TOP 戻る 前へ 次へ

[54]jewel :『Turn over』続き。 2006/01/27(金) 02:34:33 ID:gGgCcTI9

Turn over 【Y】

―5時間後、ポイントC―

「ヴィータちゃんは?」
「ああ、さっき眠ったところだ。…昼間の事情聴取で、大分疲れたらしい」
「そっか…」
 テントの中から出てきたシグナムが、シャマルの隣に座った。
「はい、おべんと。」
「これは…主はやてが?」
「うん。冷めても美味しいようにって、色々考えてくれたみたい」
「有難いな…いただこう」

「…また、考え事?」
「…まあな」
 シャマルの問いかけに、シグナムは目線を合わせぬまま答えた。
「はやてちゃんに怒られちゃうわよ。『考えすぎるのは、シグナムの悪い癖やよ』って」
「ふっ…そうだな」
 自嘲気味に笑うシグナムに、シャマルは諭すような口調で続ける。
「でも、なんとなく分かるわ。こういう静かな夜って、物思いにふけりたくなるもの」
 夜空を見上げるシャマル。彼女たちの頭上には、皮肉なほど美しい星空が広がる。
「…昔は、こうやって夜空の下で眠ることも多かったわよね」
「ああ」
「それが、はやてちゃんがマスターになった日から変わったわ。私たち一人一人に、
 暖かくて柔らかいベッドを用意してくれた。かわいいお洋服も、おいしい食事も。
 昔の私たちには、信じられないくらい」
「…本当に、感謝している。いや、そのことだけではない。主の為とはいえ、我らは
 勝手に事を起こし、多くの者を傷つけた。それ以前にも、数え切れぬ程の者に不幸を
 もたらした。主はやては…それらを全て受け入れてくださった」
「シグナム…まだ、あの時自分たちも消えるべきだった、って思ってるの?」
 シャマルが、哀しげに問いかける。
「以前ほど、強く思っている訳ではないがな…だが時折、ふと頭をよぎることがある」
「駄目よ。ハラオウン執務官も言ってたじゃない。罪は消えない。罪滅ぼしなんて
 言うけど、それは綺麗事なのかもしれない。でも、今と未来を守ることは出来るって」
「…」
「はやてちゃんは、私達がいることを幸せだって言ってくれた。私の幸せには、
 シグナム達が必要だって。なら、私達は守らなくちゃ。私達のマスターの幸せと、
 この世界を」
「…主にも、多くを背負わせてしまった。幼いヴィータにも、申し訳ない思いでいる」
「ヴィータちゃんは、ああ見えて聡い子よ。闇の書のシステムの欠陥に気付いたのも、
 ヴィータちゃんだけだったじゃない。…大丈夫、一緒に背負ってくれるわ。勿論、
 私とザフィーラもね」
「…そうか」
 瞳を閉じ、シグナムが微笑う。そうよ、とシャマルは微笑みを返した。

「知ってる、リーダー? 『夢』って、本当は眠ってる時に見るものなんだって。
不思議だと思わない? 私たちは、『眠って』いるときには、本当にただ眠っている
だけだった。それなのに、今こうして起きているときに、夢を見ていられる。
 温かくて、素敵な夢を」
 立ち上がったシャマルが、夜空を見上げて言った。
「…そうだな。本当に、温かい」
 お弁当を一口口にすると、シグナムは静かに呟いた。


TOP 戻る 前へ 次へ

テレワークならECナビ Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!
無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 海外旅行保険が無料! 海外ホテル