段々と遠ざかっていくアトラスの後ろ姿を見る度、スピカは涙が止まらなかった。ついにはレグルスの腕に抱き締められ、その胸の中で泣くことしか出来なかった。

「・・・・スピカ・・・・」

レグルスの腕の中はとても優しく暖かかった。スピカはつい身を任せてしまう。
初対面の人なのに、レグルスの応対は本当に優しくて暖かい。それにプラスしてアトラスが去っていってしまったこと・・それが何よりスピカの心を大きく抉っていた。

「ッ・・・・す・・み、ません・・・レグルス、様・・・・」
「・・いいよ。それに・・私のことは様付けしなくていいから。」
「え・・・っ・・・・?」

スピカは驚いてしまい、思わず顔を上げてレグルスを見てしまった。レグルスは優しい微笑を浮かべて口を開いた。

「フフッ。いつでも、アトラス様から来た女性には言っているんだよ。私に敬語を使う必要はないし、「様」付けもする必要ないから、とね・・・・私はそれほど偉い身分の者でもないんだよ。だから、普通に呼んでくれて構わないからね。」
「・・・は、はい・・・・・・・」

スピカはそれっきり泣くことしか出来なかった。抱き締めてくれるレグルスの存在が本当に優しくて暖かくて。ずっと、泣いてしまっていた。
レグルスは何も言わずに頭を優しく撫でてくれた。それにスピカも甘えながら、悲しくてただ泣くことしか出来なかった。

「・・大丈夫だよ、スピカ・・・・大丈夫だからね・・・・」
「・・・はい・・・・・・!」

スピカは泣いてしまって返事をすることしか出来なかったが、レグルスの優しさが本当に嬉しかった。お礼が言いたくても泣いてしまってなかなか言えない。

「・・・あぁ、忘れていたよ・・・ほら、ハンカチでその涙を拭いてごらん。」
「あ・・はい・・・・・」

レグルスが懐から奇麗な水色のハンカチを取り出してスピカに手渡した。スピカはそれを借りて涙を拭く。だがそれでもまだその瞳から涙があふれてきて。今度はレグルスに対しての迷惑を考えたのとその優しさからきたものだった。
初対面の自分にこんなにも優しくしてくれて。いわばこれからお世話になる大事な人にしょっぱなからこんなに迷惑をかけてしまったことが、自分自身で許せなくて・・・・
借りたハンカチの使った面が一気に濡れてしまったので折りたたんで使う。だがそれでもまだ涙はあふれてきた。必死に何か明るいことを考えようともするが、なかなか涙は止まってくれなかった。

「・・スピカ。いいんだよ・・・・悲しい時は、我慢せずに泣いてごらん・・・・その代わり、今度はとびっきりの笑顔を見せてね。」
「・・・はい・・・・・・」

やはり泣いていて返事をすることしか出来なかったが・・・・レグルスは本当に優しく励ましてくれた。再度レグルスはスピカの頭を撫でた。

「・・・・スピカ。少し落ち着いたらここを出ようね・・・・あまり長居はしていられないから・・・・」
「・・・はい・・・・・その・・すみ、ません・・・・」
「・・いいんだよ。謝らないで・・・・せかす気はないからね・・・・大丈夫だよ・・・・」
「・・・はい・・はい・・・・!」

こうしてレグルスが傍にいて励ましてくれるのが何よりも嬉しかった。もっと性格の悪いお客だったら立ち直れるきっかけもなかったかもしれない。その点このレグルスは本当にスピカのことを気遣って優しくしてくれた。それまでのアトラスとのやり取りを見ていても、レグルスを信頼していることがよく分かったから・・・・スピカも自然とレグルスを信頼していた。
スピカは涙を拭いて顔を上げてレグルスの顔を見た。レグルスはスピカと目が合うと優しい微笑を浮かべてくれた。スピカは思わず視線を逸らしてしまう。
始めてレグルスを見た時からとても美形な男性だと思っていたが・・・・こうして近くで見ると、アトラスに全く引けを取らない美男である。
元々スピカが深く関わった男性は今まで人生生きてアトラスのみだが・・・・・どうしてこんなに皆美男ばかりなのだろう?「類は類を呼ぶ」とはよく言ったものだが・・・・・
と考えて、スピカは自分で自分が場違いな発想をしてバカらしい、なんて思ってしまった。少しだけ笑いがこみ上げてきて・・・・少し涙が引っ込んだ、そんな感じがする。
最後に目に溜まっていた涙をハンカチで拭いた。涙は何とか止まってくれたみたいである。

「・・あの、レグルス・・さん・・・・?で、いいですか?」
「ん?あぁ、いいよ・・・フフッ。落ち着いたかな?」
「あ・・は、はい・・・・」

スピカはコクンと頷きながら返事をした。

「うん・・・それじゃあ、行こうか。夜の街は寒いからね・・・この中に入ってごらん。」

と言ってレグルスはフードを被り、同時にマントをバサッとスピカにかけて、スピカの肩を抱き寄せた。

「!・・レグルス、さん・・・・?」

先ほどまでは抱き締められ、今度もまたこうして傍にいることでドキドキしてしまった。既に目深にフードを被ってしまったレグルスがどんな表情をしているのかはよく分からなかったが、その口元は笑みを作っていた。

「フフッ・・・私のエスコートはお気に召しませんか?お姫様。」
「!!やっ!あの、そんな!!そんな、訳では・・ないです、ハイ・・・・」
「フフフフッ。それじゃあ、行こうか。あぁ、マスター。ご馳走様・・また世話になるよ。」
「はい、また。ありがとうございました。」

そうしてレグルスはお金をカウンターの前に置き、最後にマスターに軽く手で挨拶してから歩き出した。
レグルスに肩を抱かれてしまっているスピカは、レグルスが歩き出したと同時に強制的に歩き出さねばならず、最初はワンテンポ遅れてしまったが、すぐにレグルスも歩調を合わせて、2人で夜の街を歩いたのだった・・・・・・・・・


  

楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] ECナビでポインと Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!


無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 解約手数料0円【あしたでんき】 海外旅行保険が無料! 海外ホテル