第12話 (休みってのはイイんだけど、肝心の姉さんはゴールデンウィーク特有のイベントで忙しいみたいなんだよね〜・・・さすが売れっ子アイドル。) そう、ゆっくり家の中で時を過ごそうにも大好きな姉・悦子がいないと1人で家にいてもつまらないだけである。それに及子の友達である七馬と沙織は大財閥でその動向が注目されているし、芸能リポーターのテルもそのような有名人達のバカンス取材で忙しそうだ。 「何かパッとしねぇ顔してんな?おまえ。明日から休みだってのに、嬉しくねぇの?」 七馬の意味深な発言に、今度は及子が驚く番だった。 「はぁっ!?誘うって?」 七馬が少し驚きながら及子にそう言うと、及子は苦笑してそれに答えた。 「いや、実はあたしが姉さんに頼んでるんだ。お仕事の詳細はあたしに言わなくてイイよって。」 七馬の驚きがますます強くなった。及子は苦笑したまま話す。 「ン・・前に姉さんがあたしを自分のコンサートに呼んでくれたことがあったんだけど・・・そこで「妹」ってコトでやたら注目浴びちゃって、恥ずかしいやら何やらで・・・あの時は本気で逃走したいと思ったよ。もうあんな経験したくないから、それで・・・・」 七馬が笑顔で及子にそう誘いかけた、その時だった。及子と七馬の背後から「及ちゃ〜ん。」という優雅な女の子の声が聞こえてきたのは。 「えっ?沙織!?」 及子と七馬が振り向いてみれば、そこにいたのは優雅な大財閥の美少女・厚木沙織と芸能リポーターのテルだった。 「ハァ〜イ!及子サ〜ン、七馬ク〜ン!ah〜、お2人の会話を邪魔する気はなかったんですが・・・・」 沙織が少しムッとした表情で七馬にそう言った。沙織は本気で七馬が及子の傍にいることを反対しているようだ。 「おまえには関係ねぇだろ?俺がこいつと一緒にいて何が悪いんだよ?」 何やら沙織と七馬が衝突したことで、今回は及子自身が割って入って宥めた。 「そんなことないのですわ。及ちゃんはとても奇麗で可愛いんですの。だからこそ不安になるのですわ。」 どう見てもおしとやかで優雅な沙織が武術に明るいとは思えない。しかし及子の驚きをよそに、沙織は返事をした。 「はい。弓道と、拳法の方を少々・・・」 七馬の突っ込みにテルが補足を付け加えたことで、及子の驚きは更に膨れ上がる。 「えぇっ!?そうなの!?沙織ってすごいんだね〜!!護身みたいな感じ?」 沙織が笑顔でそう言うと、テルも屈託のない笑顔を見せた。 「そですね〜。今はすっかり沙織サ〜ンのknightになってしまってますね〜。」 沙織とテルの間に、及子は友達以上の感情を見出した気がしたのでそう尋ねたのだが・・・すぐに沙織が優雅な笑顔でそれに答えた。 「まさか、そんなことはございませんわ。私は生涯、心霊のみに心を預けると決めておりますから。」 また2人の言い争いが始まってしまった。及子はアワアワとしてしまい、もう1人及子と同じ立場にいるテルに目を向けてみた。するとテルは優しい笑顔で及子の傍に来た。 「始まっちゃいましたね〜。さすがに今回は及子サ〜ン自身が出たのでダイジョブかと思ったんですけど、ダメでしたね〜。」 及子がそう聞くと、テルは優しい笑顔のまま答えた。 「中学の時に、ボクが日本に来たんです〜。その時、七馬ク〜ンと同じclassだったんですよ〜。七馬ク〜ンは何も分からないボクに、日本の色んなコトを教えてくれました〜。沙織サ〜ンにお会いしたのは、七馬ク〜ンの少し後だったんですけど・・・沙織サ〜ンも七馬ク〜ンも、ボクに優しくしてくれました〜。大体の人はボクが行くだけで逃げちゃってたんですけどね・・・沙織サ〜ンと七馬ク〜ンだけは、そうじゃなかったんです。それ以来、お世話になってますね〜。」 テルは本当に心の優しい人なのだなと及子は思った。本当に嬉しそうに笑顔で話すテルを見て、及子も嬉しくなってしまった。 「あたしも嬉しいよ、テル!そして姉さんがお世話になってるようでごめんね。」 そうして2人が笑い合ったその時だった。沙織と七馬が話に混じってきたのは。 「オホホホホッ。仲睦まじいですわね?及ちゃん、テル。」 七馬が少し複雑な表情でそう言うと、テルはニッコリと笑ってみせた。 「そですね〜。でも沙織サ〜ンのknightもしてますし、cuteなgirlと仲良くしたいのがホンネです!」 それから及子も含め、皆で楽しく笑い合った。いつまでもこうして楽しい時間が過ごせれば良いのに、と思いながら、明日からのゴールデンウィークのことを考えると憂鬱で仕方なかったのだった。 |