第7話



「おはようございます!」

「おはようございます。」

 

よしっ!今日はちゃんとした時間に出勤出来ました!

昨日は、鹿嶋さんの夢を見て寝坊しちゃったけれど、さすがに今日はそんな事しないよ。

いよいよ、今日から私はOPとして仕事しなければならない。それまで楽してきた分、色々と不安があるのだけど・・・・丸山さんが一緒にやってくれるんだもん!きっと大丈夫だって信じてる。

一応、いつもの席に行ってみると・・・うわ〜。鹿嶋さん、朝からパソコンに向かってお仕事してるよ〜。でも、挨拶だけはしておこう。

 

「おはようございます。」

「おはよう・・・あぁ、館澤さん。席なんだが、あっちの奥の手前に座ってもらっていいか?」

「あ・・はい。分かりました・・・」

 

ウソ〜!?鹿嶋さんから、ものすごく遠くなっちゃうじゃん・・・・

って、今となってはそんなの関係ない筈なんだけど。私、どうしても仕事中に鹿嶋さんをチラ見しちゃう癖があるから・・・・こんなに鹿嶋さんと席が遠くなったの、初めての事じゃないかな〜?

でも、仕方ないよね。鹿嶋さんからの指示なんだし、抗う事は出来ない。私が言われた所に腰掛けた、その時だった。

 

「おはようございます、館澤さん。」

「あっ!おはようございます、丸山さん。今日はよろしくお願いします!」

「こちらこそ、よろしくお願いします!あ。まだお仕事時間じゃないので、緊張せずに、寛いじゃってて下さいね。」

 

丸山さんはそう言って、私の隣にノートやらファイルやら荷物だけ置くと、またすぐに移動して、他のOPさんと挨拶していた。

さすが頼れるLDさん!やっぱりあんな感じで活発で明るい人ってイイよね。場も和むって言うか・・・・

それに、丸山さんまだ若いし!って、私と1つしか歳違わないのにそういう表現するのおかしいかな?でも、丸山さん見てると本当に若さがあふれてるなぁって感じがする。

何と言うか、丸山さんって若い上に爽やか系だから、見ててこっちも元気になれちゃうんだよね〜。

・・丸山さんは『緊張せずに〜』なんて言ってたけど、やっぱりちょっと緊張しちゃうよ〜。ウゥッ、自主トレでもしておこっかな〜?

私がそう思って、マニュアルのプリントを見始めた、その時だった。

 

「どうした?まだ始業時間じゃないから、マニュアルなんか見なくていいんだぜ?」

「あっ・・・!すみません・・・・」

 

そう、そこにやって来たのは鹿嶋さん!

見た目はもちろんだけど、そのクールな低い声も、本当に格好良いです。

 

「いや、謝る事じゃないんだが・・・緊張しているのか?」

「はい・・・・」

 

そりゃあ、緊張しますよ〜!!だって、OPとして喋ってたの本当に最初だけだも〜ん!

ってか、鹿嶋さん何か手に持ってる。大事そうな書類だなぁ。ひょっとして、今から管理本部に行くのかな?

でも、私がここで緊張してたの見て、わざわざ声かけてくれたのかも。やっぱり、鹿嶋さんはフェミニストだなぁ〜。

 

「・・おまえは、本当に真面目だな。その調子なら、仕事も上手くいくだろう。だから、もっと自信を持て。おまえは、自分自身を過小評価しているからな。」

「あ・・は、はい。自信、ですか?」

「そうだ。自信を持てば、おまえはもっと良くなる。俺を信じろ・・・って言われても、信じられんだろうが。多分、丸山君にも同じような事を言われたんじゃないか?」

 

わぁっ。さすが、鹿嶋さんはSVだけあるなぁ〜。ズバリ、その通りです。

丸山さんにも、確かにそう言われた。私も、自信がないのはよく分かってる。でも、こんな私でも、自信を持って大丈夫なのかな?

 

「はい、言われました・・・」

「やっぱりな。俺の言う事が信じられなくても、丸山君の言う事なら、おまえも信じられるだろう?」

「えぇっ!?いえ、そんな事は・・・!」

「ハハハハッ!・・っと、そろそろ時間か。じゃあ、丸山君とよろしくやってくれよ?頼んだぜ。」

「はい、分かりました。」

 

いよいよだ・・・・!鹿嶋さんにそこまで言われたら、頑張るしかないよね!

私、信じてます。鹿嶋さんの言う事・・・・どうか、私に力を下さい。お願いします・・・・・!
















さて。あまり、おまえにかまってばかりもいられないな。それに、おまえの事は丸山君に託したんだ・・・・今になって、その選択に俺自身が苦しむ事になるなんて思わなかったが。

昨日、おまえと丸山君が話しているだけで嫉妬してしまった俺が、この場に長くいるなんて事、出来る訳がない。

だが、都合良い事に、昨日管理本部の姫君様から仕事をもらっていたからな。この年金手帳と、雇用保険被保険者証を届ける事・・・・あまり管理本部に長居は出来んが、多少時間は潰せるだろう。

俺のいるOP部1課と管理本部をつなげるドアのセキュリティーを解除して、俺は管理本部の中に入り込んだ。

 

「おはよう。」

「あら、おはよう。」

「おはようございます!」

「おはようございます〜。」

「おはようさん・・・」

 

出た。管理本部は人数が少ない分、性格濃くて個性的なヤツらばっかなんだよな。

その点、昨日来た姫君様がこの中で一番まともに見えるのは、俺だけだろうか?

 

「よっ、姫君様。昨日頼まれてたブツだ。」

「あっ、は、はい!ありがとうございます〜。朝早くから、わざわざすみません。」

「いや、これ位どうという事はない。よろしく頼んだぜ?」

「はい!」

 

こうして、和やかに姫君様とのやり取りは終了したんだが、そんな俺と姫君様を横目でにらんでいるヤツがいた。姫君様の隣に座っている騎士様こと茅場君だ。

 

「・・鹿嶋さん。まさか、あんたも由依狙いか?」

「はぁ?何だ、『あんたも』とは。」

「・・・いや、ないならいい。」

「ほう・・・今まで、姫君様は茅場君だけのものと思っていたが、ライバル出現か?」

 

俺がそう聞くと、茅場君が反応する前に口を開いたのは、姫君様の方だった。

 

「あの、鹿嶋さん。それは、誤解です・・・」

「ん・・・?『誤解』って、何が?」

「その。私と圭吾君は、お付き合い・・していないので・・・」

「何だ、そうなのか?それにしては、いつも一緒にいる気がするが?」

「それは・・・」

「俺と由依は、中学からの仲なんだ。それに、俺のサポートしてもらってるし?まぁ、俺が由依を守ってるコトに変わりはないが。」

「圭吾君・・・・」

 

姫君様、顔赤くしてるぞ?茅場君も『守ってる』なんて言ってやがる。どう見てもバカップルじゃないか。

 

「あ〜あ、ムサ苦しい〜。せっかく鹿嶋君が朝から来てくれてイイ気分になってるのに、雰囲気ブチ壊し〜。」

「んだと〜?ハッシー!熱くなっちゃわりいのか〜?」

「何って言うか、茅場君の場合、変に汗くさいのよね〜。それより鹿嶋君、元気だった?」

「あぁ、ハッシーも元気そうだな。」

「まぁね〜。そういえば、あのOPの子とは順調?」

 

・・参ったな。それは、今の俺に一番質問して欲しくなかったんだが・・・・

まだ清香と付き合って間もない頃、デート中だった所をハッシーに目撃されて、それ以来、こうして聞かれるようになったんだ。

ハッシーは、普通の女性とはデキがまるで違う。だから、この人に嘘をついてもすぐに見破られるんだが・・・・この場でフラれた事を公表するのもどうだろうか。

 

「・・・順調でない事は確かだ。」

「あら、そうなの?ひょっとして、別れたとか?」

「・・ストレートだな、ハッシーは・・・」

「ウフフッ、ごめんなさい。でも、そう・・・あなたでも、そんな表情をするのね。」

「ん・・・?俺、今どんな顔してた?」

「とっても寂しそうに微笑んでた。あの子と別れたの、ショックだったみたいね。」

「・・そう、だな・・・」

 

『とっても寂しそうに微笑んでた』、か・・・・

確かに、俺は寂しさを感じている。それまで隣にいてくれた、おまえがいなくなった事が・・・・

おまえを失って、おまえの存在が、おまえの優しさが、おまえの愛が・・・どれほど深いものかを、俺は別れてから思い知らされたんだ・・・・

 

「・・じゃあ、この話はおしまい。あなたが来てくれて十分目の保養になったし、仕事があるでしょう?だから、また今度ね。」

「あぁ・・・じゃあ、どうも。お疲れ様。」

「お疲れ様です〜。」

「お疲れさ〜ん。」

「お疲れ様です!」

「お疲れ様。またね。」

 

やれやれ。結局、管理本部のヤツらに俺が別れたって事がバレバレじゃないか。

だが、実際清香の事を知っているのはハッシーだけだし、特に管理本部のヤツらは守秘義務を言い渡されてるから、誰かに言いふらすような事はないだろう。その点に関しては心配してないんだが・・・・

取り敢えず、現場に戻るか・・・・おまえは、丸山君と上手くやっている事だろうからな。


  

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