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お城の中に入ったマクリスは、スピカを抱いたまま歩いていた。
スピカは正直言うと助かっていたが、この程度の傷ならまだ歩くことが出来るし・・・何だか悪いことをしてしまっている気がしてならなかった。
「そ、その、すみません・・・・わざわざ、こうして運んでいただいてしまって・・・・」
「君が気にすることじゃないよ、僕が好きでやってるんだから!あぁ・・ここが僕の部屋なんだけど。ドアを開けてもらっていいかい?」
「あ、は、はい。」
マクリスにそう言われ、スピカはそこのドアを開けた。マクリスは中に入り、スピカを椅子の上に座らせた。
「待ってね。今手当てしてあげるからね。」
とマクリスは言って、棚の上から救急箱を持ってきた。
「あ、あの・・本当にすみません。私、ドジで・・・・」
「アハハッ!そんなことはないさ。こうして君と一緒にいれる時間が作れたからね・・・神に感謝している所だよ。」
「あ・・そ、そんな・・・・・」
マクリスは笑顔でスピカを見つめた。スピカも笑顔には弱いので、申し訳ないと思いながら笑顔で返した。
マクリスは絆創膏を丹念にはがしていった。なるべくスピカが痛がらないように気を遣ってくれているのがよく分かった。それでも怪我をした所から絆創膏をはがされるのは痛いものである。だがその痛みはマクリスのおかげで最小限におさえられた。
マクリスは絆創膏を完全にはがしてスピカの傷の具合を見ていた。大した傷ではないのだがそんなに見られてしまうと何だかちょっと恥ずかしい。
ふとマクリスはスピカの顔を見つめた。スピカはただでさえ恥ずかしかったのに顔を見られてしまって余計に恥ずかしくなってしまい、顔を赤くしてしまった。
「・・君は本当に可愛いんだね・・・・アハハッ!そんなに顔を真っ赤にしてしまって・・僕に見られて、照れてしまっているのかな?」
「!あ・・えっと・・・・」
「おっとと・・君の顔ばかり見つめていても始まらないね・・・・とりあえず消毒っと・・・・」
マクリスはすぐに考えを転換させ、スピカに消毒を施した。
「っ・・!」
傷口に消毒液がとてもよくしみる。スピカは痛みを我慢した。
「あぁ、ごめんね。痛いよね・・・でも、我慢してね・・・こうすることでしか、君の傷を癒してあげられないから・・・・」
「あ・・はい・・大丈夫です・・・・」
「・・・君の肌はとても奇麗だね・・・・こんな傷がついてしまうのは、本当にもったいない・・・・僕が追いかけなければ、こんなことにはならなかったんだろうね・・・君に怪我をさせてしまって、反省しているよ・・・・」
「あ、そ、そんな・・・・ですが・・どうしてアルビレオさんが逃げられてしまったのか・・それがよく・・分からないのですけど・・・・」
「アハハハッ!それはね、きっと・・・・アルビレオ君が僕を嫌っているからじゃないかな?」
「えっ!?」
あっさりそんなことを言ってしまったマクリスにスピカは驚いてしまった。
「アルビレオ君が僕を嫌がっているのは元からの話でね。それにプラスして、君のことをとても大事にしていたね・・・・そんな大事な君を、嫌いな僕に触れさせたくなかったんだろうね・・・・アハハッ!彼女らしいよね・・・で〜も、今回の君の怪我の原因は僕より明らかに彼女の方に落ち度があるし、僕との約束を破ったのも彼女だし・・・・いや〜、こうなるのは必然だったのかもね〜。アハハハハッ!」
マクリスは笑っているが、その背後には寂しさとも悲しさとも言えない何とも言えないマクリスの表情をスピカは見て取った。それは今までの軽い感じのマクリスとは少し違った印象であった。
「あ、は、はぁ・・・・アハハハハ・・・」
「・・・・ところで君は、最近ここに来たって言っていたね・・・・普段は何をしているんだい?」
「!あ・・・私は、その・・・・・・・」
いざ自分の職業を言うとなるとスピカは何だか恥ずかしかった。とても卑しいものだから・・・・・スピカは顔を俯かせた。それを不審に思ったマクリスが少し驚いた顔をした。
「・・・言えないのかい・・・・?それだったら・・無理に聞かないよ。」
「!・・・はい・・・・」
「・・・ねぇ、でもスピカ君・・・・僕が君がどうしてここにきたのか、当ててみてもいいかい?」
「!あ、は、はい・・・・」
「うん・・それじゃあね・・・・僕の推理によると、君はアトラス様に育てられた娼婦さん。プレアデス君の後輩ってことになるのかな?」
「!!!あ・・・・っ・・・・」
図星だった。アトラスのことまで正確に言い当てているし、どうやらプレアデスとも面識があるらしい。
「アハハハッ!図星だって顔をしてるね、スピカ君。いや〜、参っちゃうな〜。どこまで当たってて、どこまで間違ってたのか僕に教えてくれないかな〜?」
マクリスは急に照れだしてしまった。冗談だったのだろうか?それにしては全部当たっているのでスピカはどうしようか困ってしまった。
「あ・・えっと・・・・マクリス様が仰ったこと・・全部当たってます・・・・どこも、間違いないです・・・・」
「えっ!?ホントに!?・・・半分冗談だったのに。本当かい!?ねぇ!!」
いきなり両肩をつかまれて揺さぶられてしまい、スピカは少し驚いてしまったが返事をした。
「あ、はい・・本当、です・・・・」
「信じられない。君みたいな子があのアトラス様に育てられた娼婦だなんて・・・・・アハハッ!でもそしたら話は早いね・・よし!今から僕のお相手をしてもらえないかい?スピカ君。」
「えっ!?」
「君の部屋は、恐らく歴代君の先輩達がいた部屋になっているんだろうね。だから・・今日は出張サービス!僕はこうして君を介抱してあげたし・・・・お互い、それで交換条件ってコトにならないかい?」
「!・・・・・」
スピカはマクリスをつい見つめてしまった。マクリスの瞳の輝きは冗談ではなかった。スピカを見つめ返す瞳が、その意志の強さを物語っている。
「・・アハハッ!今度は君が、「冗談じゃないよ」って顔してるね。」
「マクリス、様・・・・・」
「でも・・僕は本気だよ?この気持ちは・・もう誰にも止められないんだ!それに君だって・・仕事だろう?」
「!!は、はい・・・・・」
「じゃあ・・僕のお相手位してくれるだろう?う〜ん、アトラス様経由ってコトは・・・レグルス君から買われてきたのかな?」
「!!あ、はい・・・・・」
すごい。元々王族で今は大臣のレグルスに「君」付けとは・・・・一体彼は何者なのだろうか?よほど身分のいい人に違いない。
「あぁ〜、やっぱりね!僕もアトラス様とは面識があってね〜・・・彼の娼婦といえば、一流なコトでとっても有名だけど・・・・君は・・どうかな?試してしまおうかな・・・・?」
「えぇっ!?そ、そんな・・・・」
「アハハッ!君ってホントに可愛いね〜。しかし・・アトラス様にしては珍しいタイプの女性だよね。君のような子が娼婦で、しかもあのアトラス様経由ともなると・・・相当期待してしまっていいのかな?」
「!!あ・・え、え〜っと・・・・」
「自信が・・ないのかな?」
「・・・えっと、その・・・・私自身、よく分からなくて・・・・娼婦として、まだまだ未熟だと思いますけど・・・・ですけど、アトラス様の名に恥じないように・・頑張ります。」
「・・・・うん、分かったよ。それじゃあ、おいで!立てるかい?」
とマクリスに言われ、手を差し出されたのでスピカは「ありがとうございます。」といいながらマクリスの手に自分の手を置いた。マクリスに立たされたスピカは、そのままマクリスに抱き締められた。そしてそのままマクリスの唇がスピカの唇に重ねられた。
マクリスはすぐにスピカの口の中に舌を入れてきた。スピカは驚いてしまったのとキスの心地良さと、怪我をしていて足に力が入らなくなってしまったことでフラフラになってしまった。それをすぐに悟ったマクリスが慌ててスピカを抱き締めなおす。
「大丈夫かい!?」
「あ・・は、はい。すみません・・・・そ、その・・・足が・・・・」
「あっ、そうだよね・・・ごめんね、気がきかなくて。さ、それじゃあお姫様。僕につかまって。」
「あ・・は、はい。」
そうして再びマクリスにお姫様だっこされてしまったスピカは、そのままベッドにゆっくりと寝かされた。
「うん、これならきっと大丈夫だよね!服は脱げるかな?」
「あ・・は、はい。大丈夫です・・・・」
と言ってスピカは自分の服に手をかけたのだが、マクリスがそれを止めた。
「待って!!・・いいよ、僕が脱がしてあげる。」
「えっ!?」
「おせっかいってヤツかな?アハハッ!でも・・やらせてもらえるよね?」
「あ、は、はい・・・あの、それでは私もマクリス様のお召し物を・・・」
「あぁ、いいよ。アハハッ!いいね、お互いに脱がしあいっこだね。あぁ・・僕は嬉しいよ。君みたいな子を、一度でいいから抱いてみたかったんだ!」
「!あ・・は、はい・・・・」
お互いに服を脱がしあいながらそんな会話をする。スピカは突然のことでドキドキしてしまっていたものの、こうしてベッドに寝かせられて裸にされると体がしっかり反応していた。
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