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ん・・・・え・・っと・・・・今、何時なんでしょうか・・・・?
私は、ベッドの上にある目覚まし時計を見ました。え〜っと・・・窓からサンサンと照る朝日が、とってもまぶしいです〜・・・・
って・・えっ!?9時過ぎ!?もうそんな時間だったなんて〜!!私は慌ててガバッと飛び起きました。
ど、どうしましょう。家では特別朝食の時間指定はないですけれど・・・・私はまだちょっとした病人ですから、規則正しい生活しなさいって、係り付けのお医者様にもちゃんと言われてきたのに〜!!家に帰って来て早々こんな怠惰な生活してたら・・怒られちゃいます〜!!
私は急いで着替えて洗顔をしたりして・・・何とか支度を整えて食堂の方に行きました。
途中掃除の方なんかにお会いしてご挨拶して・・・私は慌てて食堂に駆け込みました。慌ててたものであまり前をよく見ずに走っていたら、ドンッ!という衝撃が来て・・・・私、驚いてしまって・・・・
「キャッ!?」
「おっと!!・・・スピカ・・!?」
「!お、お兄様・・・・!?」
そうです、ぶつかっちゃたのは・・何とお兄様だったんです!!
キャ・・キャ〜ッ!!わ、私ってば!!いくら慌てて急いでたとはいえ・・・こんな真正面からお兄様にぶつかっちゃうなんて〜!!
「す、すみませんお兄様!!お怪我はないですか!?」
「えっ?あぁ・・私は別に、服だからいいけど・・・おまえは顔を打っただろう?大丈夫かい?」
とお兄様は仰って下さって、私の頬に手を置いて心配して下さいました。お兄様の優しさと暖かさにちょっとドキッとしながら、私は答えました。
「あっ・・その、私は大丈夫ですけど・・・・」
「そうかい?それならいいんだけど・・・・すまないね、スピカ。おまえと久しぶりに朝食をと思ったんだけど・・・1時間以上待ってもおまえが来なかったからね〜、先に食べてしまって・・今丁度退室しようと思って出たらこうしておまえとぶつかってしまったんだけど・・・・フフッ。昨日のお兄様との行為で・・眠れなかったのかな?」
とお兄様は仰って、私を抱き締めて下さいました・・・・
うぅ〜っ、お兄様ったら〜!!・・・・どうしてお兄様には、分かってしまうのでしょうか・・・・?
「ム〜ッ・・・・お兄様が、いきなりあんなことなさるから・・・・」
「仕方ないだろう?おまえがあまりにも美しく成長しすぎているからだよ・・・・」
「そんなの理由にならないですよ〜!!元々はお兄様がお風呂を・・・・!」
と私は言った所でやめました・・・・どんなに口答えしても、お兄様には勝てないって思いましたから。
「・・おや?その続きは?」
「・・いいです・・・・」
「おやおや。随分未消化っぽいけど・・いいのかい?」
うぅ〜っ・・・・
「・・お兄様のイジワル・・・お兄様のバカ〜・・・」
「アハハッ・・いいよ、何とでも言ってくれて・・・・覚悟はしていたから。」
「えっ・・・・?」
私は驚いてお兄様を見つめてしまいました。お兄様は前髪をかき分けて、一息おいてから仰いました。
「・・自然の成り行きだったとは言え、妹のおまえに手を出したのは事実だからね〜・・・・一晩経ったら、きっとおまえは嫌がるんじゃないかと思っていたんだよ。」
「・・・おにい、さま・・・・」
「しかも、よりによっておまえがほぼ無事に病気を治して家に帰ってきたすぐその日だったからね〜。疲れも満足に取れてないだろうに・・・ごめんね、スピカ・・・おまえの体に、負担をかけてなければいいんだけど・・・・」
お兄様・・・・私の体を、心配して下さって・・・・
「あ、あの・・・体のことでしたら、私、大丈夫ですから・・・・私、そのことで・・お兄様にご迷惑をおかけしたくないです・・・・もう、これ以上・・お兄様にご迷惑かけさせたくないんです・・・・」
「・・スピカ・・・・」
「それに、私・・・何だかんだ言ってますけど・・お兄様と、昨日したこと・・・嬉しい、んですよ・・・?だって、お兄様は・・ずっと私の憧れで・・・・お兄様・・大好きでしたもの・・・・」
私は、自分からお兄様を抱き締めてそう言いました。だって、これは本当のことですから・・・お兄様に、そこを誤解して欲しくはないんです。
「・・スピカ・・・・ありがとう・・フフッ。おまえにそんな風に思われていたなんてね・・・・嬉しいよ。」
お兄様はそう言って、私のこと・・強く、抱き締めて下さいました・・・・お兄様とこうしている時間が・・私にはとても切なくて・・・・!胸のどこかで、キュウンって音がした気がします・・・・もっとずっと、お兄様とこうしていたいです・・・・!
ですけど・・・そんな簡単に私の望みが許される訳なんて・・ないんですよね・・・・
「レグルス様・・・・キャッ!し、失礼しました!お取り込み中でしたでしょうか・・・・?」
そこにいらっしゃったのは・・確か、お兄様の侍女さんの方です。何だか束になった書類を沢山抱えていらっしゃって・・・そういえば・・お兄様はお仕事があるんですよね・・・・
「ん?あぁ・・いいよ。スピカと朝の挨拶をしていただけだから。それで・・・?今日の分はそれが全てかな?」
「は、はい。さようでございます・・・・」
お兄様はすぐに私から離れて、そちらの侍女さんの方に行きました・・・・えぇ、お兄様が公務でお忙しいことは、とてもよく分かっているつもりなんですけど・・・・急に寂しい気持ちが、私の中に広がっていきました・・・・
お兄様とその侍女さんはお仕事の打ち合わせをなさっているみたいで・・・・って、いつまでも見てる私も何か変ですよね。そうですよ!!そもそも私はここにお食事しにきたのであって・・・え〜っと、いつまでも入り口にいる場合じゃないですよね。中に入ってと・・・・
中に入った私を待って下さっていたのは、私が生まれる前から食堂で働いていらしてる、ちょっとふくよかないつものおばあ様でした。
「あぁ〜っ、ようこそスピカ様!珍しいですね〜、スピカ様がこんな時間にいらっしゃるなんて〜。レグルスお兄様、ずっと待っておいでだったんですよ〜?」
ウワ〜ッ。そういえば、お兄様もそんなことをサラッと仰ってましたよね〜・・・・うぅ〜っ、ですけど私がこんなに寝坊しちゃったのはお兄様のせいでもあるんですから・・・連帯責任です〜・・・・
「あ・・はい。すみません・・・・」
「ンフフフフッ。私はいいんですけれどね。それにしても・・相変わらずお2人は大変仲のよろしいご兄妹で・・羨ましいですよ〜。私にもレグルスお兄様みたいな兄がいれば良かったんですけどね〜。」
ヒャ〜ッ!!も、もしかしなくても・・・私とお兄様が抱き合ってる所・・見られちゃったんですね・・・・
元々私とお兄様って必要以上にくっついてた所があったみたいで、「仲の良い兄妹」とか「兄妹なのにラブラブね」とか「ブラコン・シスコン兄妹」とか・・小さい頃から働いている方々や、両親がまだ生きてた頃は両親にまでからかわれたものなんですけど・・・・お兄様とあんなことしてから抱き合ったのは今日が始めてのことですから・・・・な、何かちょっとドキッとしちゃいます・・・・
「ア、アハハハハ・・・ですけど、お兄様は何だかエッチで・・・・」
って・・私ってば何言ってるんでしょうか!!昨日のことこのおばあ様に言ってもどうしようもないじゃないですか〜!!
「あら?スピカ様。男性ならそれは当然ですよ〜。ましてレグルスお兄様はとてもご健康な年頃の男性ですもの・・無理もないですよ。」
わ〜っ。やっぱり・・大人の方のご意見ってば違いますね〜。な、何とか勘ぐられないで済んだみたいです・・・よ、良かった〜・・・・
「ア、アハハハハハ・・・そ、そうなんですか?」
「そうですよ〜。私もバカ変態兄でしたから、よく分かります・・・最も、私の兄とレグルスお兄様は全然根本からして違いますけどね〜、ンフフフフッ。」
「あ、は、はぁ・・・アハハハハ・・・」
「あぁ、それよりスピカ様。もう少しでご朝食の支度が整いますから・・いつもの席に座ってお待ち下さいね。」
「あ、はい。」
私がいつも座っている席は、窓側の方なんです。景色が見れないのは残念なんですけれど・・・家の内装見てるのも結構楽しいですよね!
今まで話して下さったおばあ様も厨房の方に行ってしまわれて、少しの間1人だったんですけれど・・・・パタパタと足音が聞こえてきたと思ったら、お兄様がヒョコッと顔をお出しになりました!
「スピカ、ごめんね・・お兄様はこれから仕事でね。さっきの続きは・・今日の夜にたっぷりと、ね・・・・」
「!お、お兄様!!私、これから食べるんですよ!?不謹慎です!」
「アハハハハッ、ごめんごめん。それじゃあ・・夜になったら私の部屋においで。待っているからね・・・・」
私はドキッとしながら返事をしました。
「あ・・は、はい・・・・」
「うん・・それじゃあ、またね。」
それからすぐにお兄様はパタパタと走って行ってしまいました・・・・お兄様にこうして一瞬でもお会い出来たことが、嘘のように嬉しいです・・・・ですけど、すぐにお兄様は行ってしまわれて・・・一気にまた寂しい気持ちが私の中に流れ込んできました。
ですけど・・・お兄様には夜にまたお会い出来ます・・・・夜までが、長そうですけど・・・きっと、何とかなりますよね!!そういえば・・丁度読みたかった詩集もありましたし・・それできっと時間潰せるって・・信じたいです。
私は運び出されてきた朝食をいただきながら、ずっとお兄様のことを想っていました・・・・・・
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