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[275]jewel :【Turn against】 2006/02/09(木) 23:31:36 ID:CJ5ycULa

【Turn against】 【Z】

     ―艦船アースラ―

 シグナム、敗北―。

 クロノから告げられたあまりに衝撃的なニュースに、メンバーは言葉を失った。
「そんな…シグナムさんが…?」
 口元に両手をそえ、震えるなのはを、ユーノが支える。
「大丈夫、なんですよね…?」
「今、本局で手術中なの。魔力ダメージよりも、物理的肉体ダメージのほうが酷くて…
 楽観的とはいえない、って…」
 そう答えるエイミィからも、いつもの軽妙なノリはすっかり消えてしまっている。
「…戦闘の映像が残っていた。音声は入ってないが…見るかい?」
 クロノの問いかけに、なのは達は恐る恐る頷いた。エイミィ、とクロノが促す。

 映像は、魔導師が逃げる直前の場面から流れ始めた。
 何事か言葉を交わし、シグナムが仕掛けたところで…現れる、もう一人の少年。
「まさか、このヒトが…?」
「ああ。…信じ難いが、僕と同い年くらいのこの少年だ」
 単独犯、と睨んでいたクロノも、流石に驚いたらしかった。
「でも、シグナムさんの方が、ずっと押してるのに…?」
「…ここからだよ」
 不思議そうに画面を見つめるユーノに、クロノが真剣な表情で告げる。
 少年が剣を収め、魔力を集め始めた。
 数秒後、正に「目にも留まらぬ速さ」で少年がシグナムに近づき―
 ―彼女のバリアを、そして剣を、シグナムの身体ごと斬り裂いた。
「…っ!!」
 鮮血に、思わず目を背けるなのはとユーノ。
 駆け寄ったはやて達が転位魔法で逃げると、少年も画面から消えた。
 クロノが、そこで映像を止める。
「…収めた剣に極限まで魔力を圧縮させ、最高の速度で接近して、斬る。
 このスピードじゃ、回避どころか防御も不可能だ。単純だが、実に理にかなってる」
「クロノ君」
 エイミィが、クロノをたしなめる。
彼女が目で合図した先には…無言のまま立ち尽くす、フェイトの姿が。
「す、すまない、フェイト。…軽率な言葉だった」
「ううん、気にしないで、クロノ」
 そういって手を振るフェイトだったが…彼女が一番ショックを受けているのは、
誰の目にも明らかだった。友であり、最高の好敵手でもあるシグナムの…崩れる姿。
 フェイトは踵を返すと、バルディッシュを手にドアのほうに向かっていく。
「フェイト! どうする気だ!?」
 その腕を取って、引き止めるクロノ。
「…現場に行きます。もしかしたら、なにか痕跡が残ってるかもしれない」
「担当の局員が、もう十分に調べたんだ。君が行ったところで、どうしようもない」
「でも!」
「落ち着け!」
 クロノが、強引にフェイトを振り向かせる。力なくうなだれる彼女の目には…涙。
「フェイト…」 「フェイトちゃん…」
「…今、僕らにできることをやろう。彼女が、戻ってきたときのために」
 執務官として、そして兄として話すクロノの胸に、フェイトが抱きつく。
「…お兄ちゃん…シグナム、帰ってくるよね…?」
 小さく、嗚咽が漏れた。大丈夫、などという気休めを言う代わりに…
フェイトを抱きしめると、クロノは決意の眼差しで、なのは達を見渡した。


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