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スピカがこのお城にきてから1週間ほどの月日が流れようとしていた。
スピカはこの通り夜の女性なので朝はほとんど寝てしまっている。だから起床するのはいつもお昼だった。
この1週間の間に一夜を共にしたのは、意外にもラグリアとのみだった。しかも毎日ではなく、1日おきといった感じだったのだが・・・・レグルスが全くスピカの元に来なかったのがスピカは何かもどかしい感じがしてしまった。
せっかく自分を買ってくれた人だというのに・・・・嫌われてしまったのだろうか?だが夕食の時はよく彼と会っていたし普通にお喋りもしてくれている・・・・・・そういえばプレアデスをはじめ、この城にいる女性たちの男性人気はレグルスが一番のような気がした。確かにレグルスはとても美形であるし、優しいし・・・・憧れるのも無理はない。レグルスも色々な女性を相手にしているのだろう。だから自分の下には来てくれないのだ。スピカは自分にそう言い聞かせた。
さてスピカは、ここの所お昼はブランチめいたものを食べ終えてからお城探検をしていた。アルビレオに一通り紹介を受けていたものの、直接もう1度自分が探検する必要があると判断したからだ。
それで今日は中庭にあるあのカフェテラスに行こうと思った。しかし1人で行くのもつまらないので、アルビレオを誘おうと思った。
思い立ったら実行だ。軽くブランチを食べ終えたスピカは前に案内されたアルビレオの部屋に足を運んだ。

「え〜っと確か〜・・・同じ階だったと思ったんですけど〜・・・・」

まだこのお城には慣れていないし方向音痴なスピカは今3階にいたものの、アルビレオの部屋が右方向にあったのか、左方向にあったのかを忘れてしまっていた。

「え〜っと〜・・・・どちらでしたっけ〜?」

と頭を悩ませてしまったスピカだったが、ふとその時左側の方から誰かがこちらに向かって歩いてきていた。何やら鼻歌まじりに歩いてくる様子なのだが・・・・この声は・・・・ひょっとしなくても・・・・

「あっ!アルビレオさん!?」
「ん?あらヤッホースピカちゅわ〜ん!!ンキャ〜!!どうしたのさ〜、こんな所で〜。探検か何かしてんの〜?」

丁度運の良いことに鼻歌まじりにこちらに歩いてきてたのはアルビレオだった。

「あ、えっと・・・実は、アルビレオさんを探していたんです!」
「えぇっ!?あたしを!?あらそーだったの〜、嬉しいわ〜!!んで?何かご用かな〜?」
「あ、その・・・前、アルビレオさんがお城の案内してくださった時、ありましたよね!」
「うんあったね〜。」
「あの中の・・・中庭にあったカフェテラスに行ってみたくなってしまって・・・・1人で行くのもなんだったので、アルビレオさんさえよろしければ、ご一緒して欲しいなって思いまして・・・・」
「えぇ〜っ!?あ、マッジ〜!?うんうんあたしは全然OKよ〜!!んも〜う、あたしがスピカちゃんのお誘い断るワケないじゃな〜い!!んじゃ、善は急げね!早く行こ行こ!」
「あ、はい!」

そうして一緒に並んで階段を下り出したのは良かったのだが・・・・・・

「あ、あの・・そういえばアルビレオさん・・・・お部屋から出てこられたということは・・・何かお仕事とかありました?」
「え?あ〜、全然大したコトじゃないから気にしなくてイイよ〜。サボタージュ♪」
「えぇ〜っ!?あ、あの、そんな!!私なんよかり、そのお仕事の方優先させて下さい!」
「アハハッ!ヤダなぁ〜、スピカちゅわ〜ん。ホ〜ント全っ然大したコトじゃないんだってばさ〜、後からいくらでも出来るコトだも〜ん。それだったら、スピカちゃんとこーしてお茶しに行く方がいつになるか分かんないものね〜。ンッフフ〜、後でレグルスに自慢しちゃお〜っと!「スピカちゃんから誘われてお茶した〜。」なんてゆーと、アイツ絶対羨ましがるコト間違いないわよ〜!?ンフフフフフフ〜、ざまぁ見ろだわ〜。」
「あ・・・あ、はぁ・・・アハハハハ・・・・」

スピカは苦笑してしまった。アルビレオの不敵な笑いを見て何となくレグルスがしのばれてしまうのだった・・・・・・・・・・・

 

 

さて、カフェテラスに着いた2人は余裕で空いていた席に座り込んだ。

「ほらほら〜、見てスピカちゅわ〜ん。この充実したメニュー!!ケーキもおいしいよ〜!タダだから自分の食べたい物一杯頼んじゃってごら〜ん。」

と言ってアルビレオがメニューを見せてくれた。スピカはたくさんある飲み物やケーキの名前に目を奪われてしまっていた。

「あ、はい!え〜っとそれじゃあ〜・・・・・ミルクティーと、ショートケーキで・・・・」
「ン、OK!あ〜、あ〜!!すいまっせーーん!!ご注文イイですか〜!?」

すごく大きな声でアルビレオが言うものだからスピカはもちろん、来ていた少数の客たちも皆驚いてアルビレオを見ていた。
だがアルビレオは全然恥ずかしそうなそぶりを見せず、むしろニヤッと余裕の笑みさえ浮かべていた。そんなアルビレオを見てしまってスピカは改めてすごいと思ってしまっていた。
アルビレオが注文内容を全部言ってくれたので、後は品物がくるのを待つのみとなった。

「ン〜!やっぱ大きい声出せるって気持ちいいわね〜!!あたしこの通り喋り魔だからさ〜、デッカい声出した後って、サイッコーに気分爽快だわ〜!!アハハッ!でもスピカちゃんはあたしとは正反対タイプよね〜。」

とアルビレオが笑って言うものだから、スピカも笑みをこぼした。

「ウフフッ。はい、そうですね。」
「でもスピカちゃんはそこがイイのよ〜。そのスピカちゃんらしさを、大事にしてね?」
「あ・・はい。ありがとうございます、アルビレオさん。」

そうして話していた時だった。

「あぁーーっっ!!見つけたよ〜!?こんな所にいたんだね!マイハニー!」
「ゲッ!!」
「?」

突然どこからか声が聞こえたかと思うと、こちらに向かって走ってきたのは・・・薄い桃色の髪をなびかせたウェーブヘアーの男性だった。
渋い緑色の瞳をしていて・・・・・そしてまたなんとなくだが、目元がレグルスやラグリアに似ている印象をスピカは覚えた。だが髪の色と瞳の色がまるで違う・・髪の色は染めているように見えないし・・・・・何となくラグリアやレグルスに似たなかなかの美男だったが、「軽い」という感じの印象を受ける。
キキーーッと今まで走っていたのを滑り止めて、この男性はバンッ!とスピカたちの座っているテーブルに手を付いて口を開いた。

「アルビレオく〜ん!探していたんだよ〜!!君が時間になっても来ないからこうして探していたら・・・こんな所にいたとは思わなかったよ〜。しかし・・何だってこの僕との約束を破ってまでこんな所にいるのかな〜?詳細に明確な理由を聞かせて欲しいんだけどね〜。」
「あの〜・・・・あなた様との約束って言ったって・・たかが接待でしょ〜?ですからあたしは、有益な方を選んだだけですよ〜。」
「おや!!僕と過ごす時間が有益じゃないと・・君は言うんだね?・・僕はこんなに君に恋焦がれて待っていたのに・・・・」
「・・・あ、あのですね〜。そーゆー事実に基づいてないコト軽々と言わないで下さいます〜?」
「おや!!君は僕の言っていることがデタラメだと思っているのかい!?チッチッチッ・・・それは誤解だよ。あまりにも大きな誤解だ・・・・僕にそんな気はないのに・・・・」
「勝手に言ってて下さい。ね〜ぇ〜それよりスピカっちゅわ〜ん!こぉ〜んな人無視して、女同士楽しもうね〜!!」
「えっ!?あ、えっと・・ですけど・・・・・」

気にせずになんていられない。こんな特徴ある男性がアルビレオに熱烈にラブコールしているのだ。しかもアルビレオの言っていた「仕事」とはどうやら彼との約束のことだったみたいだし・・・・・何だかスピカはかえって申し訳ない気持ちになってしまっていた。

「ん?おや・・そちらのレディーには今日初めてお目にかかるね。いや〜、ビックリだな〜。こんな可愛い子、このお城にいたっけ〜?」
「あ、ヤバッ!スピカちゃん、逃げるわよ!!」
「えっ?ええぇぇっ!?」

アルビレオは咄嗟にスピカの手を取り、急に立ち上がって走るものだからスピカもついアルビレオに連れられて走った。

「あっ、こら!!待ってよ君達〜!!」

と言ってこの男性はスピカ達のことを追いかけてきた。

「ヤッバ・・あいつ結構足速いのよね〜。スピカちゃん、もうちょっと速く走れな〜い?」
「えっ!?あ、あの、そんな・・・・!私・・かなり・・限界で・・・・!!」

実際アルビレオの走るスピードはとても速かった。スピカは元々運動があまり得意ではないので、こんなに速く走ったことなんてなかった。

「ね〜ぇ〜!待ってよ君達ってば〜!!」

段々この男性の声も近付いてくる。スピカからしてみれば信じられない。声に乱れてる様子がないし、それにしては声が先ほどより確実に近付いている。
どうしてアルビレオがこうして逃げ出しているのかよく分からないが、今はとりあえずアルビレオに従うのみだった。だが・・・・・・

「キャッ!!いたっ!!」
「!スピカちゃん!!」
「おっと・・・・・!」

たまたまスピカの走っていた所に石が突き出していた。それにスピカは思いっきり足のつま先部分が当たってしまい、こけてしまったのだ。


  

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