―2時間後、時空管理局本局―
「はい、手続きは以上になります。お疲れ様でした、シグナム捜査官補佐」
事務のカウンターで書類を受け取るシグナム。無断出撃の件は、
どうやら犯人逮捕の功績でおとがめなしのようだ。
「あの…彼は、どうなりますか?」
「そうですね…騒ぎはおっきかったですけど、考えてみると支部施設の一部破壊
のみですからね。前回のときもあなた以外に攻撃した形跡はないようですし。
年齢的に考えても、それほど重い罪に問われることはないと思いますよ」
「そうですか。ありがとうございます」
軽く一礼し、その場を後にしようとしたところで。
「シグナム!」
不意に届いた声の方向に顔を向ける。守護騎士の仲間達と…主の姿。
シグナムは早足で彼女達に近づくと、車椅子の前で片膝をついた。
「主…申し訳ありませんでした。またしても、身勝手な行動をし」
パ ア ン !
乾いた音が、廊下に反響した。通りがかりの局員達が、何事かと一瞬足を止める。
「はやて…」 「はやてちゃん…」
シグナムの頬をはたいたはやてに、ヴィータ達が驚く。一方のシグナムは、
はたかれた頬に触れることもなく、押し黙って主の次の言葉を待っていた。
「……心配した……心配したんよ…」
シグナムの顔に両手を添え、そのまま静かに抱き寄せる。
剣士の肩には、はやての大粒の涙が落ちた。
「シグナムはとっても強い。わたしを守ってくれるんも嬉しい。でも…私にとって、
みんなは家族や。守りたい思う気持ちもおんなじ。だから、こないだみたいに
一方的に守られるんは嫌や。もし、私をかばって誰かがいなくなったりしたら、
悲しいし、寂しいんよ。だから、まだまだ頼りないかもしれんけど…
もーちょっと、あとちょっとだけ、信じてな? シグナム…」
「…はい。今度の戦いで、私はとても大切なことに気がつきました。
主はやて。これからは…いえ、これからも我らは必ず、貴方と共に」
穏やかな微笑を湛え、シグナムははやてをそっと抱き返した。