―???―
(ここは…?)
シグナムが気付いた時、彼女の身体は既に、『静寂』の中に漂っていた。
(そうか…私は…)
―敗れたのだな。
おぼろげな意識の中、シグナムはそれを自覚した。
痛みはない。それどころか、切られたはずの身体にも、傷跡はなかった。
(主は、無事だろうか…?)
ふと、笑顔が浮かんだ。穏やかで、優しさを湛えた笑顔。
この手で、守ると決めた。全てをかけ、命にかえても。
(「命に代えても」、か…皮肉だな)
ふ、とシグナムは微笑った。ただ、無事を祈るばかりの自分が、無性に情けない。
―そうだ、レヴァンティンは?
どんな時も、常に自分と共に歩んできた剣。自分の…魂。
慌てて探してみるが、見つからない。呼びかけにも、応えはない。
気がかりが、もう一つ増えた。
「…探し物はこれか? 烈火の将」
自分の耳、というより頭の中に、突然響いてきたその言葉。
驚きながら、声が聞こえてきた方向に顔を向ける。
「リイン…フォース…」
会っていない期間は、それ程長くないにも関わらず、奇妙に懐かしい顔がそこにあった。
彼女の手には、シグナムの剣―レヴァンティンが握られている。
「久しいな、烈火の将よ」
微笑と共に、彼女は語りかけた。