―同時刻、ポイントB―
「でさ〜、その時にリニスが私のしっぽ引っ張って引きとめようとするからさぁ、
私も思いっきり噛み付いてやったワケ♪」
「………」
「でも、ヒドイと思わなぁい? アタシはフェイトと一緒にいたいだけだったのに、
『アルフがいるとお勉強になりませんから!』って部屋に入れてくれなかったんだよ」
「……………」
「あの頃はまだ、アルフが子供だったからね。私もつい、可愛くて相手したくなって」
「あ〜、フェイト問題発言! 今のアタシが可愛くないみたいじゃん!」
「そんなコトないよ。ね、ザフィーラさん?」
「…………………ああ」
「何よ、今の微妙な間は」
アルフがザフィーラに睨みかかる。
「…いや、特に意味はないのだが」
「怪しい〜。もう、せーっかくアタシとフェイトの思い出を語ってあげてるのにさぁ、
『ふむ』とか『ああ』とか『そうか』とか、そんなんばっかり」
「アルフがおしゃべりすぎるんだよ。それにザフィーラさん、ちゃんと全部
聞いてくれてるじゃない」
ぷん、と拗ねたアルフの頭を撫でながら、フェイトが言った。
「まぁ、そうだけどさぁ…」
ご主人様の言葉がもっともだと思いつつも、どことなく納得いかないご様子のアルフ。
「お散歩行っておいで、アルフ。星がとてもきれいだ。ザフィーラさんも、一緒に
行ってもらえますか? クロノ達との連絡は、私が残りますから」
「…そうだな。是非、付き合おう」
あぐらをかいていたザフィーラが、すっと立ち上がる。フェイトの膝枕をうけていた
アルフの耳が、それに反応した。
「…どうした? 行かないのか?」
「…い、行くわよ! ホントは、フェイトと二人がいいんだけどね!」
ザフィーラの隣に並ぶアルフ。フェイトは、それを見てクスクスと笑っていた。
「1時間くらいで戻ってきてね。ザフィーラさん、アルフのこと宜しくお願いします」
「ああ」
「こんなヤツにお願いしなくたって、ちゃーんと戻ってくるよ」
「はいはい、いってらっしゃい」
二人の背中を見守るフェイト。会話の内容は離れているため聞こえないが、
相変わらず、アルフが一方的にザフィーラの方を見てしゃべっている。
しっぽを振り、楽しそうに笑いながら。
(…もう、アルフも素直じゃないんだから)
クスリと笑いながら、フェイトは通信機を起動させた。
「こちらポイントB、異状なしです」 『はいは〜い、ご苦労様フェイトちゃん!』
(そういえばユーノ、うまくいってるかな…?)
そんなことを思いながら、フェイトも夜空を見上げた。