.  4.


姉さんの嘘吐き。
元気になるって。
また旅行にでも行こうって約束したのに。




僕は二つの墓の前に立つ。
一つは母さんの。




もう一つは。




エドワード・エルリック。




つい最近眠るように逝ってしまった、たった一人の姉さんの墓。




二人の墓に花束を添えて黙祷すると、僕は後ろを振り向いた。
そこにいるのは青ざめた顔をした一人の男。
姉さんの最後まで愛したたった一人の男。




彼が家に慌てて飛び込むようにしてやって来たのはついさっきの事だった。




手には花束と。
そして。
2通の手紙を持って。








「中将・・・。ここがそうです」
姉さんが亡くなる少し前に、この人はまた一つ昇格した。
それでも、見た目は以前とはほとんど変わっていない。
最後にみた時のそのままの姿だ。




僕が一歩下がると、彼はその代わりに前へと進み、手に持っていた花束を姉さんの墓にそっと置き、そこに膝を付いた。




その名前を確認するかのように、墓に刻まれた名前をなぞる。
「エド・・・」
姉さんの名前を呼ぶと、彼は握り締めた拳を地面へと殴りつけた。
「どうして、本当の事を言ってくれなかった!
 私がそんな事で君の事を見捨てると思っていたのかっ」
悲痛な叫びを訴えても、もう姉さんは答えることはない。
僕は後ろからその背中に答えた。
「・・・姉さんは貴方の望みの邪魔にはなりたくなかったんですよ。
 安心して、上を・・・貴方の望みを目指して欲しかった・・・」
「・・・私は一度たりとも君達の事を邪魔だなんて思ったことはなかったよ。
 きっと、彼女は私の事を思って別れを告げたのだろうとは予想をしていた。
 だから急いだのだよ。
 急いで、望みを叶えて彼女が安心して私の元へ来れるように・・・。
 もう少しだったんだ。
 ・・・こんなことなら、無理矢理にでも連れ戻しにこればよかったっ」
「姉さんは・・・幸せでしたよ。
 貴方の事を最後まで想ってた。
 ・・・それでも貴方のいうとおり、もし貴方が迎えに来ていたならまた違っていたかもしれない」




もし、そうなっていたなら、姉さんは幸せだったのだろうか。




お互い別れてもずっと想い合っていた二人。
なのに、待っていたのは永遠の別れ。




お互いにお互いの事を想っての行動が引き起こした悲しい別れ。




・・・いや、姉さんはそれでも拒んだかな。
一度決めたことは貫く人だったから。









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