太陽光線に促され、私の目蓋が開く。
「ん・・・朝」
当たり前な事を言いつつ、フェイトはケータイを見る。
「・・・・・・・・・あれ?」
可笑しい。時刻はもうAM7:00、携帯のタイマーは6時45分にしていたはず。
マナーモードにしっぱなしだったかな、とか、色々と考えていると。
「ああ。それなら私が止めておいたよ」
「そうなんだ。それはご丁寧に、どうも」
「いやー。ぶっちゃけ、単に煩かったのを止めただけ。
だいたい、なんで6時45分なのさ、おはスタでも見てるの?」
「む・・・昔の話だよ。今は、なんとなく、だよ。それにね、ぶっちゃけるって・・・何?」
いや、いやいやいやいやいやいやいや。そ、れ、よ、り、もー!
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
何故、なのはが私のベッドで。あまつさえすっぽんぽんでいるのー!!?
「なのは!何故、裸!?では、無く。どうしてココに?・・・って、私も裸ー!!!」
シーツで体を隠す。焦っているのか、息が少し荒い。
「何って、私達、大人のおもちゃやらなんやらで仲良く遊んでたんだよ」
「え・・・?」
なんて白々しい。そんな事は覚えている。フェイトはただ、あの夜を月光の魔術
が見せた幻想と片付けたがっているだけだ。
その白々しさも朝の笑顔で容易く潰される。
「フェイトちゃん。私、おなかすいちゃったー。ちゅっ☆」
フェイトのほっぺにちゅーをするなのは。
「なっ・・・なのは!?」
慌てるフェイトなど気にも留めず、扉を開ける。
「ユーノー今日のごはんはー」
「なっ・・・なのは、まだ裸!!!」
フェイトの声を無視して、居間に向かう。
「はい、なのは様。今日の朝ごはんはペヤングです。それと、はい、制服」
「ん、さんきゅ」
まぁ、寮には私達3人しかいないし、いいんだけど。
居間で着替え始めるなのは。・・・いや、突っ込みどころが多過ぎる!
「ペヤング!美味しい!!!」
「ねー」
ペヤングをバクバク食べる。
「おかわりもあるからね、フェイト。なのは様、ジャスミンティーをどうぞ」
「ありがとう、ユーノ」
言い終わり。ユーノに口付けをする。
「なっ・・・・・・なのは!」
声を荒くしたのはフェイトである。ユーノは呼吸のように、平然となのはの行為を受け入れる。
「妬いてるの?フェイトちゃん」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
突っ込みどころが多過ぎたのだが、フェイトの処理では間に合わなかった。
なのでフェイトはこう思うことにした。
「はい、デザートのウエハースチョコ。毎日、5個消費してね」
「何故?」
なのはは変態ナノハハヘンタイ。
「詰まりなー、尊属殺人罪の判例の被害者は死んで当然の痴漢だった。ということや」
朝っぱらからグロい話爆発。話を聞いていて鬱だ。
ここの学校のシステムは独特だ。なんせ、私達と同じクラスの子が授業しているのだ。
と言うのも、教えるという事も勉強であるという学校の方針で、週に4時間はこいった
授業を取り入れているらしい。
今回私達を指導するのは、八神はやてと言う関西弁の女の子。関西弁、昔、カッコイイので
関西人じゃないのに喋ってたなぁとフェイトはシミジミと思う。
ちなみに、彼女は外人などでは無く、父も母も日本人である。
そして、今はやてが教えているのは、尊属殺人罪が消えた理由だった。
はっきり言おう。こんな話題は、もうこれっきりにして欲しい。
「ううっ、気分が悪い・・・・・・」
現実逃避とばかりに左隣のなのはを見る。
さっきとは打って変わって、えらく真剣な顔があった。
(なのは、真面目なんだ・・・・・・・・・)
感心するフェイトだが、真実はそうでは無い。
なのはは授業をしながら、いつか来るであろう多人数プレイの妄想に耽っていた。
そう、世にいうマルチタクスだ。
「ミッション、コンプリート・・・」
それと同時に妄想を終える。
その可笑しな呟きがフェイトの耳に届く。
「へ?なんて言った」
「退屈」
妄想にも飽きた。
「授業なんてすべからくそうさ」
「・・・・・・へっへー」
きらーんとなのはの目が光る、フェイトの背筋に寒いものが走る。
「ボインタッチ!」
フェイトの小さく柔らかい胸を鷲掴みにする。
「ぐああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!
なっ、なのなのなのー!!!」
奇声を上げ立ち上がる二人に、お約束のチョークが飛ぶ!
「なのはちゃん、フェイトちゃん!私はスパルタや!!
廊下に立っとき!!!」
で、廊下に座ってます。
「なのは。怒っていいよね?今」
拳を握り締める。
「ポテチ食べる?」
どこから取り出したのか、なのははお菓子の袋を取り出す。
「おっお菓子で私の機嫌は・・・」
「コンソメ味」
「わーい☆」
「フェイトちゃん。2個取り禁止だよ!」
ぽりぽり食べながら言う。
「なのはだって食べるの早いからこれ位許して欲しい」
無言の決着に、なのはがお茶を手渡す。
「あ、ありがとう」
緑茶をぐびぐびと飲む。
「あ、おっきーの発見であります!フェイトちゃん」
「あ、いいなー」
一口で頬張るなのは。フェイトも手探りで必死に大きなポテチを探していると。
「はい、あーん」
なのはが大きなポテチを持っていた。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
ほっぺを膨らませ、そっぽを向く。なんと言うか、子供だとしても子供扱いはごめんだった。
「ノリが悪いねーフェイトちゃん。
・・・・・・・・・クロノくんの先っぽを喜んであーんしてたクセに」
その言葉にフェイトが憤る。あの夜の横暴さが、今更になって、怒れてきた。
「なのは、怒るよ・・・」
眉間にしわを寄せ、睨む。
「・・・・・・・・・・・・。
ごめん」
「えっ・・・・・・・」
そんなの、反則だ。私は謝られたら許してしまう。だって、それ以上その人を咎める気力が湧かないからだ。
「でもね、フェイトちゃん。女の子同士なら数に入らないし、浮気にだってならない。
だっ、だからね!私とまた遊ぼうよ!!」
なのはの声は、妙に焦っていた。
「君は、ウソツキだね」
ああ、嘘だ。浮気っていうのは、同姓とか異性とかそういうのはどうでもいい。
ただ、その人に後ろめたいものができた。その時点で浮気だ。なのはのそれは都合論、エゴにすぎない。
「フェイトちゃんのパンツ、可愛いね」
フェイトの言葉に答えず、なのははフェイトのスカートを捲る。
「ず、ずるいよなのは!」
「ああ!私はずるい女さ!!」
フェイトを抱き締め、太股に指を滑らす。
「フェイトちゃんの体、熱い。・・・私ね、女の子のパンツの生地って好きよ。男物と違って、凄く触り心地がいいんだもの」
「なのは、やめっ、」
「もう教室戻ってええよー、・・・・・・あ、私にもポテチちょうだーい!!」
危機一髪、フェイトは蛇の毒から逃れた。
体育の時間。フェイトはなのはの言葉に一切答えなかった。
「フェイトちゃん。今日のセパタクロー頼むよ!私たちの力、見せたろ!」
はやてとタッグを組み、セパタクローと言う球技に挑む。
「セパタクローって何?」
そう呟いて、ぼーっとしていたフェイトに、声が。
「フェイトちゃん!避けて!!!」
飛んで来た声とボールが当たったのはほぼ同時、枯れ葉が散るようにフェイトは倒れた。
「フェイトちゃん!」
真っ先に近寄ったなのはがフェイトをお姫様だっこする。
「ユーノちゃん!ついてきて!」
風より早くなのはは保健室に向かった。
フェイトの意識は思ったより早く覚醒した。
「37.7度、熱ですね。昨日、裸で寝たりとかしましたか?」
その言葉にフェイトはただ、顔を赤くする。
「先生。悪いけど、今日はもう帰るよ」
「え・・・?なのは、さん!?」
制止の言葉を無視して、フェイトを抱きかかえる。
「な・・・の、は?」
「ユーノ、寮に帰るぞ!」
その言葉にはいと答え、なのはは保健室を後にしようとする。
「待って!まだ、なのはさんは授業が残、」
その言葉になのはは殺気さえこもった一瞥だけを返した。
「フェイト、起こしちゃったかな?」
「・・・ううん、たまたま」
目が覚めるともう夜の7時。
ユーノが病人食とばかりに、鯖ご飯を用意してくれた。
「栄養、つくよ」
そう行って、机に置いといてくれた。
「し〜〜〜〜〜〜」
「?」
一瞬、何を示唆したかったのか分からなかったが直気付いた。
「なのは様、寝てる」
そう、ベッドの隅っこでなのはが眠っていたのだ。
ユーノからきいた話だと、あれから、なのはは心配そうにテキパキとフェイト
を看病していたらしいのだ。
部屋を去っていくユーノに薬は無いかと訊いたら、
「なのは様が薬に頼るのは駄目だって言ってました」
だそうだ。
「全く、恨めないな、君は」
このお人よし。
なのはの可愛いほっぺを人差し指でぷにぷにさせる。
そのほっぺに、フェイトは、純粋な気持ちで口付けをした。
「・・・なのはにはないしょだ」
つづく