「…迎えに来てくれたのか。すまないな」
「…」
シグナムの言葉に、リインフォースは答えなかった。
「主は、ご無事か?」
「心配ない。お怪我もされていないよ。…ただ、お前の身を案じておられた」
「そうか…申し訳ないことをしたな。だが、これで思い残すことはない。
レヴァンティンもここにいる。…連れて行ってくれ」
肩を撫で下ろし、小さく微笑むシグナム。
「…いいのか?」
「いいも何も、私は敗れたのだ。仕方あるまい」
「そうではない。お前の心に聞いている」
リインフォースが、穏やかに問いかけた。
「確かに、お前は敗れた。だが、それはお前が『こちら』に来る理由にはなるまい」
「…『守る』と決めたのだ。この手で。それが適わなかった以上、私は…」
「主が、そう命じられたのか? 『シグナム、自分を守れ』と?」
「そうではない。私が、我が剣と、魂に誓ったのだ!」
「その通りだ、烈火の将よ。ならば、もう一度問おう。
その『誓い』は、誰が為のものだ? 何故、お前はその『誓い』を立てた?」
「それは…」
リインフォースの言葉に、シグナムが俯く。
「守るべきものが、貫くべき『思い』があるなら…お前はまだ、消えるべきではないよ」
「私は…」
(…シグナム!) その時、もう一つの声が、シグナムに届いた。
「そうだ、聞こえているだろう? どう応えるかは、お前次第だよ」
リインフォースが、笑顔で見上げる先―声は、そこから聞こえている。
「私は…主と…八神はやてと、一緒にいたい…!」
頬に一筋涙を伝わせながら、シグナムが言った。
その言葉に、リインフォースが微笑む。彼女の主と同じ―心優しき笑顔。
「ゆくがいい、烈火の将シグナムよ。共に行けぬのは残念だが…いつか、また会おう」
「…ああ。そのときは、皆で」
笑顔で、言葉を交わす二人。
差し出された剣―レヴァンティンを手に取ると、シグナムの身体は光に包まれた。