。シグナムは、それを巧みに捌き…はじき返す。
「くっ…!」 ズサァ!
 衝撃を足先から床に滑らせ、少年はこらえた。摩擦力と彼の脚力が衝撃に上回った瞬間、
彼は再びシグナムに飛びかかっていく。
 無謀、ともいえる突進だった。度重なるその攻撃を、シグナムは的確に避け、捌き、
受け流し…そして反撃に転じる。
 此度の少年の肩口からの一振りも、しなやかに身体を反転させてかわす。
「紫電…一閃!」
 捉えた、とシグナムは思ったが…炎を帯びた剣からは、何の手ごたえも伝わってこない。
 少年の姿は、部屋の隅にあった。
(…やはり、速いな。この速さ、或いはテスタロッサ以上かもしれん…)

「はぁ、はぁ… 強い、ですね…」
 やや息を荒くしながら、少年は感嘆に満ちた眼差しで言った。
「諦めろ。その程度では、我が身に傷を与えるのは不可能だ」
 シグナムが言い放つ。確かに、少年は速い。だが、それだけなのだ。
 斬撃の型はでたらめ、そして何の駆け引きもない単調な突進。
 度重なる歴戦を生きてきたシグナムの技・経験・読みは、「速さ」という一項目
のみで埋められる程、浅いものではなかった。
 少年はもう一度飛びかかるも、シグナムに完全に見切られる。
「…もう一度いう。諦めて、あの魔導師の向かう場所を言え。
 今のお前より、私の方が上だ」
「そうみたい、ですね… とてもじゃないけど、敵わないや」
 少年は苦笑いすると、僅かに湾曲している剣を鞘に収める。

 ―諦めたのか、とシグナムは思った。
 しかし次の瞬間、少年の剣を中心に、静かに魔力が集まっていく。
「…すみません、先生。コレ使わないと、ちょっとムリみたいなんで」
 俯きながら薄く笑うと、鞘に収めたまま、少年が身構えた。
「レヴァンティン」
 シグナムの声で、カートリッジをロードしたレヴァンティンが再び炎を纏う。
 先程までとは異なる、少年の隙のない構え。
 空気が、変わった。
「行きます。…僕の、唯一の『技』」

 すっ… 少年の姿が、シグナムの視界から消えた。


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