第15話 「あ、あの・・そんなに、見ないで・・・・」 七馬に余裕でそう言われてしまい、及子は悔しかったが認めざるを得なかった。 「て、照れるよ、当たり前じゃん!!だって七馬は・・・・!!」 つい勢い余って「カッコ良いし、好きだから」と言いそうになったのを及子は堪えた。だが一方の七馬は不思議そうに及子を見ている。 「・・俺は何だよ?」 そうして七馬が立ち上がったことで及子も立ち上がったのだが・・・七馬が及子に改めて声をかけた。 「それより。さっき言いかけたのは何だよ?」 顔を赤くしてムキになる及子を見て、七馬は面白そうに笑いながら言った。 「あれのどこが何でもねぇんだよ?俺に見惚れた?」 自分で言うヤツは最悪だと及子は思っていたのだが、七馬の場合事実なので言い返せないのが無性に腹立たしい。及子はキッと七馬をにらみつけた。 「自惚れてるヤツって最低・・・・」 まともに聞かれると及子は弱くなってしまう。七馬は再度面白そうに笑いながら及子を見ていた。 「・・ま、言いたくねぇならイイよ。ハァッ・・それより一仕事したら喉渇いちまった。戻ってアイスコーヒー飲んでイイか?」 そうして2人で家の中に入り、及子の部屋に戻った。七馬は一気にアイスコーヒーを半分ほど飲み、及子はその七馬の飲みっぷりに驚くこととなる。 「ハァ〜。一仕事した後の冷たい飲み物は最高だな。」 及子がそう言うと、七馬は苦笑した。 「しょうがねぇだろ?パーティーとか出る時は普通に飲まなきゃなんねぇんだからさ。」 及子は七馬のその言葉に驚いた。やはり大財閥の人達は全然違うな〜、と感心して及子は七馬を見た。 「そうなんだ〜。さっすが大財閥・・・・そういえば、ずっと気になってたんだけどさ〜。今日って豪華ディナーに行くんじゃなかったの?」 及子がそう聞くと、七馬は軽く頷いた。 「あぁ、それはやめたんだ。」 あっさりとカッコ良い笑顔でそう言った七馬に、及子は一気に顔を赤くした。 「はぁっ!?そそっ、それってどーゆー意味!?」 及子がムキになってそう言うと、七馬が笑い出した。 「ハハハハッ。おまえ、ホントに分かりやすいよな。顔赤いぞ?」 及子がなおもムキになってそう言うと、七馬は苦笑した。 「ひっでぇ〜な、それ。せっかくおまえに会いに来たってのに・・・」 何で七馬はこうも殺し文句を連発してくれるのだろうか。及子は「ハァッ・・・」と深く溜め息をついて七馬をジロッと見た。 「だからどうしてそーゆー誤解するような言い方すんのよ、あんたは・・・・」 余裕の笑顔で七馬にそう言われて、及子は一気に顔を赤くした。その様はユデダコのようだ。 「なっ・・・!あ、あんたね〜!!人をからかうのもいい加減にしてーーーーー!!!」 及子の大絶叫がしばらくこだました。どうして七馬はこんなに魅力的で余裕があるのだろう。自分は完全にからかいの対象でしかないと思うと悲しかったが、七馬とこうして一緒にいる時間に、楽しさと幸せを見出していたのも確かだった。 |