「危ない危ない。個々のレベルはもとより、コンビネーションは特筆に価するな。
…だが、決め手に欠ける。特にクロノ君、今の攻撃も合格点だが、魔力の圧縮が
不十分だ。怪我のせいだろうが、惜しかったな」
(相手のいうとおりだわ…このままでは、あの強固なバリアは破れない。こちらの
手の内を見せるほど、状況は不利になっていく。しかも、徐々にではあるけど、
クロノの魔法の精度が落ちてきている…)
リンディは不安そうに戦況を見つめていた。しかし、今ここで自分が出て行けば、
結界が消える。そうなれば元も子もない…もどかしかった。
一方、相手の強さを目の当たりにしたなのは達も、同様の不安を抱いていた。
せめて、フェイトかシグナムのどちらかがいてくれたら…そう思わずには
いられなかった。しかし、彼女達の到着を待って「守り」に入ろうものなら、
逆に数分と持たずに叩き潰される。それ程、相手の実力は本物だった。
「お約束のセリフで申し訳ないんだが、そろそろ終わらせようじゃないか。
これ以上そっちの戦力が増えるのは困るんでね」
(クロノ君、腕、大丈夫?)
(大丈夫といいたいが、強がってもしょうがないんでね。…ユーノ、色々考えてみたが、
やっぱり『アレ』しかなさそうだ)
(みたいだね…だとすると、問題は僕達2人か)
(え? え?)
魔導師の攻撃を何とか最小限に食い止めつつ、3人は念話を続ける。
(なのは、手短に伝えるよ。これから僕とクロノが何とか時間を作る。その間に、
『スターライトブレイカー』のチャージをお願い)
そう。魔導師のバリアを破れるとすれば、なのはのスターライトブレイカー以外に
有り得なかった。集束型、しかも自分以外の周囲の魔力をも集積するなのはの切り札。
しかも先ほどからの戦闘で、結界内には魔力が溢れている。
しかし、逆転のためには、大きなリスクが伴っていた。
(そんな!? 二人だけでなんて、危ないよ! 私、チャージ中は全然動けないし)
(大丈夫、僕とユーノで必ず守る)
(でもでも! チャージが間に合っても、かわされちゃったら?)
なのはの単純な質問に、苦笑いの2人。
(それは…確かに…考えてなかったかも…)
(どうやら、やらなきゃならないことが増えたみたいだな、ユーノ)
(おっそろしくハイレベルな要求だけどね…)
(だが、やるしかない。…行くぞ、これがラストチャンスだ!)
攻撃をかいくぐり、クロノが魔導師へと向かう。