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「スピカちゃんのゆーよーに、以前レグルスと会ったコトがあるって仮定するわよ?そうすると、恐らくそれはスピカちゃんがお空の上に住んでた時なんじゃないかと思うの。レグルスは「天の掟」って言ってたんでしょ?スピカちゃんだって、何か悪いコトしちゃってここに落とされたんだから・・・・つながりがあると思わな〜い?スピカちゅわ〜ん。」
「!あ・・・・それは・・・・はい・・・・」
「あたしはここまで考えてるの。スピカちゃんとレグルスが前に会ったことがあるってコトは、つまり恋人としてお付き合いしてたんじゃないかと思うのね。んでもそれがスピカちゃんの犯した悪いコトで、スピカちゃんはここに落とされちゃったの。それでレグルスの定められた天の掟ってゆーのは・・・・スピカちゃんに手を出すコトなんじゃないかな〜。」
「!・・・・・・・」
スピカはアルビレオの話を聞いて驚いてしまった。だがアルビレオはお手上げといった感じで両手を上げた。
「・・一番重要なのはね、スピカちゃんの昔の記憶が戻るかどうかにかかってる気がするのよ。何とかして思い出せな〜い?スピカちゅわ〜ん。」
「・・・・すみません・・・・本当に、何も思い出せないんです・・・・あっ。ですけど、レグルスさんからいただいたこの赤い薔薇を見ていて、少し思い出したんです。天界のお花も皆、一生枯れることはありませんでした・・・・この薔薇も、枯れる気配が全くないですよね!天界には、奇麗な薔薇園があって・・・・ウッ!!!」
「!?スピカちゃん!?どうしたの!?」
「す、すみません・・・・!あ、頭が・・頭が痛いんです・・・・!!」
スピカはその場にしゃがみ込んで頭を抱えてしまった。アルビレオは驚いてスピカと一緒にしゃがみ込んで、スピカの様子を見た。
「大丈夫!?スピカちゃん!!あぁ〜、無理に思い出さなくてもイイわよ。ゆっくり時間をかけて・・ね!」
「・・・ですけど、アルビレオさん・・・・私、それじゃあいけないような気がするんです・・・・」
「えっ?」
「・・確かに、ゆっくり時間をかけたら思い出せるかもしれないんですけど・・・・そしたら・・・レグルスさんとは、もう本当にお会い出来なくなってしまう気がするんです・・・・!私、何としても今思い出さなければならないんです・・・・早くしないと・・・・!」
「・・・スピカちゃん・・・・でも危険だよ!!頭痛いんでしょ?」
「・・そんな・・・私の頭痛より、レグルスさんとお会い出来ないことの方が大問題です!今なら、まだ間に合う気がします・・・・!思い出したいんです、昔のことを・・・・!!」
「・・・スピカちゃん・・・・」
「・・レグルスさん・・・・どうか、教えて下さい・・・・!レグルスさん・・・・・・!」
スピカは赤い薔薇を入れた花瓶を手に取り、想いを込めて抱き締めた。するとどうしたことか、途端に赤い薔薇から不思議な光がキラキラと漏れ出した。
スピカは目を閉じてしまっているからよく分かっていないかもしれないが・・・・アルビレオはちゃんと見ていた。薔薇から漏れ出ているキラキラとした光はスピカの全身を包み込み、まるでスピカのことを守っているかのようだった。
そして次の瞬間、アルビレオは驚いてしまった。何と、スピカの背中から2つの白い翼が生えてきたのだ!!スピカの背丈並にその翼はどんどん大きくなり、1回だけその翼が大きくゆっくり羽ばたいた。
全身キラキラとした光に包まれたスピカはようやく目を開けた。その目から、少しだけ涙があふれ出てきていたが・・・・すぐにスピカはアルビレオの方を見て立ち上がった。そして涙を拭き取り、ニッコリといつもの笑顔を浮かべた。
「アルビレオさん・・・・私、全て思い出すことが出来ました・・・・アルビレオさんのおかげです。」
「えっ!?いっ、いや〜、あたしは別に・・・・・」
「そんなことないです。アルビレオさんは本当に頭が良くて、とっても頼れる方です!・・・あの・・私、レグルスさんの元に行っても良いですか・・・・?」
そう言ったスピカの瞳はとても強い意志を放っていた。それと同時に、アルビレオはある1つのことを悟った。
「あぁ〜、ん〜。それは全然イイんだけど・・・・ンフフッ。スピカちゃんとは、ここで一旦お別れみたいね。」
「・・・そう、ですね・・・・あの、今までお世話になりました。アルビレオさんには、本当に感謝の気持ちで一杯です!私、アルビレオさんのこと・・絶対に忘れません!」
「ありがとスピカちゃん!あたしも、スピカちゃんのコト忘れないよ!レグルスに食われないように、お幸せにね♪」
「はい!!本当にありがとうございました!アルビレオさん!」
「ンフフフフ〜。こちらこそ、楽しかったわよ!ほら、あたしのコトは気にせずに早く行きなよ。時間ないんでしょ?」
「!はい・・・・アルビレオさん。本当にありがとうございます!最後まで、私のことを見捨てずにいて下さるのですね・・・・!」
「もちろんじゃな〜い♪あの時も最後まで庇ったの誰だと思ってるのよ?」
「ウフフッ・・・はい、そうでしたね!それでは失礼致します・・・・また、お会い出来ることを願っております・・・・!」
「ン〜。今度会う時は、スピカちゃんとレグルスの結婚式の時かしらね!」
「ウフフッ・・そうなると、いいんですけど・・・・それでは、行ってきます・・・・!またお会いしましょうね!アルビレオさん・・・・!」
「ン〜、行ってらっしゃ〜い♪まったね〜!!」
そうしてスピカは最後まで笑顔を見せて翼を羽ばたかせ、一気に家を出て行った。スピカの纏っていた光の衣が残って、その内に消えた。
アルビレオは一息ついてから目を閉じた。するとどうしたことだろう。何と、アルビレオの背中からも白い翼が生え出したではないか!!それから両手を広げると、一気に沢山の光がそこに満ち溢れた。
「や〜っぱり人間でいることって疲れるわね〜、フゥ〜。取り敢えず大神様にコトの次第をご報告に行くとしますか!」
そうしてアルビレオも翼を羽ばたかせて一気に飛び立ったが・・・・その行き先はスピカとは違う、遙か天空なのだった・・・・・・・・・・・・・
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