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[385]jewel :【Turn against】 2006/02/18(土) 22:43:18 ID:ItwjkgKS

【Turn against】 【ⅩⅥ】

 ―刹那の邂逅。

 一切の小細工なし。最短距離の真正面から、シグナムの懐に飛び込む。
 自分の左脇腹をかすめていっただけの矢に、少年は勝利を確信した。
 柄を握る手には、無駄な力は全くない。そして鞘を走る刀はいつも以上に軽い。
 さながら永遠、とも言えるその停止した時の中。
 少年は、真一文字に刀を振りぬいた。


 キィイン…!

 静寂を破ったその音は、やや無粋な耳障りを伴って、室内に反響する。
 ―折れた刃が、幾度か地面で弾んだ後…静寂の中に横たわった。

「そんな…武器…破壊…? あの一瞬で、僕じゃなく刀を狙ったなんて…」
 彼の間合いそのままの距離に、呆然と立ち尽くす少年。
 眼前で、レヴァンティンが剣と鞘に分かれ…シグナムが、それを腰に収める。
「同情は大嫌いだって、言ったはずなんですけどね…」
「こちらも言ったはずだ。『そうではない』」
 俯く少年に、シグナムはゆっくりと答えた。

「古き友に言われた…『貫くべき思いがあるなら、消えるべきではない』と。
 お前にも、私と同じ騎士としての誇りと思いがある…そう感じた」
「それでも、僕は負けた…僕の全てをかけた一撃だったのに…僕にはもう、何も…」
 折れた刀を握り、少年は涙を流した。

「…すまない。うまく言えないのだが…たとえ倒れたとしても、
 より強い思いを抱いて立ち上がれば…それは、敗北とはいわないような気がする。
 お前の澄んだ太刀筋が、私にそれを教えてくれたのだが…」
 顔を背け、言葉を紡ぐシグナム。こういう時、自分の口下手は何とももどかしい。
「もし、よければだが…その剣、より多くの者を守るために振るってくれないか。
 愛すべき者達のために戦うのも…その、悪くないぞ」

―これでは、考えていることの半分も伝わらないな…
 シグナムは少しだけ自嘲した。それでも、少しでも伝われば、と思った。
 かつて、敵であった友が教えてくれた、『思いを伝える』ことの意味と意義。
 今度は、自分がそれを。

「…まだ、僕を騎士と呼んでくれるんですね…」
「勿論だ。より速く、より強くなったお前と、もう一度戦いたい。何度でも。
 また会おう、騎士ユウキ」
「…………ありがとう…………」
 二人の周りに、局員達が近づいてくる。
 涙とともに差し出された手を、シグナムは静かに握った。


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