「すまない。…何というか、今日ほど君の存在が嬉しく思えたことはない…」
「クロノも色々と大変だねぇ…」
笑いながら、ユーノはクロノの隣に座った。女性陣は、早速トークに花を咲かせている。
(…ところで、頼まれていた調べ物だけど)
時折なのは達の会話に加わりながら、ユーノが念話で話し始めた。
(やっぱり、あの4つの遺跡に、共通点は見受けられないと思う)
(そうか… 君の見解は?)
(こう言ってはなんだけど、それ程歴史的価値が高いというワケでもないんだ。
脈絡がないというか、見境がないって感じ)
(無差別破壊、ってことか…?)
(分からない。でも、遺跡そのものがターゲットなら、それこそ直接狙うべきだ)
(結局、そこに行き着くんだな…)
クロノが小さく溜息をつく。
この一ヶ月、ミッドチルダ辺境の遺跡が相次いで損傷する『事故』が起こっていた。
原因は、研究施設の火災が1件、近隣で発生した小規模次元震によるものが3件。
(上層部にも、かけあってみたんだろ?)
(ああ…でも、調査隊の出した結論は『偶然の事故』が重なっただけ、というものだった。
確かに、あの程度の次元震なら自然界でも起こりうる。
人手不足が深刻だからね。そう簡単に、大規模に動くことはできない)
(そんな…! だって、魔力反応が出たものもあったんでしょ?)
(ああ。だが小規模とはいえ、次元震を発生させるとなると、とてつもない魔力が必要だ。
それだけ能力のある魔導師が、こんな回りくどいやり方をするのは、確かに解せない)
(それで、僕に調査を頼んだのか…)
(君は遺跡の専門家だし、調査の腕は一流だからね。何か相手の動機がつかめればと
思ったんだが…)
(つまり、クロノは『事故じゃない』って思ってるんだね)
(当然だ。こんなに立て続けに『偶然』が重なるハズない)
(どうするの?)
(…アースラのチームで動く。幸い、任意の地域の哨戒任務が出た。期間は2週間。
この間に、犯人を捕らえる)
(2週間か…短いね)
(実際に動きだすのは3日後。その前に、僕は出来る限り傷を癒す。
…頼む、君の力を貸してくれ)
真剣な目で、クロノはユーノを見つめた。ユーノも、決意に満ちた笑顔を返す。
(もちろんだよ。断る理由なんてないでしょ?)