「きゃぁ!」
いきなり無雑作にベッドの上へ放り投げられ、フェイは小さな悲鳴を上げた。衝撃でスプリングが弾み、ぎし、と小さく軋む。
「何すんのよ!」
あまりに乱暴な扱いにカッとなり、怒りの目で男を睨みつける。が、それも束の間、ジャケットを脱ぎ捨ててすぐベッドに膝立ちになり、覆い被さってきた男に両手を押さえつけられる。
いつもの掴み所のない雰囲気や冗談めかした表情はなく、ただ彼女を真っ直ぐ見据える視線がそこにあった。
「ちょっと……ねぇ。冗談でしょ?」
その眼差しが何故か少し怖くなり、フェイは努めて軽さを装って笑いかけた。
「悪いが、俺は今冗談が言えるほど余裕がねぇんだよ」
低音で静かに呟かれるその声がかえって不気味さを醸し、ギラついた視線はフェイを射竦めるのに充分な迫力を持っていた。
彼は本気だ。
今更ながら、自分がしてしまったことの軽率さに気づく。
こういう目をした時の男は、下手に刺激すると何をするかわからない。
彼女がそう悟るのに十分すぎるほど、その一言が全てを物語っていた。
「んっ!」
表情を強張らせたフェイの唇を、再びスパイクが塞ぐ。ふくよかな唇を吸い、舌を差し入れて絡め、角度を変えては深く口づける。彼女の奥まで味わうように、何度も何度も。
「んぅ……ふ……ぅ、っや……んんっ…!」
あまりに激しく荒々しいキスに、フェイの口の端から苦しげな声が洩れる。それでもスパイクは力を緩めず、彼女の唇を貪り続けた。
正確に言うと、既に加減をする余裕も彼の中にはなかったのだが。
深い口づけでフェイの言葉を奪いながら、スパイクは片手を胸元へ滑らせ、赤いシャツの結び目に指をかけて引っ張った。
元々大して固く結んでいるわけでもないシャツの端はあっさりと解け、するりとフェイの体を滑り落ちる。
「んん!」
続いて彼の指がトップスのボタンにかけられ、鈍い音と共に開放感が彼女の胸から伝わってくる。
「んーっ、…っは、いやっ……やめてよっ!」
少しだけ引き戻された思考力を振り絞り、必死に顔を振ってスパイクの口づけから逃れると、両手で彼の腕を掴み、押し退けようと声を上げる。当然ながら、体重をかけて押さえつけてくるスパイクを彼女の力で動かせるわけもない。
だが、この期に及んでまだ逃れようとするフェイの僅かばかりの抵抗が、スパイクの神経を苛立たせた。
「……往生際の悪い女だな」
不機嫌そうな低い声が洩れたかと思うと、スパイクは緩めていた自分のネクタイを解き、フェイの両手を掴んで頭上で重ねると、素早くそのネクタイで縛り上げてしまった。
「!」
うろたえるフェイをよそに、更に余った部分をベッドのパイプ部分に括りつけて固定する。
完全に両手の動きを封じられ、フェイは驚きと焦りで怯んだ。
「な、何すんのよ! 解いて……っ!」
うろたえて言い募るも、彼女の言葉は途中で遮られた。
ボタンを外されて拘束から解き放たれた胸を、すかさず男の両手が包み込んだからだ。
掌からこぼれそうなほど豊かな乳房を、早急な動きで揉みしだく。
「っや、いやぁっ! やめ……んん!」
再び抗議の声を上げようとした口は、間を置かず男の唇で塞がれた。噛みつくように唇を奪いながら、両手の動きは緩めずに柔らかな双つの膨らみを手の中で弄ぶ。
吸い付くように掌に馴染んでくるきめ細やかな肌の感触を味わいつつ、その頂で既に硬くなり始めていた紅い突起を指先で摘み上げる。
「っ!」
びくり、とフェイの体が揺れ、喉に詰まったような吐息が洩れた。
何とか両手を自由にしようともがいても、男の力できつく固定されてしまった縛めは、ギシギシとベッドパイプを鳴らすだけで彼女を解放してはくれなかった。
その間にも男の手はフェイのたわわな双丘を這い回り、柔らかな弾力を味わいながら捏ね回すようにして揉みほぐす。硬く立ち上がってきた頂を指先が挟んで転がし、弾き、擦り上げる。
「ぅん、んーっ……!」
塞がれた唇の端からくちゅくちゅと粘着質な音が洩れ、ねっとりと絡み取られた舌は成す術もなく男の舌使いに翻弄される。上顎の先をなぞられて力が抜け、弄られる胸から広がる熱い感触と甘い痺れが、じりじりと彼女の思考を侵食していく。
「ん……はぁっ……、や…んんっ、やめ……あんっ!」
一旦呼吸を繋ぐために離れたかと思った唇は、そのまま彼女の首筋をなぞって胸元へ滑り落ち、揺れる膨らみの麓をちろちろと這った後、紅く色づく蕾へ覆い被さった。
敏感な部分にぬめった舌の感触を感じ、フェイは身をよじった。思わず洩らしてしまった艶めかしい声を、慌てて唇を噛んで堪える。
片方の胸は指先で転がしながら、唇に包み込んだ乳首にも絶え間なく刺激を送る。
「くぅ……ん……んんっ……」
必死に声を押し殺すフェイを横目に、スパイクは唇の中でますます硬く立ち上がる蕾を舐り、舌先で何度も形をなぞり、押し潰しては強く吸い上げる。
間断なく胸から伝わってくる鋭い刺激に、暴れていた手足の動きは鈍り、ベッドパイプの軋む音も次第に小さくなっていく。
スパイクは体を少し横へずらし、唇でフェイの右の膨らみを、背中から回した左手で左の胸を弄りつつ、空いた右手で剥き出しになった腹を撫で、そのまま更に下へとスライドさせた。
「んぁっ!」
噛んでいた唇を離して思わず艶めいた声を上げてしまうフェイ。頭のどこかで、まだ僅かばかり残った理性の灯が、最後の警告とばかりにちかちか瞬いていたが、それも男の手がいきなり下半身に伸びてきたことで消し飛んでしまった。
ホットパンツ越しに掌が秘部をなぞり上げ、そこから流れる快感に体がびくびくと反応してしまう。
そこは既に奥から滲み出た蜜で濡れ、布越しでもわかるほどに湿り気を帯びていた。
下腹部に生まれた疼きは、フェイの意志ではもうどうにもならないところまで大きくなりつつあり、せめて声を洩らさないようにするのが精一杯だった。
何度かホットパンツの上から彼女の反応する部分を撫で上げると、スパイクはサスペンダーの留め具を外し、じかに中へ手を忍ばせた。
「はぅっ!」
前触れなく訪れた直接的な感触に、フェイの体が跳ねる。
熱い掌が秘部を包み込み、無骨な指先が秘唇をなぞり、硬くなった花芯を擦り上げる。
「んぁ、あっ……くぅ…んんっ……」
遠慮のない愛撫が彼女の最も敏感な部分を弄り、そこから次々と遡る甘い快感の波に、意識が呑み込まれそうになる。
口を開けば甘い色に染まった喘ぎを上げてしまいそうで、必死に唇を噛んで声を出さないように堪えていたが、それも徐々に儚い抵抗へと変わりつつあった。
「や、ダメっ……ぁんっ!」
荒っぽく秘裂の入り口を探った後、指先がつぷりと花弁の中に沈んだ。秘唇からはとろりと愛液が溢れ、男の手を濡らしていく。
その間もスパイクの唇と左手による両の乳房への愛撫は休みなく続けられ、更に右手の指が中襞の奥へと潜り込み、吸い付く襞壁を引っ掻くように擦り上げてフェイの性感を翻弄する。
「くぅ…んんっ…!」
スパイクの指は熱く蕩けた彼女の中で何度も行き来を繰り返す。根元まで埋めた指をぎりぎりまで引き抜き、また勢いをつけて奥まで埋め込む。愛液にまみれた指が抜き差しされるたびに、ぐちゅぐちゅといやらしい音が部屋に響く。
「っふ…ぅ、んくぅ!」
膣内で蠢く指先は、フェイが鋭い反応を見せる部分を巧みに探り当て、強弱をつけて窪みを押し上げ、引っ掻き、小刻みに震わせて擦り上げる。そのたびに、彼女の口からくぐもった悲鳴が洩れる。
まるで彼女の感じる部分を知り尽くしているかのような的確な愛撫に、体の中で最も敏感な部分を立て続けに責められ、自分の体が零す粘り気のある音に羞恥を覚える余裕すらフェイからは失われつつあった。
「んぅ、っ! んんーっ…!」
激しい抽送にフェイの腰が浮き上がり、拘束された腕が揺れてベッドパイプがギシギシと鳴る。内壁の締め付けがきつくなってきた頃をみて、スパイクは一旦動きを止めた。弄んでいた胸を開放し、膣内を引っかくようにして指を抜く。
「ふぅ…っん」
その感触にもフェイは身震いし、唇をきゅっと結んで堪えようとする。
が、息をつく暇もなく、体を起こしたスパイクは力の抜けた彼女の脚を持ち上げ、荒っぽく下着ごとホットパンツを剥ぎ取ってしまった。
「あ……やっ…!」
下半身全てを晒され、か細い悲鳴を上げるフェイをよそに、スパイクは強引に開かせた彼女の両脚の間に滑り込むと、愛液に濡れてひくひくと息づく中心部へ顔を埋めた。
「ひあぁっ!」
抗議の声を継ぐ間もなく、ぬめった生温かい感触に秘唇を舐め上げられてフェイが仰け反る。
とろとろと溢れる蜜を啜るように男の唇が秘裂に吸い付き、花芯をざらついた舌がなぞり、蠢く襞を舐り上げる。そのたびに、ぴちゃ・くちゅっと艶めかしい水音が洩れ、フェイの腰がびくびくと跳ねる。
「んんんっ! っ、ふ……ぅっ……ん──っ!」
自分の中で暴れ回る舌がもたらす快感が閃光のように脳裏を突き抜け、嫌々をするように首を振りながら悶えるフェイ。かたく目を閉じて必死に抗っているように見えても、その面差しは純粋に快楽に対する悦びに染まりつつあった。
そんな彼女を更に追い詰めるように、スパイクの執拗な愛撫は続く。開かせた両脚を抱え上げ、快感に震える細い腰をしっかりと押さえつけてフェイを貪り続ける。秘唇の入り口から中襞の奥へと潜り込み、荒々しく舌を蠢かせ、止め処なく溢れる愛液を絡め取るようにして舐め上げる。
「くふぅ、んんっ! っぁ、ふ、…! ──っ!」
飢えた獣のように激しく貪るスパイクの容赦のない責めに、フェイの意識はあっという間に高みに持ち上げられ、じゅうぅっと音を立てて強く花芯を吸い上げられた瞬間、彼女の体がびくんと大きく震え、喉の奥に詰まったような悲鳴が洩れた。抱え込まれた脚が硬直するようにひきつり、ぴくぴくと小刻みに揺れた後、ゆっくりと力が抜ける。
フェイが昇りつめた際にまた新たに溢れ出た愛液がスパイクの口元を濡らし、秘唇を伝ってシーツに滴り落ちていく。
スパイクは口を拭うと上体を起こし、達した余韻でぐったりと脱力しているフェイを見下ろした。
頬を朱に染めて熱い息を零しながら彼をぼうっと見上げる悩ましげな表情。ほんのりと桜色に色づき、上気した艶やかな肌。呼吸に合わせて上下に揺れる豊かな乳房、艶めかしい曲線を描くウエストのライン。そして今まさに自分の目の前に晒されている、ぐっしょりと淫らな蜜に濡れてひくひくと蠢くピンク色の秘裂。
全てがどんな男をも狂わせる情景だった。
ごくりと喉を鳴らし、服を脱ぐのももどかしく、スパイクは痛いほどに立ち上がった自身を解放する。
それはこれ以上ないほどに熱く硬く自己を主張し、フェイを欲しがって既に先走り液を滴らせていた。
両膝に手をかけて再びフェイの間に割り込むと、脈打つ怒張の尖端を秘裂にあてがう。
フェイがその熱さに小さく息を飲んだ瞬間、スパイクは彼女に覆い被さりながら一気に中に押し入った。
「んぁっ…あぁあ!!」
ずぶり、とぬめった水音が洩れ、熱い衝撃に体の中心を貫かれたフェイの唇から、とうとう堪えられなくなった甘い悲鳴が、堰を切ったように溢れ、部屋に響いた。 |