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あれから一夜明けた午後。スピカは悲しみに暮れて、まともに睡眠も食事もしていなかった。昨日一晩中泣いてしまったことで体も疲れてしまっていて、動くこともままならない。 「・・・レグルスさん・・・・!ウゥッ・・・・!」 赤い薔薇を入れた花瓶ごとスピカは抱き締めて再び泣き出した。今や本当にこの赤い薔薇だけがレグルスの残してくれた唯一のものであり、スピカにとって最大の宝物となっていた。 「・・・そういえば・・・私が前にいた天界では、どんな植物でもずっと枯れることはありませんでした・・・・あっ。そういえば奇麗な薔薇園があった気がします・・・・ウッ!!!」 スピカがそこまで思い出した途端、猛烈な痛みが頭に襲い掛かった。 「い、痛い・・・・頭、が・・・・!ウゥッ・・・・!!」 ひどい頭痛であった。まるで昔、天界にいた頃のことを思い出すなと言わんばかりの頭痛であった。 「レグルス、さん・・・・!!ウゥッ・・・!あ・・・誰、か・・助けて・・・・!!」 スピカがそう小さく言ったその時だった。コンコンとスピカの家のドアをノックして間もなく、声が聞こえてきた。 「スッピカちゃ〜ん。いる〜?」 そう、外から聞こえてきた声は頼りになる存在・アルビレオであった。いつもならスピカは迎えに行って即ドアを開けるのだが、ひどい頭痛と昨日ずっと泣いてしまったことでなかなか体を動かせなかった。 「あれ?スピカちゅわ〜ん?」 再度アルビレオがノックした。スピカは何とか大きい声を出してアルビレオに応えた。 「あっ、あの!!!ドア開けて下さって良いですよ!!」 ドアを開けてアルビレオが中に入った途端、見たのはスピカのやつれた姿だった。目に涙を溜めてとても疲れた顔をしているばかりか、何本もの涙腺が顔に残っていて、目元が少し腫れてしまっていた。 「あ・・アルビレオさん・・・・!」 アルビレオを見たことでか、スピカの頭痛が一気におさまった。アルビレオは驚いてスピカのすぐ目の前に行った。 「どうしたの!?スピカちゅわ〜ん!!そんなに泣いちゃって・・・・疲れてるんじゃないの?昨日ちゃんと寝たの!?」 スピカはアルビレオに泣きついた。アルビレオはなぜこんなにスピカが泣いてしまっているのか分からなかったが・・・・ポンポンとスピカの頭に優しく手を置いた。 「スピカちゃん・・・・落ち着いたら、ゆっくりお話聞かせてね?」 そうしてスピカは、アルビレオにすがりつきながらしばらく泣くことしか出来なかったのだった・・・・・・・・・・・・ ようやく落ち着いたスピカは、昨日の出来事をアルビレオに話して聞かせた。レグルスの来訪、そして突然の別れを・・・・・ 「そっか〜。そうだったんだ・・・・やっぱ吸血鬼さん最悪なんだけど。悪人以外の何者でもないじゃない。」 アルビレオのこの発言にスピカは驚いてしまった。 |