28

あれから大食堂で夕食を摂り、自分の部屋に戻ったスピカだったのだが・・・・・その心は晴れなかった。
レグルスとあんな別れ方をしてしまったからだろうか?それに・・ラグリアの言っていたことも気になる。昔レグルスに何があったのだろうか?・・・失恋・・なのだろうか?
スピカの印象としては、レグルスは常にどこか飄々としていて、いつも余裕たっぷりの微笑を浮かべていて・・・それでいて優しくて、とても美形で・・・完璧な男性だとばかり思っていた。あんな一面があるなんて全く思わなくて・・・・・スピカはあの時レグルスと別れた時のことを考えてしまうと胸が痛くなってしまった。
結局大食堂に行ってもレグルスの姿を発見出来なかった。今レグルスは何をしているのだろう?・・やはり、プレアデスの元に行っているのだろうか・・・・?プレアデスのことを抱いて・・・・・スピカはそう考えると、余計に胸が痛くなってしまった。なぜなのだろう?スピカもプレアデスも娼婦だ。男性の欲求を満たすだけの存在で・・・・・
それに、スピカはプレアデスと約束をした。レグルスとの恋を応援すると・・・・だからあの時も、プレアデスの所に行くように勧めたのは他ならぬ自分だというのに・・・・・この後悔の念と胸の痛みは何なのだろうか?
と、スピカがそうして考えていた時、コンコンとスピカの部屋のドアをノックする音がしたので、スピカは慌てて応対した。

「あっ、は、はい!?どうぞ。」
「おっ邪魔するよ〜。」

と言ってスピカの部屋に入ってきたのは、何とマクリスであった。

「あっ・・マクリス、様!?」
「うん!そうだよ!・・・って、おや?何だか・・どうしたんだい?スピカ君。いきなり顔を赤くしちゃって・・・アハハッ!もしかして、僕に会えたことがそんなに嬉しかった?」

と、マクリスはニッコリ笑顔でスピカにそう言ってきたものだから、スピカはどう答えて良いものか迷ってしまった。

「あっ、え、え〜っと・・その・・・・」
「アハハッ!もうホントに可愛いな〜、スピカ君ったら!・・ところで、今日は君1人なんだよね?そしたら・・また僕のお相手をしてもらえるかい?スピカ君。今日の夜長のお供を、君にしてもらいたいんだ。」
「あっ、は、はい!!それは、もちろん・・・・私でよろしければ・・・」
「うん、今日は君じゃないと駄目なんだ!ハァ〜、でも良かったよ〜。最近君は、レグルス君と多く月日を過ごしていたみたいだから・・・アハハッ!そろそろ僕がそこに入ったっていいでしょう?」

とマクリスが笑顔でそう言ったので、スピカもつい笑みをこぼしてしまった。

「ウフフフッ。はい・・そうですね。」
「うん!!君は本当に笑うととっても可愛いよね。その君の笑顔、僕はとっても気に入ってるよスピカ君!」
「あ・・はい。ありがとうございます、マクリス様。」

とスピカはお礼を述べた所で、またレグルスのことを自然と思い出してしまっていた。昔の経験とは一体何なのだろうかと。
このレグルスとラグリアのイトコのマクリスであれば、そのことを知っているかもしれないとスピカは思った。そして以前プレアデスに言われたこと・・・・「相手の男の情報探り」として、マクリスに聞いてみることにした。

「あ、あの、マクリス様。お聞きしたいことがあるのですけど・・いいですか?」
「うん、何だい?僕の女性の好み?」
「えっ!?あっ、えっと、すみません・・・・その、お聞きしたいのは・・レグルスさんのことなんです。」

とスピカは言った。だがそれでもマクリスは特に嫌な顔をせずにすぐに返事をしてくれた。

「ふ〜ん、レグルス君のこと?うん!僕が知っていることなら教えてあげるよ。」
「あ、ありがとうございます!・・その・・・今日、ラグリア様からお聞きしたのですけど・・・・レグルスさん・・・過去に、何と言いますか・・・その・・・・失恋・・みたいなものなのでしょうか?そのようなことを経験したと、仰っていたのですけど・・・・マクリス様は、何かご存知ですか?」
「ん〜・・・レグルス君の失恋話、ね〜・・・・・過去・・・・・う〜〜ん・・・・・・」
「・・・・・・・・・」

考え込んでいるマクリスを見て、スピカは答えが出るのを黙って待つことにした。

「・・・スピカ君。僕はね〜、一応レグルス君やラグリア君のイトコとはいっても、本来住んでる所が全く違うから・・そういう身内話みたいなのはあまり知らないんだよ。でもそうだね〜・・・・・レグルス君は、昔もうちょっと違う人だったとは思ったよ。」
「えっ?」

思いがけないことを言われてスピカは驚いてしまった。

「レグルス君はね〜、あぁ見えても結構硬派だったんだよ?今では僕に似ちゃって随分無節操になっちゃったけどね!!アハハハハッ!!・・だから・・・そーゆー点では違うと思うんだよ。つまりね、スピカ君・・・これは僕の推論だよ?でも・・仮にレグルス君が失恋したとしよう。その人のことがとっても好きだったんだよ・・・あまりにもその想いが強すぎて・・・・でもそれは失恋だから、悲しいかな。レグルス君がどんなに想っても相手の女性はレグルス君を見てくれないんだ。自暴自棄になってしまったレグルス君はその報われない思いを、他の女性と接することによって消化している・・・と考えれば、今のようなレグルス君になってもおかしくはないよね?」
「あ・・・・は、はい・・・・・」

マクリスからはいつもの軽い雰囲気が感じられなかった。スピカの質問したことに対して真剣に考えてくれているようである。
これはマクリスの推論であると分かっていても、つい本当のことなのではないかと思えてしまう位マクリスの言うことには説得力があり、スピカは妙に納得してしまった。

「うん・・・・僕にはレグルス君のそーゆーコトはよく分からないんだけど・・・・・僕に言えることはそれ位かな?アハハハハッ!他に質問は?」
「えっ!?あ、え〜っと・・・・う〜んと・・・・」
「・・質問は、これで終わり?」

何だかマクリスにせかされているような気がしてしまって、スピカは少しあせってしまった。何かもっと他にもマクリスに聞いてみたいことが一杯あるような気がする。レグルスのことでも、マクリス自身のことについても、それ以外のことについてでも・・・・・

「え〜っと・・・その・・お聞きしたいことが、たくさんありすぎて・・・・」
「えぇっ?ホントに!?よし!!それじゃあまとめて全部僕が聞いてあげるよ!どんなことでも聞いてごらん?」

このマクリスの妙に広い心にスピカは感謝してしまった。

「あ、はい。ありがとうございます・・・・えっと、それじゃあ・・・・」
「うん。何だい?」
「・・・マクリス様は・・・・ご結婚なさっている・・という訳ではないんですよね?」

と、スピカは少し気になっていたことをマクリスに尋ねた。少しだけプライバシーに関する質問だから嫌がるかと思っていたのだが、マクリスは全然そんなそぶりを見せずすぐに答えてくれた。

「うん、そうだね。結婚もまだだし、付き合っている彼女もいないよ。アハハッ!だから・・僕の心を埋めてくれるのは、君のような娼婦さんだけなんだよ、スピカ君♪」
「あ・・は、はい。ありがとうございます・・・・」
「うん。こちらこそ!君のような子がいてくれて、僕は正直とても助かってるんだよ!!あぁ・・大好きだよスピカ君!」

マクリスはそう言ってスピカを強く抱き締めた。スピカもつい嬉しくなってしまってマクリスの背中に腕を回す。

「・・・・そういえば・・・君には好きな人がいないんだよね?」

ふと、少しの沈黙の後、マクリスがスピカにそう尋ねてきた。

「あ、えっと・・・はい、そうですね・・・」
「アハハッ・・・ねぇ、スピカ君。僕が、仮に恋に悩んでいたら・・・・君は助けてくれる?」
「えっ?」

スピカは思ってもみないことを言われて驚いてしまった。マクリスは苦笑している。

「アハハッ、僕らしくもない!こんな辛気臭い話やっぱり似合わないよね!・・・でも、人間の心って複雑だよね。ないものねだりが激しくて・・・アハハッ!取り分け僕はずーっと幸せな生活をしていたからね・・・・それまで、欲しいものは全部手に入れてたんだ。でもそれはね、他力本願で、僕自身が苦労して手に入れたものじゃないんだ・・・・だから幸せだったけど、確実に穴が空いた幸せ。実感なんて伴ってなかったよ。だからね・・・こんなに夢中になって誰かを好きになるってことが、とっても苦しいことだって初めて分かったよ・・・・ねぇ、スピカ君・・恋って、ドキドキするものだよね?」
「あ・・は、はい・・・・」
「うん!君もそれは、分かっているみたいだね・・・・まぁ、今好きな人がいないってだけで、恋はしたことあるんだろう?」

とマクリスに言われ、スピカは小さく頷いた。

「はい・・そう、ですね・・・・」
「・・・・恋は悪いものじゃない・・・・でも本当に、盲目になっちゃう病気みたいに、何も見えなくなっちゃうよね・・・・ハァ〜。」
「・・・・・・・・・・・・・・・」

いつになくため息をつくマクリスを見て、スピカは少し驚いてしまった。いつも軽いノリのマクリスであるが、今は本気で悩んでいるっぽいのだ。スピカは試しに聞いてみることにした。


  

テレワークならECナビ Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!
無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 海外旅行保険が無料! 海外ホテル