27 と、いきなり色っぽい瞳でレグルスがスピカを見つめてきたのでスピカは驚いてしまった。それをラグリアが厳しい眼差しで見る。 「・・レグルス。そなたは・・・・」 と、レグルスがウインクしてラグリアにそう言った。 「全く・・・・そなたといいマクリスといい、なぜそれほど無節操なのだ・・・・?」 と、ラグリアが眉を吊り上げてレグルスにそう言った。スピカは声にこそ出さなかったが、つい苦笑してしまった。 「無節操、というか・・・・私とマクリス様を一緒にしないで下さいよ。私が誰にも変えられないほど愛しているのは、スピカだけなんですから。」 と言ってラグリアは奥の部屋にミャウと共に行ってしまった。明らかにラグリアは何か言いたそうだったが、ミャウが甘えていることもあったので急いで行ってしまった。スピカはそんなレグルスとラグリアのことを見ていて少し驚いてしまった・・・・何だか妙な感じがする。ラグリアが言いたそうにしていたことは何だったのだろうか? 「フフッ、スピカ・・・・本当に、ここに残るのかい?そうだとしたら・・今すぐ、おまえを抱いてしまうよ・・・?」 と、レグルスがスピカに近付きながらそう言った。スピカはラグリアが何か言いたげだったのが気になってしまったのとレグルスが妙に色っぽい瞳で見つめてくるものだから困ってしまっていた。 「えっ!?あ、え、え〜っと・・わ、私は、その・・・・」 レグルスにそう言われてしまうとスピカも弱い。もちろんスピカだって今夜誰と過ごすかなんて予定は全くない訳で全然OKなのだが・・・・・ふと思いついたのはプレアデスだった。 「え〜・・っと〜・・・・」 スピカの様子を見たレグルスがそう尋ねてきた。 「あ、その・・はい。えっと・・・レグルスさん。最近・・プレアデス様とは、どうですか?」 馬鹿な質問をしてしまったとスピカは思ってしまった。そうではないだろうと自分に言い聞かせても、一度出てきてしまった言葉は取り返せない。 「フフッ、どうしたのかな・・・?もしかして・・・プレアに頼まれているのかな?私との仲を取り持って欲しいって・・・・」 スピカは驚いてレグルスを見てしまった。 「おや?図星かい?」 レグルスはプレアデスの気持ちを知っているのか。だとしたら、なぜスピカのことを「愛している」などと言ってくるのだろうか?プレアデスの気持ちはどうなっているのだろうか?スピカは気になってしまった。 「おや?何をそんなに驚いているのかな?スピカ。」 そう言われるとスピカはドキッとしてしまう。スピカはついレグルスを見つめてしまった。レグルスもまた、微笑を浮かべながらスピカを見つめていた。だがその微笑はいつものレグルスの余裕ある微笑とは違う・・・・悲しげな微笑だった。 「・・・・ねぇ、スピカ・・・おまえは・・アトラス様のことを、愛しているんだろう?」 スピカは驚いて目を見開いてしまった。レグルスはスピカのアトラスに対する恋心を分かっていながら、それでも尚こうして自分に愛の告白をしてくれていたことになる。 「フフッ・・そんなに驚いた顔をしてしまって・・・・私がおまえの気持ちに気付かないとでも思ってたのかい?」 自分でも何となく分かっていた。昔確かにアトラスに対してスピカは恋をしてしまっていた。最初の印象は最悪な人だったのに・・・・いつの間にかそれが、恋に変わってしまって・・・・・ 「・・フフッ。だから私はアトラス様にも言っただろう?おまえを手放すのが惜しくないのかってね・・・・」 とレグルスは言ってスピカのことを優しく、暖かく抱き締めてくれた。 「!はい・・・・」 レグルスはスピカを抱き締める手に力を込めてそう尋ねた。 「・・・・もしアトラス様に会えれば・・・おまえはその体を・・アトラス様に委ねるだろう?」 とレグルスは言って急にスピカから離れて後ろを向いた。スピカは突然レグルスがこんな態度を取ったのでどうしたのかと思った。 「あ、あの・・レグルスさん?」 そうしてレグルスはマントを翻して、スピカの方を見ないまま謁見の間を出て行ってしまった。 「えっ!?あの・・レグルスさん!?」 スピカはいきなり去って行くレグルスに呼びかけたが、レグルスは振り向きもせずそのまま行ってしまった。いきなり底なし沼に落ちてしまったような感覚に捕らわれたスピカだったのだが、その時奥の部屋からミャウを抱えてやって来たのはラグリアだった。 「・・スピカ・・・・」 スピカは驚いてしまった。レグルスが・・・泣いていた・・・・!? 「あぁ・・・最後の方、そなたの方を見ようとしなかったのは・・そなたに気取られたくなかったからだろう・・・・・あの者は常にそうだ・・・・常に余裕を見せてはいるが・・あれは見せ掛けだ。あの者の心はとても脆い・・・・・過去の経験が、そうさせているのだろうな・・・・」 スピカは驚いてラグリアの方を見た。ラグリアもまたスピカの方を見たが・・・・その表情は気高く、また厳しいものであった。 「そうだ・・・・・未だにあの者にとっては・・深い心の傷となっているようだ・・・・・」 ミャウも何だか寂しげに小さく鳴いた。やはり言葉を解しているのだろうか?それともこの場の雰囲気を読み取っているのだろうか? |