「あーもう!なーんでうまくいかないのよ!」
苛立たしげに、エイミィがデスクを叩く。
「大丈夫か? 何か手伝」
「うっさい! 気が散るからクロノ君黙ってて」
声をかけるクロノだったが、エイミィはあっさり切り捨ててキーボードを打つ。
「…邪魔になるようだったら、出て行ったほうが」
「いーから、黙ってそこいなさい」
「でも、実際何の役にも立てそうにないんだが」
「うるさいなー。居て欲しいって言ってんでしょ!」
「…はい」
先程まで泣いていた時とは別人の様な傍若無人ぶりに、訳もわからぬまま沈黙のクロノ。
―こんなワガママな奴に、世界の命運預けちゃっていいのか?
はぁ…と小さく溜め息をつく。それでも、この非常時にこんな暢気な事を考えている
自分が居る事に、クロノは不思議な感覚を抱いていた。普通ならもっと焦りや絶望感を
抱いて然りなのに、そういう感情が一欠片も沸いてこない。
ただ、奇妙な落ち着きがある。目の前で慌しくモニターや資料に目を通している彼女が
ここにいることへの―そう、『安堵感』とでもいうべき…
「クロノ君、そこのファイル取って」
振り返ることなく、右手を差し出すエイミィ。慌てて、その手に青いファイルを渡す。
「これ?」 「ん。サンクス」
合流予測地点まで、残り2時間。