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「・・・ん・・・・」

スピカは、重い瞼を開けた。ここは・・一体どこだろう?どこかで見たことのある、奇麗な天蓋だ・・・・

「・・スピカ・・スピカ!」
「!・・・レグルス、さん・・・・!?」

そう、起き上がってすぐ横を見てみれば、そこにいたのはスピカの一番会いたかったレグルスその人であった。レグルスは微笑んで、握っているスピカの手に少しだけ力を込めた。
・・・フローラの言っていた通りの現実だった。一体・・それまで自分が見ていたものは何だったのだろう?スピカはよく分からなかったが・・今は現実を見ることにした。

「良かったよ・・起きてくれたんだね。ハァ〜・・・・本当に、驚いたよ。私の部屋の前で倒れてしまっていたから・・・・」
「えっ・・・・!?」

スピカは驚いてしまった。レグルスは苦笑して口を開いた。

「でもね、すぐにおまえが眠っているんだと分かったよ・・・・フフッ。まぁ・・久々におまえの可愛い寝顔を見れて、私としては良い時間を過ごさせてもらったよ。」
「!!え、えっと・・・・」

スピカはもう顔が真っ赤だった。寝顔を見られていたと考えると・・恥ずかしくなってしまったのだ。

「・・ところで、私の部屋の前で眠っていたということは・・私が来るのをずっと待ってくれていた、ということなんだよね・・・・?今日は残業をしていてね、部屋に戻るのが遅くなってしまったんだよ・・・・長時間待たせてしまったみたいで、悪かったね・・・・」
「えっ・・・!?あ、そ、そんなことないです!!私の方こそ・・その、眠ってしまっていたみたいで・・・こうしてベッドもお借りしてしまって、すみません!!」
「フフッ。おまえの為なら、これ位どうってことないさ。気にしなくていいよ・・・・それより、私に何か用かな?」

そうだった。うっかり本題を忘れそうだった。スピカは改めてレグルスの方に向き直り、ベッドの上で正座をした。

「その・・レグルスさん。すみませんでした!!!」

スピカは深く深く頭を下げてレグルスに謝った。だがレグルスは突然スピカに謝られてしまい、何が何だかさっぱり分からない。

「?・・・どういうことかな?スピカ・・・・おまえは何か、私に謝るようなことをしたかな・・・・?」
「はい・・・・!その・・4日前のことなんですけれど・・・・あの日、レグルスさんが、私のこと・・誘って下さいましたけど・・・プレアデス様のお話を持ち出してしまって・・それで・・・・」
「あぁ〜。フフッ・・いや、別にいいんだよ。おまえは何も悪くないだろう?」
「ち、違うんです!!その・・・・私、本当はあの時・・レグルスさんと、その・・一緒にいたいと思ってました・・・・・」
「えっ・・・・?」

思ってもみなかったことを言われ、レグルスは驚いてしまった。

「それなのにも関わらず・・私、プレアデス様のお話を持ち出したりしてしまって・・・・その、すみませんでした!!私・・素直になれなくて・・・レグルスさんのこと・・・・!」

とスピカがそこまで言った時、レグルスはそれまでスピカの手を包んでいただけだったが・・・今度はスピカ全体を優しく包み込んだ。スピカは突然レグルスが抱き締めてくれたことに驚いてしまっていた。

「・・スピカ・・・・まさか・・わざわざそのことを言う為だけに、私の部屋に来てくれたのかい・・・・?」
「その・・本当にすみませんでした!レグルスさん!!私・・私、レグルスさんに嫌われるのが、怖くて・・・・!」
「!・・スピカ・・・・・」
「私・・私、あの時素直になれなくて・・・・それからずっと、レグルスさんに会えなくて・・私、寂しくて・・・・!」
「スピカ・・・・」
「・・その、レグルスさん・・・・私、レグルスさんのことが好きです・・・・!アトラス様よりも、誰よりも・・私はレグルスさんが好きです!!その・・こんな身勝手な私ですけれど・・・・それでもレグルスさんのことが好きです・・・・!」

と、スピカはレグルスを見つめながら告白した。レグルスは驚いてしまった・・・・まさかスピカが、こんなことを言ってくれるとは思ってもいなかったから。

「スピカ・・・・本当、かい?」
「はい、本当です・・・・!その・・今思いますと・・・私、アトラス様と別れてからずっと、レグルスさんのこと好きだったと思うんです・・・・!今までその気持ちに気付けなくて、ずっとレグルスさんの愛情に甘えてしまってばかりで・・・・あの、こんな私ですけれど・・・少しでも、レグルスさんの支えになれればいいなって思います・・・・」
「スピカ・・・・スピカ・・嬉しいよ・・・・!ずっと、おまえとこうなりたいと思っていて・・ようやく、現実になってくれたよ・・・・ありがとう、スピカ・・・・!」

レグルスはスピカを強く抱き締めた。どちらからともなく顔を近付けて、口付けを交わした。それまでとは違う、真の愛情のこもった暖かく優しいキスだった。
それからスピカは、そのままレグルスに優しくベッドに押し倒された。こうしてレグルスを見れる喜び。レグルスと同じ気持ちを抱いていることが無性に嬉しかった。今まで経験したことのない、何か暖かく切ない気持ちがスピカの中に広がり渡る。

「・・おまえの全てを愛しているよ、スピカ・・・・」
「レグルスさん・・・・!」
「フフッ・・スピカ。おまえはもう、私の前では娼婦じゃないんだよ・・・・?それは、分かるね?」
「あ・・は、はい・・・・で、ですけど・・その・・・・」
「・・・いつもより、恥ずかしそうにしているね・・・・?」

図星だったので、スピカは驚いてレグルスを見つめてしまった。レグルスは余裕ある微笑を浮かべている。そんなレグルスの微笑1つがいつも以上にカッコ良く、とても魅力的に感じてしまう。そんなレグルスにドキドキしながら、スピカは返事をした。

「あ・・はい。その・・・わ、私・・初めてなんです。その・・男の方と、両思いになって・・こういうこと、するの・・・・」
「へぇ〜、そうなのかい?それは意外だね〜・・・・フフッ。そういえば、アトラス様より前の男の話を、おまえから聞いたことがなかったね・・・・」
「あ、それは・・・・それまで、男の方とのお付き合いが、全くなかったんです・・・・ですから、お話出来ることもなくて・・・・」
「ふ〜ん・・・・まぁ、私としては好都合かな?・・・そういう意味でも、私はおまえにとって、初めての男になれるんだね・・・・フフッ。光栄だよ、お姫様・・・・」

そう言ってレグルスはスピカの頬に口付けた後、項に軽くキスを送った。

「あ・・っ・・・!レグルス、さん・・・・!」

レグルスはスピカの項や耳朶に軽くキスをしながら、スピカの服を脱がしていっていた。スピカは抵抗することはしなかったが・・・・なぜだか恥ずかしかった。
もう娼婦として、このようなことを当たり前のようにしてきた筈なのに・・なぜこんなにも恥ずかしいと思えるのだろうか。真に愛する人との交わりというものが、仕事とは全く違うものであることをスピカは知ることとなる。


  

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