昔語り 
23 翻弄





「……汗かいちゃったから、シャワー浴びてくるわ」
言いながら、幸実はけだるげにゆっくりと起きあがった。
浴室へ向かう彼女のほっそりとした後ろ姿を見つめる。
いつもこうして抱き合っていると、ごく近くにいすぎるから離れて
幸実を見つめるということは少なかった。
幸実の喘ぐ表情、柔らかな乳房、俺を迎え入れてくねる腰……
彼女の部分ばかりが目に焼き付いている。
俺は暖まってしまった空気を冷やしたくてエアコンを入れ、幸実と
入れ違いにシャワーを浴びに行く。
今わざと彼女だけを先に行かせたのは、もちろん後のことを考えて
あったからだ。
狭い浴室の中では、俺は楽しめても幸実を充分に感じさせてやる
ことはできなさそうに思えた。


水滴をタオルで拭いながら寝室に戻ると、ひんやりとした心地いい
空気が部屋に満ちていた。
夏用のごく薄い上掛けを身体に巻きつけた幸実は、目を閉じたまま
横になっていた。
俺がベッドの端に腰掛けても、そのまま幸実の隣に寝そべっても
目を開かない。
疲れて眠ってしまったのか……?
そっとしておいてやるべきか迷う。
まだ時間はたっぷりある。
俺こそ疲れ果てていてもいいはずなのに、何故か妙に身体中に
力が漲っている。
一種の興奮状態にあるのだと思う。
空手の試合を勝ち抜き、一日で三回真剣勝負の組み手を行った。
どうあっても勝ってやるという気負いで自分を奮い立たせ、相手の
男を倒してやるという目的しか見えなくなる。
そのためにはどうしたらいいか、相手のわずかな隙をついて腕に
胴に、脚部に打撃を加える。
相手も修練を積んでいる人間だ、そう思うように易々と倒せない。
瞬間的に、脳内で鳴り響く指令に従う。
俺自身の閃きが明確な言葉になり、瞬時に身体が動く。
あるいは相手の動きを目の端で捉えた時、反射というべき反応が
俺を衝き動かす。

相手を屈服させる、勝利する。
これに俺は言語に尽きせぬ喜びを感じる。
俺の方が力が上だ、と自己にも他者にも認識させることができる。
倒してはっきりと勝負をつける、このことが俺が空手に惹かれて
やまない理由のひとつだった。


身体を巡っている血の滾りが、まだ熱く息づいている。
サディスティックに女を抱く、どこか歪んだ欲望と自認している衝動を
増幅させているのは、明らかに試合後のせいだ。
幸実の柔らかな優しい肌を抱きしめても、完全に安らいだ気分には
まだなれない。
獰猛な欲望をぶつけても、それでもなお身体の深奥からどす黒い
熱をおびた塊が溢れ出てしまいそうだ。
幸実の唇にそっとキスをしたあとに、優しく接してやろうという気持ちは
消し飛んでしまった。
閉じている唇を無理矢理に舌で割り、上を向かせて口を開かせた。
身体を覆う上掛けを剥ぐと、全裸の幸実を強く抱きしめる。
もちろん渾身の力でなどなく、手加減はしたつもりだが、幸実は顔を
歪めて小さく「いや」と喘いだ。
その言葉、その表情が俺の情欲に火をつけた。
いやがっていても、感じさせてやる。
満足いくまでさせてやる。
「……俺ばっかり気持ちよがってちゃ、幸実に悪いだろ」
俺は彼女の首筋に舌を這わせながら囁いた。
「だから……おまえを感じさせてやるからな」
この一言を言ってやった瞬間、彼女の頬に朱が走った。
これは効いたのか。


顔を逸らし、脚を小刻みに揺らしている幸実の胸元をじっくりと見た。
弾力に富む鞠のような白い乳房が、呼吸に合わせて上下している。
淡く色づいた先端の乳首が愛らしく尖っている。
「触ってもいないのに、もう……乳首が立ってるぞ」
「嘘…………」
幸実は瞳を潤ませている。
きっとあそこも、涙を浮かべるように濡れているんだろう。
「本当だよ。ほら……」
俺は幸実の腕をとり、そのことを彼女自身に確認させようとした。
「つまんでみろよ。ほら。……乳首、固くなってる……」
彼女は恥ずかしいせいか、一度はその手を胸から外そうとするが
俺は小さな手を握ると彼女自身の乳房に置かせた。
目を閉じているが、幸実は明らかに興奮状態にあるらしく、呼吸が
浅くなってきている。
「ほら。どうしたら気持ちいいんだ?……自分で揉んでみろよ」
両胸に置いた幸実の手に、俺の手を添えて何度か揉んだ。
「あっ……。いや…………」
自分でも、なんという卑猥な責め方を考えついたのかと思った。
幸実は本気で恥ずかしがっているのが目に見えてわかるほどで
その顔も羞恥でピンクに染まり、胸元までも赤みが射してきている。
幸実の優美な人差し指と中指を開かせ、その間に桜色の乳首を
はさみこませた。
「あっ……。ああ…………。……いや……あ……」


ふくらみきった先端を、指でこするように動かせる。
自慰を強要させているようなもので、もともと恥ずかしがりの面を
持っている幸実にとっては耐えがたい行為だろう。
そんな彼女に猥褻な行為を強いている自分は、大いに刺激されて
先走りを迸らせるほど感じていた。
「いやなのか?」
言いながら彼女の顔を見下ろすと、幸実は半開きになった瞳で
俺を見返す。
口先では拒みながら、投げかける視線は俺を誘うためのものでしか
ない。
俺はゆっくりと両手で乳房を揉みこみ、乳首を舌で味わった。
「ああっ……!ああんっ……」
「これでもいやか?」
畳みかけると、幸実は悶えた。
「ああ……いいの……。ああ、いい…………」
彼女は上半身をのけぞらせながら俺の愛撫に応えた。
焦らしと言葉の責めで敏感になってしまったのか、俺の首に下から
腕を巻きつけてくる。
数分間舐めてやったあとで、俺は幸実の膝を立てさせた。
「脚、広げろよ」
俺からは開かせず、そう言い放った。


「いや…………」
声を震わせながら、幸実は両手で秘所を隠した。
「どのくらい濡れてるのか、俺に見せてみろよ」
ひとたび言葉嬲りを口にしたら、もう止められなくなった。
欲求はとどまるところを知らない勢いで膨れあがり、その出口を求めて
さまよい始める。
幸実が本気で嫌がっている様子があったらやめるつもりではいるが
今のところ、彼女自身も嫌がりながら感じている域だろう。
「脚開いて見せなよ」
「いやっ…………いや…………」
幸実は両手で顔を覆い、小さく何度も頭を振った。
これは、ここら辺でやめて譲歩した方がいいかもしれない。
あまり追いつめてしまっては、幸実を感じさせる目的もなにもない。
「じゃあ、“見て”だけでいい。“見て”って言ってみな」
唇に軽くキスしてやったあとで、幸実は溜息とともに微かにそう言った。
彼女のほっそりとしなやかな足首を掴み、ゆっくりと左右に開かせる。

か黒い翳りはしっとりと濡れ、艶やかな太腿にまで蜜をこぼして鈍く
輝いていた。
まだ手で顔を覆っている幸実の表情は見えないが、あの苦悩と恍惚の
混じったような、悩ましい顔をしているのだろう。
俺は内腿に濡れ光っている液を指ですくい、幸実の唇にこすりつけた。
「凄いよ……。太腿にまでこぼれてる。……よっぽど感じてたんだな」

湿った指を幸実の唇の内側に忍ばせ、口内に沈めると、幸実は舌で
俺の指を舐めた。
ゾクッとくるような快感が指に走り、俺は思わず「もっと舐めろ」と
言ってしまった。
舌先で微妙に指のつけ根から指先までを、まるでフェラチオさせている
ように舐められると、直接くわえられている訳でもないのに、腰の
中央がますます熱く固くなっていく。
くすぐったいような微妙な快感が伝染していた。
いや、それよりも幸実を感じさせてやらなければ。
俺は彼女をこそ、恥辱と快楽で悶え狂わせてやりたいのだ。
俺は中指を幸実の濡れているはざまに差し入れた。
充分に潤っている秘部は、まったく抵抗なく指先を呑み込んでいく。
人差し指を加えて二本入れようとすると、今度は抵抗感が加わる。
中指だけを入れては抜く。
幸実は感じている声をあげ、腰をもじもじさせるが、引き抜くと明らかに
落胆している様子が窺えた。
奥に突き当たるまで入れてやり、内側の襞をこすりながら抜くことを
繰り返す。
これでは感じてくるけれど、達するまでにはなれないはずだ。
もっともそれが目的で焦らしているのだが。
幸実の声も、だんだんと焦りを滲ませるように高くなっていった。

何度か抜き差しを繰り返したあとで、幸実は半泣きに近いような
哀切な声を放った。
「ああ……。いやあ…………」
「これじゃ、いやなのか?」
俺はわかりきっていることを底意地悪く訊いた。
「いや……。これだけじゃ……いやっ…………」
俺はもっとも俺の好むシチュエーションにまで持ち込んでいったことに
快哉を叫んでいた。
積極的ではなかった相手を感じさせ、恥ずかしがらせながら嬲る。
ついには屈辱にまみれながら女の方から求めさせる。
刺激的な妄想を、実際に好きな女に行わせることで征服欲が
満たされる。
「お願い……。もう……。もう、だめ……」
挿入を求めていると思ったが、そうはいかない。
そうしてやるのはもっと可愛がってからだ。
いよいよ我慢できなくなったのか、幸実は俺に抱きつき、頬や唇に
何度もキスをしてきた。
こんな風までになる彼女も珍しいが、それが欲望が昂ぶりきっている
なによりの証拠だった。
俺は彼女の腕の捕縛から逃れ、徐々に顔を下半身の方へと移しながら
太腿を吸った。
「ああ…………」
幸実も次に何をされるのか期待しているだろう。


甘く濡れている秘毛をかきわけ、むきだしにさせた突起を唇ではさむ。
舌で軽く舐めると、幸実は腰を浮かせて高く叫んだ。
ゆっくりと舌を遣うと、彼女の嬌声は途切れがちになる。
大きく息を飲む気配のあと、幸実は吐息を乱れさせながら身体の力を
抜いていった。
ぴんと伸ばしていた脚も力無く投げ出されている。
彼女が達したことは間違いないようだった。
勝った、と訳もなく思った。
セックスに勝ちも負けもあるものかと思うが、彼女を楽しませてやれない
うちに、先に二度も欲望のまま振る舞ってしまったあとでは、敗北感の
ようなものがわだかまっていたのは確かだった。
幸実に快感を与え、イかせてやることで彼女を従わせている気分に
なれるのだ。
それに、俺はまだ彼女を味わい尽くしていない。
イった直後の幸実の秘所を、鼻先と舌でくすぐるようにしていると、最初
幸実はくすくす笑っていたが、そのうちに艶めかしい声をあげるように
なってきた。
滴りを舌先で何度もすくいながら、クリトリスと膣口を往復させる。
「ああん……。ああ……。はあんっ…………」
色っぽい声を聴いているだけで、こちらもたまらなくそそられる。
甘えるような、舌足らずの鼻にかかった声がいい。
本気で感じてくれば、今度はもう切迫した響きに変わる。
「あ……!ああ、いや、また……!」
ああ、と大きく声を放ったあとで全身を硬直させていく。


幸実の身体が弛緩していく前に、俺は白い両脚を掴んで開かせた。
休ませる間を置かずに秘所に当て、一気に腰を進ませた。
「ああ……っ!!」
幸実の悲鳴に近い声が漏れる。
ひどく甲高い、すすり泣きのような声音だった。
嗚咽している時のように声を断続的に漏らしながら、身体も震えるように
してくる。
よほど感じているのか、幸実の締め付けは強烈だった。
「あっ……!いい……!ああっ……!」
俺の背中と肩口に抱きつきながら、幸実ははっきりと快感を訴えた。





24 驟雨



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