第三章 7 虎穴 2
 








その時、閉じかけられたドアは乱暴に押し開かれた。
勢いでドアに弾かれる形になり、美香と船村は玄関に倒れ込んだ。
黒澤が素早く後ろ手にドアを閉じ、内鍵を掛ける。
「な……なんだ、きみは!」
だらしなく玄関口に座り込んだまま、船村は声を高くして喚いた。
「さあな。なんだと思う?」
唇の端に笑みを浮かべて、黒澤は言った。

起きあがろうとして、慌てて体勢を整える船村から美香は離れた。
「出て行け!警察を呼ぶぞ」
突然の侵入者に対する驚きと動揺が、声をうわずらせている。
「呼びたきゃ呼べよ。困るのはあんたの方だと思うがな」
美香は黒澤の身体の側に立った。
「俺の女を可愛がってくれたそうじゃねえか。今、その礼をたっぷり返してやるからよ」
低い声に、威嚇と嘲笑をこめて黒澤は船村を見据えた。

その科白と鋭い視線を浴びせられて、船村は自分の身に何が起きたのかをやっと理解
したようだった。
ようやく立ち上がった痩せ細った身体は、傍目からでもわかるほど震えている。
「玄関で立ち話もなんだな。上がらせてもらうぜ」
言いながら、土足のまま部屋に上がり込む。
正面から船村の襟首を掴み上げて、そのまま部屋の奥にあるベッド近くに放り投げる。
美香は呆然としながら、黒澤の後をついていった。

まるで何かの映画でも見ているような気分だった。
妙に現実感に乏しく、これが目の前で起こっている出来事とはにわかに信じがたい。
座り込んだまま、身体を震わせている船村の前に黒澤がしゃがみこんだ。
「いいザマだな、え?色男。俺の手で、もう一度整形してやろうか。
二度と女が寄りつかなくなるツラによ」
その言葉を聞いた瞬間、船村の身体がビクッ、と大きく揺れた。
なぜそのことを知っている、と言いたげに口が開きかける。
が、言葉にはならない。
「そのツラに騙された女も多いんだろうけどよ。前以上のご面相に変えてやろうか」
黒澤の表情は、いかにも可笑しそうに笑いを形作っていた。
船村は、床に座った姿勢で何か言いたげに口を動かしていた。

「こいつは、俺の女だ。この前は、だいぶ世話になったようだな」
黒澤は美香の方を顎で指し示して、感情のこもっていないような声でゆっくりと言った。

黒澤が船村から視線を逸らしたその瞬間、船村は玄関に向かって
腰を抜かしたような姿勢で走り寄ろうとした。
後ろを見せている背中めがけて、黒澤が蹴りを放った。
喉に何か詰まったような音が漏れて、船村は前のめりに転倒した。
「ざまあねえな」
黒澤は無様に床に這う船村の様子を見て嘲った。
「色男、金と力は無かりけり、か?」
船村は床から起きあがれずに、怯えを隠せない眼つきで、高笑いする屈強な男を
見上げる。

「美香。チェーンを掛けてこい」
そう命じる黒澤に、美香は黙って従った。
「まだ話は終わっちゃいないんだ。逃げようなんて思うなよ」
表面は冷静さを保っている黒澤の内部で、どれほどの感情が渦巻いているのか。
美香には推し量ることもできなかった……。

「すみませんでした!」
突然、船村が床に頭を擦りつけんばかりに土下座した。
黒澤の方を向いて、卑屈に頭を垂れて見せる。
「……謝って済むことじゃないけど……でも、せめて……これでよければ、好きなだけの
額を書いてください!」
ベッドの側の机に向かうと、小切手帳を黒澤に向かって差し出した。
力では到底敵わない相手と悟ったか、懐柔策を弄してくるつもりらしい。

「金か?」
侮蔑をこめたような眼差しで、そんな船村を見下げる。
「面白い。いくらまでなら出せるっていうんだ?」
「…………300……いや、500……」
金でつけこむ隙のある相手なら、これでどうにかできると思っているのだろうか、船村は
冷や汗を垂らしながら金額をつり上げた。
「……俺の女は、それほど安いのか?」
静かに言ってはいるが、黒澤の眼は口調ほど穏やかではなかった。
「気に入らねえな」
ぼそりと黒澤は呟いた。
「俺が金でどうこうできる相手だと、思ったのか?」
言いながら、眼の端に鋭い光が宿った。

船村の半分起こしかけていた上体に、無造作な蹴りが叩き込まれた。
軽く力を入れただけのように見えても、船村は身体を丸めて床に転がった。
ひどくむせて、咳き込んでいる。


黒澤が圧倒的に優位な立場で、自分を弄び陵辱した男を責めて暴力を振るっている。
苦しむ船村の姿と、冷然とそれを見下ろす黒澤の貌を見比べて、美香はその場に
立ちすくんでいた。
浮かぶ感情は、もちろん恐怖もあった。
それでも、この男が自分を汚した仇を討つと言って、それを今まさに実力行使している。
その現場に居合わせていると思うと、なにか怖気の立つほどの興奮にも苛まれていた。

地面が揺れている、と思ったけれど……そうではなくて、美香自身の身体が小刻みに
震えていることに気がついた。
怖さのあまりに、というわけではない。
それどころか、異様なほどの高ぶりが美香の身体の芯に響くような疼きをもたらしていく。
高熱に浮かされている最中に、かえってそれを心地よく感じてしまうことに似た、感情と
身体の倒錯が、今美香を襲っていた。


黒澤は、船村の咳がまだおさまりきっていないその肩口に手をかけて仰向かせた。
そのまま、背後から左腕を掴んで背筋に向かってねじり上げる。
「や……やめてくれ!」
声を甲高く裏返らせて喚く船村の哀願を、黒澤は黙殺した。
腕が軋む鈍い音のあとに、美香が聞いたこともない、いやな音がした。
骨が折れたのだろうか……
「ぐあ……あ、ああっ!!」
そうされた瞬間、船村の喉から潰れたような喚き声があがる。

「大げさに騒ぐんじゃねえよ」
舌打ち混じりに、黒澤は呟いた。
「折ったんじゃねえ。関節を外しただけだ」
そう言いながら、反対の右腕もそうやって同様にしてみせた。
腕を人形のようにだらりと下げて、抵抗もできなくなった筈の船村の身体を、冷たく笑い
ながら見つめている。
愉快そうにしている黒澤の整った横顔に、ある種の凶々しい気配が立ちこめているよう
だった。
なのに、目が離せない。
「美香。俺の持ってきたトランクが玄関にあるだろう。取ってこい」
言われるまま、彼の荷物を手渡す。

そこに入っていたものは、美香の予想もしていないものだった。

船村の足を後方に揃えさせると、黒澤はトランクから取り出した手錠のようなもので
拘束した。
それは一見手錠に見えるが、チェーンの長さに若干の余裕があり、その気になれば
拘束されている部分を数十センチは動かせるようになっている。
銀色の光を鈍く放つそれは、特有の金属音を響かせて卑劣な男の足を捕らえた。
片頬に皮肉な笑いを浮かべると、黒澤はそんな惨めな船村の身体を引きずるようにして、ベッド中央部分のすぐ下に移動させた。


もう口を開く気力もないのか、魂の抜けたような顔つきになっている船村を見下ろすと、
黒澤は美香を手招いた。
そろそろと近寄る彼女の身体を抱き寄せ、唇を奪う。
この場になって、なにを……
驚いて目を見張る美香に向かって、彼はなにか含むような笑いを浮かべている。
身体を、強い力で抱きすくめられてしまう。
彼女は黒澤の秘めていた意図を察し、身体を離そうと抗いはじめた。
それがかなうわけもなく、あっさりとベッドの上に転がされてしまう。
起きあがろうとする間もなく、美香は黒澤の身体に覆い被さられてしまった。
「あ……やめて!」
美香は、ようやく彼がなにを目論んでいるのかを理解した。
笑いを浮かべながらも、やすやすと美香の身体をねじ伏せて唇を塞ぐ形でキスを
繰り返す。
「いやぁ!」
腕を、ベッドの鉄パイプでできている柵の部分に押し上げられる。


「頭のところも、足元も鉄パイプ製か……お誂えむきだな。ご念の入ったことで」
その言葉が、陵辱する女の手足を固定して動かせなくさせるということを示している。
「今から、特別にいいものを拝ませてやる。しっかり、その目を開いて見てろよ」
黒澤はせせら笑うように、うなだれる船村の顔を見やって言った。


身体を動かせなくしておいた船村を目の前にして、見せつける意図で
彼女を抱こうというのだ。
これが彼の流儀での仕返しということだろうか……
美香は異様に火照っていく身体の奥に、欲望が芽生えていくのを
覚えて、戸惑った。

感じるわけがない……
こんな舞台設定で。
以前彼女を犯した男の家に踏み込んで、その男を拘束したうえで、その前で情交を
繰り広げようとしている。
なによりも、船村の目に自分の裸体を、黒澤に弄ばれるさまを晒すことへの強い抵抗が
拭えなかった。
それなのに、そう思っているはずなのに、キスのあとで乳房を触られただけで、悶え声をあげそうになってしまった。

黒澤は美香の両腕を頭上に押しのけさせたまま、白いブラウスの前を手荒に押し開いた。
ひきちぎるかのような手の動きが、実際に上から二つのボタンを飛び散らせた。
眼はあくまでも真剣に、美香の表情を見つめている。
白レースのブラジャーが晒され、背中のホックを外される。
ブラの布がずり上げられて、形よく盛り上がった美香の白い乳房をむき出させた。
「やめて…………」
抵抗の声は、弱々しかった。
両腕を黒澤の手で掴まれたまま、いつのまにか取り出した黒い紐のようなもので
前膊部を括られてしまった。
それから片腕ずつ、手首をベッド後方のパイプ部分に結びつけられてしまう。
手首と肘の間を結んでいた紐は外されて、美香は腕が動かせないのではなく、この紐に伸縮性があることを知った。

美香の足元に移動する黒澤に、脚部も同様に固定するつもりでいることを知り、慄然と
してしまう……。
「いや……いやっ!お願い、やめて……」
もがく美香の形のいい脚に、黒澤の顔が近づく。
手が彼女のスカートの奥に入り込み、太もものあたりをくすぐる。
微妙な部分に触れられて、少しの間そこを指で探られる。
唇を軽く噛んで喘ぎ声を押し殺そうとする美香に、意外な攻撃が加えられた。

ストッキングの股間の張りつめた布を、黒澤の指先が力を込めて触る。
その指がつま先部分に向かい、一気にそのまま布が引き裂かれた。
小さな音を立てて、美香の色白の素肌が露わにされる。
震える美香の素足を、黒澤の手が這い回っていく……。
もう残骸となって脚にまといつく肌色の布を、むしり取るようにして彼女から脱がせる。
実際にここでレイプされたらしい記憶はあるものの、美香には実感を伴っていることは
あまりなかった。
それは夢の中で行われた行為のようでもあって、ぼんやりとどこか違う場所でのことの
ように感じていた。
その時の恐怖感や感触は、ときおり生々しく蘇ることもあった。
けれど、それがこの場所とは結びつかない。
媚薬を飲まされて、意識がはっきりとしていなかったせいかもしれなかった。

今のこの黒澤の行為のほうが、よほどレイプまがいのことのように思える……。
両足を、片方ずつベッドの脚部のパイプ部分に結ばれて、大の字に近い形で美香は
身体を固定されてしまった。
それでも、どうしても嫌だとは抵抗しきれない部分が、確固として彼女の中にあった。

「こうやって、ここに連れ込んだ女たちを犯したのか?」
船村に話しかける黒澤の声音で、美香は我に返った。
船村は、美香の身体を自由にする黒澤を黙って見ていた。
「聞かなくても、答えは決まってるだろうがな」
黒澤はせせら笑って、まだ服を身につけたまま彼女に跨った。
スーツの上着を脱ぎ、床に放り投げる。
そのまま、彼女の開いた股間に自分の腰部分を押しつける。
既にそこが猛っていることを、美香は感触で知った。
ミニのタイトスカートをはぐられ、ショーツを着けただけの部分が男の目にさらされる。
「こんな、透けてるいやらしいのを着けてたのか……」
黒澤が笑いの混じった声でそう言った。
それは、色こそ白とおとなしいものの、漆黒の翳りがほとんど透けているような、ごく薄いレースの素材のものだった。
「いかにも、男にやられるのを期待してる時のためだな」
からかうようにそう言いながら、船村の方を向く。

「ほら!見てろ。おまえが抱いて、自分のものにしたと思った女はな、俺の女なんだよ。
それを今からたっぷり証明してやる」
声に鋭い恫喝の響きがこもった。
「女に一服盛らなきゃ犯れない腰抜けには、いい勉強になるだろうよ」
美香は黒澤が船村に向かって語る言葉を聞きながら、身体がひどく熱くなるような、
それでいて背筋のずっと下、腰椎のあたりが異様な冷気で満たされるような感覚に
襲われていた。
これで歓びが得られるはずなど、ない。
ありえないことだ…………。



美香のほうに向き直った黒澤は、丹念に彼女の身体を愛撫し始めた。
彼女の弱い部分である首筋に、耳元に舌先を這わせながら同時に乳首の先を指で
つまむ。
「んっ…………」
こらえきれない吐息が、美香の固く結んだ唇から洩れた。
「乳首が、こんなに固くなって……ほら、立ってるぜ。感じてるんだろう?」
嘲るように、けれど反論を許さない調子で言い放った。
「ここはどうだ?」
美香の無防備に押し開かれた脚の間に手を伸ばし、ショーツの真ん中の部分を指で
探る。
「もう、濡れてるじゃないか……」
美香はそのことを指摘されて、どんな反応を返したらいいのか戸惑った。
「縛られて濡れるような女なんだよ。おまえはな……」
黒澤が低く含み笑った。
「……いや……ちがう……」
首を振る美香に、彼が畳みかける。

「なにが違う。俺が前に言っただろう。おまえはマゾだ、縛られて感じるような女に変えてやる、ってな……実際、その通りじゃないか。え?」
美香はなにも言えなくなってしまった。
「おまえを初めて抱いた時も、ほとんど無理矢理のレイプの形だったっけな。それでも
おまえは感じまくって、よがり狂って自分で腰まで遣ったんだぜ。はじめて会った男に
犯されて、ホテルまでついてきて。一晩中、やりまくったな。あの時は……」
美香に聞かせるつもりでいるようで、その実船村に向けて話しているのは明らかだった。
「誰かのテクニックじゃ、そんなことは到底無理だろうがな」
船村の視線が、黒澤に命じられたからだけではなく、二人の姿を食い入るように見つめているのがわかった。

彼女の生理が近くて張りつめている乳房を、さほど力をこめずにさすり、敏感になっている乳首の先端に唇をつける。
上下の唇にはさみこまれ、吸われ、そして舌先で転がされる。
「あっ……!あ…………」
もう、美香には声を殺している余裕はなかった。
羞恥心を上回る快感が与えられ、自然と喉の奥から淫らな声音が出てしまう。
これ以上、声を出さずにいたら……おかしくなってしまいそうなほどに、感じさせられて
いた。
他人にセックスを見られてしまうというのもはじめての経験だし、ましてやそれが、
よりによって自分を陵辱した男の前だというのに。
ベッドの柵に四肢を結わえ付けられて、黒澤の思うように嬲られるしかなかった。

最初から、このつもりでいたに違いない……
自分の女である美香を犯した男の目前で、その報復として彼女を自身のテクニックで
悶え狂わせる……。
船村は媚薬で彼女の意識を朦朧とさせなければ、美香を手中に収めることもできずに
いた。
黒澤は身につけていた服を脱ぎ去り、彼の逞しい身体を、貧相な船村に自慢するかの
ような素振りだった。

船村の顔が、黒澤の裸身を見た瞬間にこわばるのを美香は盗み見た。
このやせ細った、身長も180pある黒澤より低い男には、望むべくもない圧倒的な迫力を
持っている。
それがおそらく船村に畏怖を感じさせ、美香にはなぜか誇らしいような気分をもたらす。
この男に抱かれて、他愛もなく乱れる姿を見せつけてやりたくなってしまう。
こんなことはできないでしょう。
この人は、凄いでしょう……
そんな嗜虐的な快感を、船村に対して美香は抱いた。
異常すぎる状況に、知らず知らず彼女も常軌を逸した感覚に染まっていくようだった。
それは彼女自身も自覚していない、美香の心の奥底の暗部、マゾヒスティックな快楽を
得る部分からきていた。
それゆえ、こんなサディスティックな行動に走る黒澤の気持ちも、おぼろげながら、わかる気がする。

美香を組み敷きながら、彼女の濡れきったショーツを引き下ろし、開かれた秘所に黒澤の貌が愛撫を加える。
「あ……あんっ!」
鋭く、小さい叫び声をあげて彼の行為に応える。
クリトリスの周囲に舌先を、ゆっくりと這わされただけで、もうたまらなく感じていく。
「濡れ濡れだな……」
黒澤の嘲笑も、美香の羞恥を煽り、さらにそれが快楽を助長させるだけのことだった。
「凄えな……太ももまで濡れてるぜ。こぼれそうなくらいだ……」
彼女の分泌する液を、淫らな音をたてて舐めてみせる。
静まり返った部屋に、卑猥な水音が響く。
その合間に、美香の声にならない乱れきった吐息が混じる。

「あっ……あ……。もう、だめ……」
「なにが駄目なんだ?」
「イキ……そう……。ああん……あ、ああ……」
鼻にかかった甘い声で、彼女は黒澤に訴えた。
「イキたいか?」
黒澤は、優しく囁くように美香に言った。
「……あ、イキ……たい……」
自分の股間で舌での奉仕を続けている黒澤を、霞がかかっているような瞳で捉える。
「お願いしてみろ」
彼は声を落としてそう命じた。
「ああ……お願い……。イかせて……あっ!」
最後の声は、快感の大波が近寄るのを知ったしるしだった。
「ああ、イクっ……ああん、イっちゃう……ああ……!」
黒澤の舌のひと擦りで、美香はあっけなく頂上に押しやられた。
目の前が白くなってしまうほどの、強烈な快感が美香の身体を貫いていった。


まだその快楽の余韻も醒めやらぬうちに、美香の濡れきったそこに
黒澤のものが当てられた。
「あ……。あ…………」
ゆっくりと、そのまま秘所の表面だけをこすり続ける。
まだ挿入ではなく、そうされているだけで、美香のさきほど達したばかりの、クリトリスの
性感を否応なく刺激していく。
「あ……ああっ!ああ……いい…………」
いや、でも駄目、でもなく素直に「いい」と言ってしまう。
腰の奥に炎が燃えているような灼熱感が襲い、それがすぐに彼女の感じやすい部分を
二度目の絶頂に導く。
「ああっ……あ、ああん……あ、イク……ああ、ねえ……」
眼を閉じて、ただ快感に身を浸していく……
「もう、イっちまうのか?」
そう言うと船村に視線を走らせる。

「ほら……おまえのイキ顔、見せてやれよ。おまえはほんとに、いい顔をするな……」
そう言いながら、黒澤は美香の顔を船村の方に向かせる。
「いやぁ……」
美香は懸命にその手に逆らおうとした。
けれど、立て続けに味わわされた愉悦のあまりに抗えない。
まさに今、快感を受け止めている真っ最中でもあった。

泣きそうな情けない顔になっている船村を見て、黒澤は鼻先で嗤った。
「どうだ。もう、あそこおっ立ててるんじゃねえのか?」
そう言われて、船村の唇がなにかもぞもぞと動いた。
「図星か」
黒澤はせせら笑った。
「美香。もう、入れて欲しいか?」
美香の方を向くと、脱力している彼女に向かって問う。
「どうなんだよ。ほら……」
続けざまに昇りつめたばかりの秘所に、再び淫らな責めが加わりはじめた。
「欲しいか?」
笠にかかって責め立てる。
どうしても、美香の口から淫語を引きださずには済まさないつもりらしかった。
「どうなんだ。言わないと、ずっとこのままだぜ……」
急に動きを止めて、ただ蜜で溢れかえる秘唇に当てたままになる。

「……入れて……」
ようやくそれだけ言っても、そこで責めがやめられる訳もなかった。
「ちゃんと言えよ。どこに、何を。はっきり言え」
いつもの言葉責めならともかく、今は船村にも聞かせる効果がある。
そうと知った上で、美香をさんざんに焦らしていく。

美香の可憐な唇が開き、黒澤に導かれるままに卑猥な言葉が出る。

「そうして欲しけりゃ、まずその前にすることがあるだろう」
自分の既に猛ったものを指し示す。
「……なに?」
美香はとぼけてみせた。
そうすることで、黒澤との秘め事の興奮をいっそう高める。
「決まってるだろうが。しゃぶるんだよ」
美香の顔の前に移動し、そして船村にも「見ていろ」と威圧を加える。

横たわったままの美香の唇の上に、熱いものが当たる。
閉じた唇の上をゆっくりと擦り続けられる。
「ほら。口を開け」
美香は従い、躊躇わずに舌を先端に這わせていった。
「……相変わらず、うまいな……こんな可愛い顔してるくせに」
言いながら腰を動かし、美香の唇の中に埋没させているものを上下させ始める。
「フェラチオして感じる女は例外なくスケベだけど、おまえはこうしてイラマチオされてても
感じるんだな……」
わずかに吐息を弾ませて、黒澤は言った。
「やっぱりおまえはマゾ女なんだ。俺がこう言ってる言葉で、もっと気持ちよくなってるん
だろう?」
美香は口内を突いては去る怒張を捉えながら、舌での熱心な奉仕を忘れなかった。
手が動かせるなら、いつものように袋も、アナルも責めてやりたい。

「最初に犯った日から、まずはじめは抜いてもらうって言ったよな」
それがなんのことを指しているのか、すぐにわかった。
「……もうすぐ、イクぜ……飲め。おまえの口の中に、俺のザーメンぶちまけてやるから
みんな飲め。いいな」
口内射精を予告され、さらに放出される精液を飲むことを強制される。
それこそが、まさに「口を犯された」ということに他ならない。
しかも、それを船村に見られてしまう。
この男に犯されていたときに、淡い快楽を得た覚えはあった。
でもそれは、あくまでも媚薬の作用にすぎない。
陵辱の記憶はところどころ鮮烈に残っているものの、今はそれを思い起こすことさえも
できない。

まもなく、唇の中のものが強い脈動を始める。
美香は黒澤の射精を察して、目を閉じてそれに備えた。
彼は何も言わずに、美香の口内に放った。
彼女はただされるがままに、男の欲望を受け止め、そして躊躇なく飲み下した……




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