sinfulrelations


tobecontinued−epilogue−


 朝焼けが眩しくて目が覚めた。
 隣りに温もりがない。
「青、せい!」
 どこにいるの。不安に駆られ、宙に手を伸ばす。
 二度と離れないと誓ったばかりとはいえ、
 今までの関係を考えれば不安になるのだ。
「ここにいる」
 艶めいた低音が聞こえ、  扉を開けて、バスローブ姿の青が部屋に入ってきた。
「青……」
 胸に込み上げる安心感。
 思わず立ち上がるとシーツがはらりと落ちて、
 朝陽に透けた肌が露になる。
 そのことに構わず、近づいてくる彼に抱きついた。
「もう何処にも行かないで」
 私を置いていかないって約束して。
「行かないさ。俺だってお前がいなければ気がおかしくなるんだからな」
 耳に届く低い声。
 嬉しくて胸が一杯になった。
 涙が次々に溢れ出し、青の肩を濡らす。
「沙矢」
 髪を撫でる手。
 香る石鹸とシャンプーの匂い。
 鼻腔をくすぐられ、またドキドキした。
 鼓動が早鐘を打つ。
(そういえば、素肌で青に抱きついていたんだ。
 気づかれたかしら……?)

「貪欲な女だな」
 邪笑を秘めた声が聞こえた。
 甘すぎる声で囁く彼が恨めしい。
「抱いてほしいのか?」
 遊ばれてる。
「……シャワー浴びてくるわ」
「わかった。早くしろよ?」
 クスクスと笑いながら、青は煙草に火を点ける。
 シーツを纏い、浴室に向かった。
 するり、巻きつけていたシーツを籠の上に置き、浴室の扉を開ける。
 蛇口を捻り、冷水を出す。
 アルコールのせいなのか体が熱くて仕方ない。
 モラルとかもう今更なのだけど、イケナイことをした気分だ。
   浴びるのは冷水でいい。すぐ身体は温めてもらえるもの。
 シャワーの飛沫を浴びながら、思う。
 なんて充実した夜だったのか。
 得る物は大きくて重く、心に響く。
 彼を受け入れて、受け入れられてとても神聖な気分だ。
 昨夜の余韻が残っているのか、体は火照ったままで冷めないよう。
 くすぶる熱が暴れているみたい。
 身体中のあちこちに、刻まれた紅い華がじくじくと疼く。
 青の唇と指先が辿った身体を無性に愛しく感じた。
 例え紅い華が消えても、また咲き誇るだろう。
 彼が私を愛してくれる限り。
 やっと真実の意味で結ばれたのだ。
 むざむざと手離したりはしない。

 シャワーを浴びる私の姿は、擦りガラスのドアに、映っている。
 来てくれないかななんて期待したりしてみる。
 我ながら我儘になったものだ。
 微かに苦笑して、蛇口を閉める。
 浴室から出ると、シーツと入れ替わりにバスローブが用意されていたが、
 青の周到さには慣れきっていたから、特に驚くこともない。
 真顔でバスローブを纏い、寝室へと急ぐ。
 カチャリ。扉を開ける。
「沙矢」
 カーテンの所に佇んでいた青が振り返り、名前を呼ぶ。
 足早に彼に近づき、抱きついた。
「青……」
 身を屈ませた青が肩をきつく掴む。
 瞳を閉じると、唇が深く重なる。
 切ない口づけが降り注ぐ。
 感情がこもった甘いキス。
 身も心も一瞬で溶かされる。
 後はいつものペースで、寝台へと誘われた。
 しゅるり。バスローブの紐が解かれて、肌を露にされる。
 視界の先に見えるのは、たくましい青の身体。
 降りてくるそれをゆっくりと受け止めた。
 肩に腕を伸ばし、しがみつく。
 耳朶から首筋へと落とされるキスに酔いながら再び瞳を閉じた。
 快楽の波に攫われるまでは静かに陶酔していたい。

 唇が合わさる。
 離れては、何度となく触れる。
 舌が差し入れられると、自ら絡めた。
 びりびりと電流が身体を駆け抜ける。
 唾液が糸を引き、二人の間を繋ぐ。
「あぁ……」
 くちゃくちゃと淫らな口づけを交わす音が耳に届いた。
 青の空いていた手が身体を彷徨い出す。
 口づけをやめた唇が、昨夜の紅い痕の上を滑る。
 首筋が仰け反り、膨らみが大きく揺れた。
 彼の大きな手と細く長いしなやかな指が、膨らみを捕らえる。
 指先で挟み、包み込むように撫でた。
 頂を捻り、捻り上げられる。
「ひゃぁ……」
 頂を唇に含まれ、淫靡な音を立てて啜られる。
 欲情は終わりを知らないのかもしれない。
 片方の胸は指を頂に添えて、捏ねられ、片方の胸は
 頂を舌で転がされている。
 最初に会った時から、彼になら何をされても構わない。
 彼とならこのままどうなってもいいという気持ちがあったんだろう。

 青の背に腕を回し両手を繋ぎ合わせる。
 波に飲まれて、身体の力が抜けても身体同士が離れないように。
 ぎゅっと、痛い程力を込めて寄り添う。
 幾度か乱暴に両の手で胸の膨らみを愛撫された。
 仕草を変えて触れられる度、膨らみも形を変えた。
 頂も色んな角度を向く。
 その様子を見て青は楽しんでいるようだった。
 思うが侭にされているこの状態がとても快い。
 指先と唇は身体の上の色んな場所を行き来する。
 身体が大きく跳ねるとベッドも派手な音を立てた。
 腰骨の辺りを指で摩り、啄ばむキスが落とされる。
 そして唇と指は下腹部へと下りていった。
 秘所の外側から、舌で舐められ、口づけられる。
 以前は触れられるのがとても恥ずかしい場所だったのに。
 どうしてこんな不埒な行為が、気持ちいいと感じるようになったのだろうか。
 青のせいだ。
 おかしな声を上げて反応を返してしまう。
 どうしようもなく気が変になる。
「ひゃ……っん」
 秘所から溢れる蜜をしゃぶられる度に、喘ぎは上がる。
 どくんどくんと秘所が痙攣しているのを感じている。
 指で全体を撫で回され、突き出た部分を弄られた。
「あ……っん……あっ」
 絶え間なく波は続く。
 脳裏がスパークし、無色透明の世界が広がる。
 真っ白ではなく色がないのだ。
 一本ずつ指を差し入れられ、鋭い感覚で快楽が忍び寄る。
「……早く」
 ぐらりと身体が大きく傾ぐ。
 意識が遠き彼方へと行き、視界がぼやける。
「早いな」
 残念そうな呟きが耳に届いて、顔が朱に染まる。
(仕方ないでしょ。
 貴方みたいにいつも余裕じゃないんだから)

 秘所の内部で動かされていた指が引き抜かれる。
 また強く彼の肩を掴んで、瞳を瞑る。
 大きな衝撃。
 一気に奥まで青が忍び入ってきた。
 避妊の準備がなくても直に受け入れることができる。
 段々その回数も増えてきて、悦びで心が震えた。
 昨夜の情熱のままに、彼の逞しさをそのまま感じ取れる。
「……せい」
 彼は静かに動き始める。
 狂おしい程満たされて、たまらない。
 私の中にあなたがいる。
 胸を揉みながら、腰を抱えあげられ、密着度は限りなく高い。
 繰り返される抽挿に身も心も砕け散りそう。
 融けて霧散していく意識。
「はぁ……はぁ……はぁっ」
 青が律動の動きを変えたのをあやふやながら感じる。
 宙に浮く身体を捉え、乱暴に胸を掴み上げて、
 愛撫し、頂を唇に含む。
「青、愛してるわ……好き」
 口は勝手に呟く。
 本能の衝動。
「ああ。お前を愛してる。壊したくなるくらいに」
 びくん。
 身体の芯が疼く。
(殺し文句……青は何を言っても似合いすぎて怖い。
 青は女が気持ちよくなることや言葉を
知り尽くしていて、悪魔だと時々本気で思う。
 私も既に悪魔なのだから、お互い様だけど)

 いきなり抱きあげられて座位の体勢になった。
 向かい合って、下から突き上げられる。
 無我夢中で青の背中に爪を立てる。
 青も私の身体を掻き抱く。
 両足を交差させた状態で深く交わる。
「ああ……」
 火傷どころじゃすまない
 烈火の熱が内へ籠もっていった。
 身体の中の炎がくすぶり続ける。
(だけどこれ以上は……)
「お願い……」
 懇願を口にする。
 今すぐ連れて行って欲しい。
 望みは叶えられ、奥底まで、温もりが入りこんできた。
 ゆっくりと円を描いた後、一度出て今度は、力をこめて貫かれた。
 お互いに獣のように唸り声を発していた。
 ふわりと底を這いずり歩いているような感覚がして、絶頂を迎えた。
 それきり意識は途絶えた。

 無理はさせまいと思っていたのに、徒労に終った。
 まあ、俺と沙矢はこれでいい。
 昨夜の名残が身体にあろうと、愛し合う。
 何て純粋な関係なんだろうか。
 いないと思うが俺達に割り込む無粋な輩がいたとしたら、
 相手は無事では済まないだろう。
 沙矢に手を出そうなどと愚かな考えを起こしたらどうなるか、
 考えるだけでも背筋が凍りつく。
 独占欲の塊だというのは自覚している。

 さらりと髪を掻きあげて、沙矢の中から自身を引き抜く。
 シーツが派手に汚れているのは、愛し合った証明だ。
 窓の方を見上げるとカーテン越しに高い陽が差し込んでいた。
 沙矢の剥き出しの肩にシーツを掛けて、ベッドから身を起こした。
 床の衣服に手を伸ばし、拾う。
 沙矢の身体を丁寧に拭い、自分の身体を適当にティッシュで拭いた後、素早く衣服を纏う。
 起こさないようにベッドから脱出して、ダイニングキッチンへと向かう。
 目覚めるまでに、朝食の準備をしといてやるか。
 いや、既に昼食の時間かな。
 クスと笑いが込み上げる。
(どうしようもないよ、俺とお前って。
 貪り合うことが生きがいなんだからな)

 寝室のドアを開けると寝返りを打つ白い肩が見えた。
 黒髪がシーツの上に散らばっている。

 今日は映画でも見に行こうか。
 その前にまた共にシャワーを浴びよう。



PREV NEXT INDEX


Copyright(c) 2005-2009 tomomi-hinase all rights reserved.

-Powered by HTML DWARF-

楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] ECナビでポインと Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!


無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 解約手数料0円【あしたでんき】 海外旅行保険が無料! 海外ホテル