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6.
「姉さんからこれを、預かりました」 僕が出したのは、白い封筒だった。 「・・・手紙?」 それを、受け取って封筒を見れば、『エドワード・エルリック』の名前が書いてある。 「姉さんが死んだと知ったあなたが、まだ姉さんの事を忘れていないならそれを渡してくれと。 何が書いてあるかは、僕にもわかりません。 それは、あなたへの最後の手紙だから」 死ぬ前に、姉さんが僕に託した手紙だ。 もし、彼がここにきて、まだ姉さんの事を忘れてはいないのなら渡してくれと。 「・・・見ても?」 「どうぞ・・・」 彼は震える手で、その手紙を受け取ると、大切そうに封を切った。 しばらくして 「ふ・・・」 手紙を読み終えたらしい中将がその言葉を漏らす。 「中将・・・?」 俯いていて表情は読めないけれど、手紙を読んで苦笑しているのだと感じた。 「あぁ・・・すまない。手紙を預かってくれてありがとう。 ・・・生きている時にこの言葉を聞きたかったよ」 そう言って顔をあげた彼は静かに涙を流していた。 確かに涙を流してはいるのだけれど、いつも姉さんにだけ見せていた優しい笑顔で笑っていた。 「アルフォンス君。君の姉さんは生きているよ」 「え?」 思わぬ言葉に驚いて、僕は声を上げた。 僕の様子に苦笑すると、中将は自分の右手を自分の胸に当ててその漆黒の瞳を閉じた。 「ここに生きているよ。 彼女の存在は私達が生きている限り決して消えない。 彼女が望んだように、私は歩き続けるよ。 私達は老いていき、ここにいる彼女は今のままの姿だけれど・・・。 私は、これからもエドワードと共に歩いていくよ」 「・・・そう、ですね」 僕もそっと胸に手を当てた。 姉さん。 僕も、姉さんの愛した人も。 また立って歩いて行くよ。 辛いこともあるかもしれない。 でも、大丈夫。 僕たちは生きるよ。 もう、時間を止めてしまった姉さんの分まで。 立って歩け 前にすすめ。 僕たちにはまだ足がある。 踏みとどまるわけにはいかない。 ねぇ、ちゃんと僕たちの中からみていてね。 next→ ←back |