既に時刻は夜の6時を指していた。奇麗な夕焼けが眩しくお城を照らし、その中にも入ってきている。

「ンフフ〜ッ、今までお疲れ様だったわね〜!スピカちゅわ〜ん!さ、最後はね!スピカちゃん自身のお部屋よ〜!!」
「あ、はい!その・・わざわざ、お部屋をご用意して下さったのですか?」
「ン〜、まぁ部屋数だけはここ余ってるからね〜。無駄に広いんだよね〜、このお城もさ〜。大丈夫!ここは今まで・・まぁ、何て言えばイイのかな?・・・スピカちゃんの先輩達が使ってたお部屋って言えばイイのかしら?今ではほとんどいなくなっちゃってるけどね〜。」
「えっ?」

それを聞いてスピカは驚いてしまった。先輩とは・・・・つまり、自分の前にここに奴隷娼婦としてきていた人達のことだろうか?しかしその人達がほとんどいなくなってしまったとは・・どういうことなのだろうか?

「ほら〜、ここって〜、レグルスやラグリア様みたいなみょ〜に愛に飢えてる男達が多いのよ〜。だからね!皆この部屋にいて、たっくさん色んな男達に抱かれて・・・・毎日見境ないからさすがに疲れちゃったんじゃな〜い?ひどい時なんて、1日に7、8回違う男の相手する時もあったみたいだからさ♪」
「えぇ〜っ!?そ、そんなに・・ですか!?」
「そ。だからね〜、ほとんどの女の子やめちゃったんだよね〜。その後どーやって生活してるのかなんてこっちでは調査してないから分かんないんだけど・・・・って・・ゴメン。今間違いなくスピカちゃん怖がらせちゃったわね、あたし。」
「えっ!?あ、え、えっと・・・・」
「うっわ、ヤッバ!!あたしの一言でスピカちゃんにやめられちゃったらシャレになんないわ〜!レグルスやラグリア様に合わせる顔ないっつーの!!どうしよ〜!?」

いきなりパニックに陥ってしまったアルビレオにスピカは慌てて言った。

「あ、そ、その!大丈夫ですアルビレオさん!私は・・今はそんな、やめる気なんてないですから・・・・」
「あ、ホント〜!?ありがと〜!スピカちゅわ〜ん!そう言ってもらえると助かるわ〜!」

と言ってアルビレオはスピカに抱き着いた。スピカは苦笑して言った。

「そんな・・そんなこと、ないです・・・・それに、私がそういう・・・先輩達みたいな現象になるとも限りませんし。」
「ン〜どうだろ。スピカちゃん可愛いからね〜・・・・似たよーな現象はあるかもよ?」
「えっ!?そ、そんな!か、可愛いだなんて・・・・」
「えっ?あらヤダ。スピカちゃんったら〜!!自分の可愛さ自覚してないなんてダメじゃな〜い!もっと胸張ってイイのよ〜?」
「そ、そんな!それは、ちょっと・・・・・」
「ンフフフッ。んでも、そーゆー所がスピカちゃんの魅力なんだろーね!あ〜おもしろ〜い!あっとと・・そうそう、ここね!スピカちゃんのお部屋!危ないわ〜、危うく通り過ぎる所だったわ〜。」

とアルビレオは言って「フゥ〜ッ」と息をついて、ガチャッとその部屋のドアを開けて中に入った。スピカも苦笑しながら後から着いて行った。
奴隷娼婦にはもったいない位のいい部屋だった。部屋の中央には大きな丸テーブルがあり、そこには椅子が2つ並べられている。
奥には左側から大きなベッド、窓、クローゼットに洋服ダンス。一番右側に化粧台がある。

「スピカちゃ〜ん。こっちが洗面台とトイレとお風呂ね!」

とアルビレオは言って左側にあるドアを開けてスピカを案内した。中央に洗面台があり、左側がトイレ、右側がお風呂になっていた。

「あ、はい。分かりました。」
「う〜ん。一応生活に欠かすコトの出来ないモノは全部整えてる筈なんだけど〜・・・・あ、クローゼットの中にコーヒー豆とポット入ってるから自由に使ってね!お洋服も一応こっちで揃えたモノあの洋服ダンスの中に入ってるから!で、これ以外で必要なモノあったら遠慮なくあたしに言ってね!すぐに取り寄せてあげるから!」
「あ、はい。ありがとうございます、アルビレオさん。何だか・・・私のような者にはもったいない広いお部屋で・・・・」
「あらそ〜お〜?これ位普通じゃないかしら・・・・ま、でもこんなのでも喜んでもらえて何よりだよ♪んじゃ!今日は1日本当にご苦労様だったわね〜、スピカちゅわ〜ん!あたしとばっかりいて大変だったでしょ〜?このクソでかいお城歩き回ったしね〜。」
「あ、いいえ、そんな・・・私、とても嬉しかったですし、楽しかったです!」
「あ、ホント〜?そう言ってもらえるとあたしも嬉しいわ〜!ありがとスピカちゃん!大好きよ〜!!」

と言ってアルビレオはスピカに抱き着いた。

「あ、アルビレオさん・・はい、ありがとうございます。」

スピカもまたアルビレオにそう言ってもらえることがとても嬉しかった。
アルビレオは非常に個性が強いがとてもイイ人であることは今日1日一緒にいただけでよく分かった。レグルスに「信頼出来る部下」と言われているのもその人柄の良さからだろう。

「そんじゃ、あたしはそろそろ行くわね〜。用事あってもなくても気軽にあたしの所にも遊びにおいでよスピカちゃん!お喋り大歓迎よあたし!」
「あ、は、はい!ありがとうございます!アルビレオさん!」
「ンッフフ〜、どう致しまして!そ〜んじゃ!夕食また会えそうだったらその時にね〜!」
「あ、はいアルビレオさん!本当にありがとうございました!」
「ン〜!それじゃあね〜!」

そうしてアルビレオと手を振り合って別れた。ドアがパタンと閉まり、改めてスピカは室内を見回した。本当に自分にはもったいない位の良い部屋だ。スピカはテーブルの所にある椅子に座り込んでポケーッと今日のことを振り返った。
朝目覚めて、レグルスとキスをして・・・・それから二度寝して気付いたらアルビレオがいて・・・あの時は大層驚いてしまったっけ。その時のことを思い出してスピカはクスッと思い出し笑いをした。
それからずーっとアルビレオがこのお城のことを案内してくれた。本当にこのフェルディナン城は広くて、未だにどこに何があるのか把握していないスピカだったが・・・・あの奇麗な花園の中庭はこの部屋から見えるだろうか?スピカはそう思って立ち上がり、窓から景色を眺めた。
既に夕日は大分沈んでしまい、暗くなっていた。城下町の様子も見える。電気があちこち色んな所で灯っていて奇麗だ。
問題の中庭は・・・・下に目線を映したらあった。暗くて分かりにくいが、右のほうに見えている。スピカは植物が好きだったので、花を見ているととても心が和むのだ。

「ここの中庭、本当に奇麗です・・・・カフェテラスもとても素敵で可愛くて・・・・その内お茶飲みに行きましょうか・・・・」

この城に住んでいるのなら皆タダだとアルビレオは言っていたのでスピカはコクンと頷いて改めてそう誓ったのだった・・・・・・・・・・・


  

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