第14話

「特に何もないけど、寛いでってね。」

「別に、おまえがいてくれりゃ〜何だってイイよ。」

七馬はサラッとそんな殺し文句を言いながらコーヒーを飲んだのだが、及子としては只事ではなかった。一気に顔が熱くなるのが自分でもよく分かる。

「か、か、七馬!?な、なな、何言ってんの!?」
「フッ・・おまえ、顔真っ赤だな。おもしれぇヤツ。」
「!や、やっぱりからかってる?」

まんまと七馬の口車に乗せられたと及子は思ったが、七馬はすぐにそれを否定した。

「いや。別にからかってねぇよ。」
「ウソつけ!!大体あんなセリフ、そんなポンポンと出てくる人なんていないって!」
「んじゃあ、どう言えばイイんだよ。別に俺、ウソついてないぜ?」

七馬が少し眉をひそめてそう言った。及子は少し顔を赤くしながら抵抗する。

「表現の仕方ってのがあるでしょ!?誤解されないような言い方してよ!!」
「・・何だよ、その誤解されねぇ言い方って。」
「だから!!!あんたのさっきのセリフ、殺し文句に聞こえたの!そーゆーのって、女の子ならやっぱ意識しちゃう人多いんじゃないかなって、そーゆーコト!!」
「ふ〜ん・・・・じゃ、おまえ俺のこと意識してくれたワケ?」
「はぁっ!?」

どうして七馬はこんなに余裕なのだろうか?アイスコーヒー片手に余裕の笑みを浮かべて及子を見ている七馬のカッコ良さに及子はクラクラしつつ、負けじと言った。

「あんたバッカじゃないの!?あり得ないでしょ、んなコト!!」
「どうしてそう断言すんだよ。」
「どうしてもこうしても!!そもそもあんた、彼女いるのにそーゆー誤解されるような言い方するの良くないって、つまりはそーゆーコトなの!!」

及子が早口でそうまくし立てると、七馬は今思い出したかのようにポンと手を打った。

「あぁ、そのコトなんだけどよ〜。それまで付き合ってたヤツとは別れた。」
「はぁっ!?ななっ、何で?」
「何でって・・前に言っただろ?俺は元から別れる気だったんだよ。」
「んじゃあ、今は別の彼女と付き合ってんの?」
「何だよ、別の彼女って。今はフリーだよ、誰もいねぇ。」

七馬がそう言うと、及子は「ええぇぇーーーっ!?」と声を大にして驚いた。七馬は及子のその反応を見て苦笑いを浮かべる。

「そんなに驚くようなコトじゃねぇだろが。」
「いや、驚くっつの!!!だって今や天下の大財閥のお坊ちゃまがだよ?彼女いないって分かれば皆すごい勢いでくるんじゃな〜い?」
「彼女いようがいまいが、あんまそーゆーの変わんねぇけどな。」

七馬は余裕でそう言い切り、一口コーヒーを飲んだ。及子は興味津々で七馬に尋ねる。

「えっ?んじゃあ、早くも一杯告白されてるワケ?」
「そーゆーコトだな。毎日ラブレターくるし・・・」
「うわ〜っ!毎日とか超あり得ないって!!やっぱ国民的アイドルは違うね〜。」

及子がそう言うと、七馬は途端に暗い表情をした。そのことに及子は驚いて七馬を見る。

「えっ?七馬、どうしたの?具合悪くなった?」
「いや・・何でもねぇよ。」
「何でもないって顔してないんだけど?」
「・・・・違うって言われると、スッゲー距離感じるから・・・」
「へっ?」

囁くように小さく言った七馬の言葉が及子にはよく聞き取れなかった。驚く及子を見て、七馬は笑顔を見せる。

「わりぃ、気にすんな。それよりさっきのエリカ・ワルケリアだけどよ、あれ玄関置いたままだろ?」
「えっ?あっ、そういえばそうだった。」
「あれは、日当たりの良い外に出した方がイイんだぜ?」
「そうなんだ・・・じゃあ、出してくる。」
「俺も一緒に行く。面倒見てやんねぇとな。」

ということで、七馬と及子は揃って部屋を出て、玄関の方に行った。それから及子がエリカ・ワルケリアを手に取り、七馬が先に庭の方に出て様子を見ていた。

「あぁ、そうそう。この日の照ってる所がイイな。」
「んじゃあ、ここに置くね。」

そうして及子は七馬の指定した場所に観葉植物を置いた。それから七馬はしゃがみ込み、何やら作業しているので及子も七馬の隣にしゃがみ込んで見た。七馬は無駄のない動きで何かを摘み取っている。

「七馬、何してんの?」
「管理作業ってヤツ。咲き終わった花は摘み取ってやるとイイんだ。」
「へぇ〜。そういえばさっき、匠さんが七馬の家って緑を大事にする所だって言ってたよね?」
「あぁ、家訓の1つなんだ。」
「はぁっ!?家訓なの!?」
「まぁな。沙織の所だって、「太陽の光に感謝しろ」ってのが家訓の1つになってんだぜ?似たようなモンだろ。」

七馬の言ったことに及子は更に驚いた。開いた口が塞がらない状態である。

「そうなの!?大財閥の人達って、スゴい家訓があるんだね・・・・」
「まぁな。自然の恩恵を大事にしろってヤツ?昔大財閥だったヤツらの所でも、水やら大地やら色んなモン大事にしろっていう言い伝えあったぜ?それが俺んちは緑ってだけの話。」
「なるほど〜。でも七馬は、実際植物好きっぽいね。」
「そうだな、趣味の1つになってるし。」

そう言う七馬の表情は、本当に楽しそうだ。悦子が先ほど匠に言っていたが、及子も心を決めて言った。

「良い趣味だね・・・・あたし、女のクセに植物とかそーゆーの全然知らなくて・・・」
「ふ〜ん。んじゃ、俺と一緒にこれ育ててみる?」
「えっ?」

及子が驚いて七馬を見ると、七馬もまた及子を見た。及子は七馬と至近距離で目が合ったことでつい視線を反らしてしまったのだが、七馬はそのまま及子を見つめていた。


  

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