―PM 1:07、『スクリームゲート』内―
バタン!「うわあ!」
突然閉じた背後のドアの音に、体が強張るユーノ。
と同時に、暗かった室内に並ぶパソコンのディスプレイの電源が一斉に入り…
『HELP』という赤い文字が。
「○◆×☆★●◎!?」
ユーノの心拍数が更に上昇。慌てて部屋を通り抜け、次の通路へ向かう。
(この世界の人たちって…なんでわざわざこんなモノ作ってるんだ!?)
『お化け屋敷』という、自分の価値観を遥かに上回る建築物の中で、何とか冷静さを
保とうとするユーノ。
…そして彼の隣には、何故かどの仕掛けにも完全ノーリアクションのなのは。
「な、なのは…怖くないの!?」
「…あ…うん…えっと…」
なのはの言葉に、ウソぉ!?と驚く。自分はともかく、前後から大人たちの悲鳴が
届いてきているのだ。にもかかわらず、自分の傍らの少女は全く動じることなく、
てくてくと歩いている。
(ま、まずいかも…)
苦笑いを浮かべつつ、歩を進めるユーノだったが…3秒後、再びの恐怖に襲われた。
「うーん…これはマズイわね…」
お化け屋敷に入っていった二人を見送り、出口付近で待ち構える管理局のプロ集団。
「やっぱり、屋内の音声は拾えないのかい?」
「そーみたい。も〜! 後で技術部のスタッフに文句言ってやる!」
デバイスをいじりながら、エイミィがもどかしそうに腹を立てる。
「まぁええやんか。きっと今頃、なのはちゃん『キャー!』とか言って、
ユーノ君の腕に抱きついとるよ♪」
「うーん…そんなにうまくいくかなぁ…? ユーノ、何の建物か分かってなかったし」
アイスを食べながら、二人の帰還を待つ一同だった。
一方、お化け屋敷の中では。
ガチャン!「うわ!」「…」
…相変わらず、対照的なリアクションの二人が。
(な、なのはが全然怖がってないのに…かっこ悪いな僕…)
そう思うユーノだったが… 彼は完っ全に勘違いをしていた。
入った人間を怖がらせるためだけに存在しているアトラクションなのだ。怖がらない
方がおかしい。彼のリアクションは至極当然、むしろ肝が据わっている方だった。
普段のなのはであれば、大声で悲鳴をあげ、ユーノよりも遥かに怖がっていただろう。
しかし…今のなのはは、はっきり言ってそれどころじゃなかったワケで。