「…」
「…」
「………は!?」
クロノ執務官、彼女の言葉を咀嚼、認識するまでに要した時間、約3秒。
対して発したその一文字は、図らずも声色が変化した。
「あたしね、こう見えても結構モテるんだよ? 士官学校の頃とか、何回か男の子に
告白されたコトだってあるんだから」
「そ、それが一体…」
戸惑うクロノに、エイミィは抱きついたままお構いなしといった様子で続ける。
「…でもね、『愛してる』って言われたことって、一回もないの。あたしだって
女の子だし、一回くらい、真剣な顔で『愛してる』って言われてみたいんだ…」
「…マジか」
「マジ。今、『何でもする』って言ったばっかでしょーが」
「いや、だからそーゆー意味で言ったわけじゃ」
「………嫌?」
エイミィが上目づかいでクロノを見つめた。
クロノの心臓が、異常な速度で鼓動を打つ。
「…ぁ、ぁぃしてる…」
「ちゃんと目ぇ見て言ってよ。男らしくないな」
顔を紅潮させ、それでも何とか搾り出した一言は、あっさりと却下された。
再度、クロノは覚悟を決め、今度はエイミィの瞳を見ながら、
「愛してる」
ゆっくりとそう言った。
僅かな時間見つめ合った後、エイミィが先に視線を落とした。
少しだけ、頬を震わせている…が、その様子はどこかおかしい。
「…ぷ、くくく…」
「エイミィ……まさか…」
クロノが訝しげに尋ねると、エイミィはクロノに回していた腕をほどき、笑い始めた。
「あはは、ゴメン! だぁって、ホントに言うと思わなかったからぁ」
「き、君ってヤツは…!」
頬を紅くしたままのクロノだが、恥ずかしさのあまりろくな言葉が出てこない。
エイミィは椅子から立ち上がると、軽快な足取りでドアの方へと向かう。
「お、おい、どこ行くんだよ?」
「顔洗ってくるだけだよ。泣き過ぎちゃったし、さっぱりしてから取り掛かりたいの」
「まったく…本当に大丈夫なんだろうな?」
はぁ…とクロノは肩を落とした。
「だーいじょうぶ。ちゃんと切り替えたし、全力で頑張りますよ」
部屋を出て行くエイミィ。ドアが閉まる直前、彼女は笑顔で言った。
「負けられないよ、うん。何年か後に、もう一回言ってもらわなきゃいけないんだから」