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「・・・レグルスさん・・・・・!」

スピカはレグルスを抱き締めた。過去のことを話し終え、レグルスが消え行くかもしれないことがスピカには悲しくて仕方なかった。

「・・そんな悲しそうな顔をしないで。定めでも・・・・おまえにもう1度キス出来たことは、何より嬉しかったよ。」
「!・・・レグルスさん・・・・」
「それに・・・天の神というものは、本当に慈悲深い人だと思うよ。私とスピカの仲を完全に切り裂いた訳じゃないし、おまえからもらったあの薔薇をずっと手元に置いておくことも出来たしね・・・・」
「・・レグルスさん・・・・ですけど、私の薔薇は・・・・」
「それは、あの天の神様が没収してしまったね。けれど、私から取り上げることはしなかったし・・・・どうしてだろうね。結局・・・愛する私達の幸せを考えてくれた結果なのかな?」
「・・・この薔薇は・・・ただの薔薇ではなかったんですね・・・・」
「フフッ、そうだね・・・・何と言っても、私とおまえの愛の証だからね・・・・」
「・・レグルスさん・・・!」
「あっ!みてみて!薔薇さんが光ってるよ!」
「えっ?」
「あ・・・・・!」

プレセペに言われてスピカとレグルスが共に薔薇を見てみると・・・・確かにキラキラと光を帯び始めた。それは先ほどスピカが願った時とは違うまた別の輝き方だったが・・・・とても暖かい光だった。

「スピカちゃん!ヤッホー、聞こえる?」

と、突然薔薇から声が聞こえてきた。レグルスとプレセペは何事かと思ったが、スピカはすぐに反応した。

「はっ、はい!?アルビレオさん!?」
「そうそう〜♪今あたしもようやくお勤め終えたトコ!あぁ〜。大神様に今回のコト、ずぅえ〜んぶ報告させてもらったわ!それで吸血鬼さんの処遇なんだけどね〜・・・・」
「どうなったんですか!?」

突然の展開にレグルスとプレセペは驚くばかりだったが・・・・どうやらスピカの知り合いで、天の神様に近い人のようであるから話を聞くことにした。

「ウン。あのね〜、チャラ☆」
「・・・・はい?」
「んだから〜、大神様ってば地上でも結ばれたレグルスとスピカちゃんに感動しちゃって〜・・・ってゆーか。吸血鬼さんに架した天の掟はね、スピカちゃんの記憶を戻したくなかった為みたい!大神様は大丈夫、お怒りじゃないよ。むしろスピカちゃんとレグルスのコトを応援してる♪幸せになりなさいよ〜?スピカちゅわ〜ん。あぁ〜、それと気が向いたらこっちに遊びにいらっしゃいよ〜!大神様も会いたがってるようだからね!」
「・・・・はい・・・はい、アルビレオさん!!本当に・・何から何までありがとうございます!!」
「あっ、そーだ♪ついでにもう1つ大神様からプレゼントがあんのよ〜。ほいっと!」

とアルビレオが言った次の瞬間、何と花瓶の中にもう1輪の赤い薔薇が追加されたのである。スピカ達は全員驚いてしまった。

「覚えてる?スピカちゅわん!大神様が没収したあの時の薔薇よ♪大神様ってば、あの後薔薇園に戻さずに大切に保存してくれてたみたいね〜。」
「・・・・本当、ですか?アルビレオさん・・・・!」
「ウン、ホント〜!まぁそんなワケだから、これから先もお幸せにね〜!」
「あ・・はい!アルビレオさん!本当にありがとうございました!!」
「ン〜♪あっ、それと吸血鬼さんに一言。スピカちゃんのコト、くれぐれも食わないようにしてよ!?ウチの可愛いスピカちゃんにそんなコトしたら、それこそ大神様が許さないんだからね!!」
「フフッ、分かっていますよ。ご忠告、感謝しておきます。」

とレグルスは余裕の微笑を浮かべてそう言った。こんな時でもレグルスはカッコ良くて、スピカはドキドキしてしまっていた。

「うっわ。何かヤダな〜、嫌味ったらしい返事・・・・」
「レ、レグルスさん!アルビレオさん怒ってますよ・・・・?」
「ん?仕方ないね〜・・・・スピカとは、キスだけで我慢しておきますよ。それで良いのでしょう?」
「!レ、レグルスさん!?何仰ってるんですか〜!!」

スピカは顔を赤くしてしまった。プレセペもジトーッとした目でレグルスを見た。アルビレオからの返答はなく、少しの間沈黙があたりを支配したのだが・・・・間もなくアルビレオから返事がきた。

「フム・・・・・レグルス。あんたならスピカちゃんのこと、ちゃんと守ってくれそうね♪んでも、これから先ずっとスピカちゃんと生活するんなら・・・キスだけじゃ足りないでしょ?」
「それはもちろんですよ。私が一番欲しいのはスピカの体ですからね。」
「!!レ、レレレ・・レグルスさん!?」

スピカの顔は真っ赤だった。プレセペはそんなスピカを見てニッコリ笑い、レグルスもフッと余裕の微笑を浮かべた。

「フム・・・あんたは吸血鬼さんだもんね〜。んでもスピカちゃんの体となると、イコール血も必要になってくるのよね・・・・よぉ〜っし!それじゃあこれはあたしからのプレゼント!受け取ってね〜!」

そうして薔薇からまた違う光が一気にレグルスに向かって放たれた。あまりにまばゆい光にレグルスの目はくらみ、目を閉じた。

「うっ・・・・!」
「レグルスさん!?」
「・・・実はこの人の方が天の神様より力あったりして・・・・」

プレセペがボソッと呟き終わったその時、突如発された光も落ち着いてきた。レグルスは目を開けて・・・そして信じられないといった表情で頭を抱えた。

「・・レグルスさん?どうかなさいましたか?ご体調が優れないのですか?」

レグルスの様子を見てスピカはレグルスを庇ったのだが・・・・すぐに薔薇からアルビレオの声がした。

「違うちが〜うスピカちゅわ〜ん!!ちょこ〜っと吸血鬼さんの渇望を防いであげたのよ♪」
「えっ?」
「スピカちゃんと一緒にいる時だけは、血液渇望症をなくしたのよ!ずーっと満たされてる状態にしたから・・・・これでスピカちゃんとどぉ〜んなコトしても、レグルスがスピカちゃんから血を奪うコトはないよ!」
「え・・っ・・・・?あの、つまり・・それって・・・・」
「・・いい、ね・・・・こんなに満たされた気分は初めてだよ・・・・フフッ。ありがとうございます・・・本当に、感謝致します。」
「ンフフフフ〜ッ。素直な言葉で大変よろしい!!ハァ〜、そんじゃ〜随分長く話し込んじゃったし、これ以上お邪魔するワケにもいかないから・・・・まったね〜!スピカちゅわ〜ん!」
「は、はい!!アルビレオさん・・本当にありがとうございました!!」
「私からも、ありがとうございます・・・・天の神にも、よろしく伝えて下さい。」
「りょうか〜い♪そんじゃ〜ね〜!!」

そうして薔薇から漏れ出ていた光が少しずつ消えていった。2輪の赤い薔薇はその光を徐々に失っていたが、枯れることはなかった。


  

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