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[382]jewel :【Turn against】 2006/02/18(土) 22:39:58 ID:ItwjkgKS

【Turn against】 【ⅩⅢ】

「信じられない…あれほどの傷を、この短期間で…?」
 騎士甲冑を纏ったシグナムの姿に、少年は驚きを隠せない。

「…我、守護騎士ヴォルケンリッター。守るべきもの、
 そして『守りたい』ものの為ならば…この剣、何度でも手に取ろう」

 シグナムが、静かに剣を構える。
「…そうですか。どういうトリックを使ったか知らないけど、吹っ切れましたよ。
 今度こそ、貴方を斬る。もう…迷わない!」
 少年が、刀に手をかけた。と同時に、その姿が残像に変わる。

『小手先の攻撃じゃ、貴方には勝てない…最初から、全力でいきます!』
 少年の言葉が、シグナムの周囲全方位から響く。
 薄暗い室内で、少年が刀に圧縮する魔力の光が、流星の様に室内を飛び交う。
 その光の中、シグナムは…
(動かない…いや、動けないのか…?)
 剣を構えたまま、微動だにしない。
(それなら…これで決める!)
 シグナムの斜め後方。少年の刀が、鞘を走った。

―ヒュン!

「な!?」
 風切り音が室内に響く。シグナムの身体には…脇腹に、僅かな傷があるのみ。
(かわされた!? まさか!)
 再び、少年は閃光と共に駆ける。二度目の、一の太刀。
 キイィィィン!
 ―今度はレヴァンティンが、刀を受け止めた。
 激しく衝突した二つの魔力に、空気が震え、弾ける。
「くっ!」
 衝撃をこらえ、距離をとる少年。一方、シグナムは最初の位置から動いていない。

「一度見ただけなのに…もう、見切ったっていうんですか…!?」
 驚きに悔しさを重ねた表情で、少年が問いかける。
「…魔力を圧縮させながらの移動では、どうしても速度が落ちてしまう。
 どんなに気配を絶っても、集めた魔力がお前の技の『出処』を教えてくれる。
 何より…圧縮と撹乱に気を取られる余り、肝心の飛び込みの速度と、
 斬撃の精度が落ちている。それでは、私を捉えることは出来ない。
 こちらも同じように、魔力を剣に乗ずれば、捌く事も可能だ」
 諭す様な口調でそう話すシグナムに、目を丸くする少年。

「それでも、僕にはこれしかない…! たとえ、敗れるとしても!」
 鋭い目で、少年はもう一度、刀を鞘に収めた。


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