シグナムが再び目を覚ましたのは、それから更に丸一日が経過した後。
部屋の外の慌しい様子に、シグナムはドアを開け、局員の一人を呼び止めた。
「すまない、何かあったのか?」
「また襲撃事件です! 例の剣士が、今度は単独で基地を襲ってるらしいんですよ」
「!」 局員の言葉に、シグナムの身体に緊張が走る。
「困りましたよ…魔導師が現れてないから、何か他の目標があるんじゃないかって、
上層部も二の足踏んでる状態なんです」
「それで、どうするつもりなんだ?」
「パトロール中の艦船はどれも遠いですけど、幸い本局から直接転送できる場所です。
相手も、あの魔導師ほどの力は持ってないみたいです。大部隊を派遣するわけには
いきませんが、AAAクラスの魔導師もスタンバイして…」
「そうか。礼を言う!」
局員の言葉を最後まで聞くことなく、シグナムは技術部へ駆け出した。
そこで待つ、彼女の剣を求めて。
―時空管理局クロノス支部第2基地―
「はぁ、はぁ、はぁ…」
壁にもたれかかり、少年は息を整える。
身を隠した部屋の外では、局員達が彼を探す声が響いている。
「流石に、先生みたいには、いかないか…」
鞘に収めたままの刀を手に、苦笑いする少年。
このままの状態で、局員たちを全て退ける程の腕は、彼にはない。
かといって、自分が魔力を乗じて刀を解き放てば、確実に致命傷を与えてしまう。
速さで撹乱してきたものの、それにも限界があった。
しかもどうやら、応援の部隊も到着し始めているらしい。
(すまない。どうしても、会わなきゃならない人がいるんだ。…絶対に死ぬなよ、ユウキ)
師の言葉が、少年の頭にリフレインする。
―そうだ。メインのシステムはダウンさせた。あとは、完全復旧するまでに、
通信室にあるサブとバックアップのCPUを破壊すれば、被害としては十二分。
「まだ…引くわけにはいかない…!」
刀を握りしめ、部屋を飛び出そうとしたとき。
扉がおもむろに開き… 見覚えのある女剣士が、姿を現した。