―更に8時間経過、ミッドチルダ夜明け―
「…来る」
紫色に染まり、徐々に明るさを増していく空の下。
気配を感じ取ったシグナムが、二人に先んじて立ち上がった。
「夜明け時に襲撃なんて、随分と詩的な犯人さんね」
「あたしらが当たりか。ラッキー!」
「二人共、準備は?」
「はい、いつでも」 「同じく!」
緊張感を増す空気の中、シャマルとヴィータがデバイスを起動させる。
「クラールヴィント、結界と索敵お願い」
二つのペンデュラムが輝きを増し、広域結界が展開された。
「グラーフアイゼン、暴れっぞ!」
ガキン、という重いサウンド。真紅の騎士服が、朝焼けに映える。
『Schwertform!』
「…そうだ。行くぞ、レヴァンティン」
静かな闘気を纏い、シグナムが剣を手にした。
「魔力反応感知。結界内、数…複数!」
「…傀儡兵!?」
時を同じくして、フェイト達の周囲にも現れた傀儡兵が、彼女たちを取り囲んでいた。
「アタシらのとこに来るなんて、上等じゃ〜ん? こっちは徹夜明けで
イライラしてんだ。軽ぅく相手してやるよ♪」
「…つい先刻まで、眠っていただろう」
「うっさい!」
「こらこらアルフ。今は目の前の敵に集中」
はーい、と返事するアルフに笑顔を向ける一方、フェイトは緊張感を抱いていた。
(…これだけの傀儡兵…個体のレベル次第では、魔導師は母さんクラスかもしれない…)
実の母、プレシア・テスタロッサの姿が頭をよぎったとき、フェイトの手元が輝く。
『Sir...』バルディッシュからの呼びかけだった。
「うん。バルディッシュ、行こう!」
光り輝く鎌を手に、フェイトは空高く飛び上がった。