「…短期間とはいえ、管理局の戦技教官を務めた人間が、今度はそれを標的にしてるって
いうのか。釈然としないな」
『多分、管理局にいたころの自分のデータなんかを全部消去してから離れたんだろうね。
だから、無限書庫にある教官名簿の片隅にしか記録が残っていなかった、と』
ユーノが、モニターに写真を示す。15年という歳月をぬけ、現れたその写真。
色褪せ具合は、その月日を「長い」とも、「短い」とも思わせる。
―この魔導師にとっては、どっちなんだろう…
そんな思いが、クロノの頭にふっとよぎった。
「一番単純に考えれば、管理局への復讐、か…? 確か、15年前だったな。
その時期にあった主な事件は?」
『とりあえず、大まかにリストアップしてみた。でも、どの事件に関わっていたのかは
わからない。単に短期訓練でよばれただけで、一切関わってないかも』
「どの事件も、僕らが生まれる前のものだからな… 記録として残っているのは、
たとえ事実ではあっても、真実とは呼べない」
『…ロストロギア関連に絞れば、二件あった。内一つは、何人かが犠牲になってる。
暴走事故だったみたい』
「暴走、か…」
複雑な表情のクロノ。嫌でも、自分の父親の「事故」とイメージが重なる。
12年前、闇の書の暴走を止めるため、艦船と共に光に消えた父親…
『クロノ、大丈夫?』
心情を察したユーノが、ゆっくりと尋ねる。大丈夫だよ、とクロノは応じた。
『…でも、少し変じゃないかな? 2週間だけとはいえ、誰もこの人のこと
覚えてないなんて。普通ありえると思う?』
「確かにな…外部協力者とはいえ、1人くらいは覚えている人間がいてもおかしくない。
或いは、名簿に登録していたのみで、実際には指導していないとか?」
『うーん…。一応こっちは正式な管理局の書類だから、ガセネタってことはないと思う。
最低でも、登録してた事だけは間違いないよ。ごめん、これ位のことしか分からなくて』
「いや、感謝するよ。何も分からなかったころよりは大分ましだ。
明日、チームで対策を話し合うことになってるんだが…君はどうする?
なのはも、こちらに来ることになってるんだが」
『それじゃ、僕もそっちに行くよ。正直、無限書庫での調査も頭打ちになってきてるし…
一度、みんなで動きを決めよう』
「分かった。ご苦労様だったな、ユーノ。繰り返しになるが、感謝するよ」
『うん。それじゃあ、また明日』
ああ、と軽く笑顔をかわすと、通信が途切れた。