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「あっ・・ゴメン。君が嫌がるなら僕は何もしないし、言わないよ・・・・ゴメンね、スピカ君・・・僕のコト、嫌いにならないでね?」

と言ってマクリスがスピカを優しく抱き締めてくれた。

「あ、そ、そんな・・・嫌いになるだなんて・・・・その・・私こそすみません・・・・」
「いいんだよ、君のせいじゃないんだから。」
「そうだよスピカちゃ〜ん。ぜ〜〜んぶ悪いのはスピカちゃんにワルさしようとしたマクリス様だもんね〜?」
「アルビレオく〜ん?僕がいつスピカ君に悪さをしようとしてたのかな〜?」
「常にそうだと思いますけど〜?ご自分で自覚もなさってないなんて・・・・次期王様としてその無責任な態度はどうかと思いますけどね〜〜。」
「ウッ!!・・・・・確かに・・アルビレオ君の言う通りかもね・・・・僕はいつも・・責任転嫁さ・・・・ホント、君には勝てないよ。完敗だね・・・・」
「んまぁ・・・そんな風にくら〜くなられてご反省なさってるならあたしはそれでイイんですけど・・・・・」
「うん・・・・たまには、君の言うことに免じて日頃の態度の反省でもしてみるかな?アハハッ!ねぇアルビレオ君。そんな僕に、君は「偉い」って言って誉めてくれるかい?」
「・・何であたしなんですか・・・・・」
「何となく♪たまには君にだって誉められてみたいじゃない!知ってる?僕はね・・・普段ないようなコトがあるととっても嬉しくなってしまうんだよ!!誰でもそうだと思うんだけど・・・・僕の場合は格別。だから君が誉めてくれたら・・・僕はもう少し成長出来そうな気がするんだ!」
「あぁそーですか。ですけどあたしはそんな甘チャンじゃないですよ?誉めてもらうならより一層の努力をして下さい・・・一応あなた様は磨けば光る原石だと、あたしはそう思いますよ?」
「・・・・アルビレオ君・・・・それって、もしかして・・僕のこと、誉めてくれてる?」
「どう取るかはマクリス様の自由です。まぁ・・・今のマクリス様はまだまだ王様としての価値はほとんどないですけどね。自分自身を磨くことが、王様たるものだと思いますよ?」
「う〜ん・・そんなモノなのかな〜?僕にはまだよく分からないよ・・・・君とは同い年なのにね、アルビレオ君・・・・僕はまだ・・精神的に子供のままみたいだよ。」
「えっ・・・・」

スピカはマクリスの何気ない一言に驚いてしまった。今確かにマクリスはアルビレオと同い年だと言った・・・・・・とてもそんな風には見えない。もっとマクリスも若いのかとばかり思っていたのだが・・・・・

「ん?スピカちゃんったら何に驚いてんの〜?」

と、アルビレオが不思議な眼差しでスピカを見つめてくる。スピカとしては声を出していないつもりだったのだが、その驚きぶりをハッキリと声に出してしまっていたらしい。慌てて口を手で押さえ込んだ。

「あっ!いえ、その・・・何でも、ないです・・・・」
「アハハッ!ひょっとしたら・・僕のこの幼稚ぶりに驚いてしまっていたのかな〜?」
「あっ・・そ、そんなことはないです・・ハイ・・・・」
「アハハッ!・・・スピカ君。君ってホントに可愛いよね・・・・・君の言うこと、やること・・全てが可愛くて・・・・僕はこのまま、君を連れ去りたくなってしまうよ・・・・」
「はいはいストーーーップ!!マクリス様〜。ほんっっとマジで懲りてないですね・・・?」
「あっ、忘れてたよ〜!いや〜、止めてくれてありがとう!アルビレオ君!アハハハッ!僕はね、スピカ君を見てしまうと、つい口説きたくなってしまうんだよ。あまりにも可愛くて、ね・・・・また僕が無意識にやっているようだったら止めてね?アルビレオ君!・・うん。ついでにそれを仕事にしてくれると嬉しいね!」
「・・あの〜。あたしにそんな仕事押し付けないで下さいます〜?あたしの本職もうちょっと違うんですけどね〜。」
「まぁまぁまぁまぁ!!そんなコト言わずに!!ねぇ〜アルビレオ君!僕のこの暴走を止められるのは君だけなんだよ〜?」
「いや、あたしでも止められない時ありますから。マジで!!」
「ヤダなぁ〜、アルビレオ君ったらつれな〜い。僕のことそんなに嫌いかい?」
「そりゃ嫌いですよ〜、大っ嫌いですよ!!!あなた様のことなんて〜。毎度そう言ってるじゃないですか〜。」
「うっわ、そんな悲しいコトはっきり言わないでよアルビレオく〜ん。僕はこれでも君のことをとても尊敬しているし、大好きなんだよ?本当に君は・・・・仕事を忠実にこなしている素晴らしい女性だと思うんだ!これはもう恋だよ?うん。」

マクリスはいつもこうである。口で「悲しい」とか言っておきながらあまり悲しそうなそぶりがない。それはすっかり女性に慣れてしまっている印だった。何となくアルビレオがマクリスのことを嫌っている理由が分かったような気がして、スピカは微苦笑してしまう。

「・・・あなた様が誰に恋するってゆーんですか!!冗談も休み休み言って下さい!・・・・あぁ〜っ!!それよりスピカちゃ〜ん!!今からさ〜、あそこのカフェテラスでお茶しな〜い?今2時半位でしょ〜?2時半になったらレグルスがここに来る筈なのよ〜。だから!4人で仲良くお茶しようよ!!結局この間スピカちゃんとお茶出来なかったワケだしさ〜。今日こそはね!!」

今までアルビレオとマクリスの流れるような会話のやり取りを聞いていたスピカだったが、突然のアルビレオのこのご招待にスピカの心は高ぶった。

「あっ、はい!!分かりました!ワァ〜ッ!私嬉しいです!とっても楽しみです!」
「ンフフフフ〜、まぁそれもそーかもね〜。結局この間は、あたしのせいで何もかもパーになっちゃったワケなんだし・・・ちょっとしたお詫びも込めて、ね♪どーせタダなんだし、一杯食べようね〜!スピカちゅわ〜ん!」
「あっ、はい!」
「ね〜ぇ〜アルビレオく〜ん。話を進めてるのはイイんだけど・・・・レグルス君も来るって本当かい?」

と、マクリスが少し複雑な表情をしてアルビレオに尋ねる。

「はいそうですよ〜。もうそろそろ・・・って、あ!!レグルス〜!!!」

アルビレオが後ろを向いた途端、どうやらレグルスの姿を発見したらしく、手を振っている。
スピカもまた、アルビレオの向いている方を振り返った。そこには小走りしてるやってくるレグルスの姿が見えた。スピカの胸の鼓動がいつになくドクンと高く跳ね上がる。
なぜこんなに突然胸が高鳴ってしまうのか不思議だったが・・・・マクリスには「大好きだよ!」など言われても普通にいられるのだが・・・・レグルスに「愛している」と言われたことを思い出すと途端にこうなってしまうのだ。スピカはすぐにそう考えるのをやめにした。

「やぁ、スピカ、アルビレオ。おや・・マクリス様もいらっしゃってたんですね。こんにちは。」
「うん、こんにちはレグルス君!元気そうだね!」

とマリクスは笑顔で言いながらさりげなくスピカを抱き締めた。それをジトーッとした目で見るアルビレオ。

「あの〜、マクリス様〜?またなんですけど〜?スピカちゃんから離れて下さいます〜?」
「ごめんアルビレオ君。今は君の言うことを聞けないよ・・・・だって、レグルス君のお出ましだからね。」

と言ってマクリスはスピカの頬に軽くキスを贈る。スピカは驚いてマクリスを見つめ、それをマクリスはニッコリ笑顔で返した。

「・・私にスピカとの仲の良さを見せ付けて、どうするつもりなんですか・・・・・?」

と、レグルスが顎に手を置いてそうマクリスに尋ねた。

「うん。イトコの君の考えていることは、何となく分かるさ。君って・・・スピカ君のことが好きなんだろう?」
「・・そうですが・・・・・それは・・私に喧嘩を売っているんですか?」
「ううん、そうじゃないんだ。ただ・・・・僕もスピカ君のことは気に入っているから・・・まだ君だけのものにはしたくない・・って所かな?ね?スピカ君!」
「えぇっ!?えっと、私は・・・・」

まさかいきなり自分に話の矛先が向けられると思わなかったスピカは驚いてしまっていた。
・・・・こうしてマクリスや、特にレグルスには最初から好かれてしまって・・・・正直とても嬉しすぎてどうすれば良いのかスピカにはよく分からなかった。それまで男性にモテた経験が皆無なのと元から優柔不断なのも相まってスピカはどう返事をしようか困ってしまった。

「・・・スピカ。言っただろう?私が、おまえをゆっくり口説く・・ってね。」

とレグルスに余裕の微笑で言われてしまい、スピカの胸の鼓動が速くなるのが自分でもよく分かってしまっていた。顔もとても熱く、赤くなっている。

「あ・・え・・〜っと・・・・」
「あんのさ〜、お2人ともそれ位にしといてよ〜。スピカちゃん困っちゃってるじゃな〜い。ねぇ〜?スピカちゅわ〜ん。」
「あっ!!え・・っと・・・はい・・・・」

スピカは素直に返事をした。そして助け船を出してくれたアルビレオにとても感謝した。

「さ!スピカちゅわ〜ん!あたしとおててつないで、カフェテラスにGo!よ〜!!」

と言ってアルビレオがスピカからマクリスを引き剥がし、手をつないで走り出したのでスピカも慌てて着いていった。
スピカは驚いてしまったが、明らかにアルビレオが自分を助けてくれたことを分かっていたので、感謝の気持ちで一杯になっていたのだった・・・・・・・・・・・・


  

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