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「おい、スピカ。レグルスは今日時間が取りにくい。どうせ今日は俺がおまえをここに連れてきたんだ。今日のおまえのメインの相手は俺だ。いいな?」

キャ〜ッ!そっ、それは全然構わないんですけど〜。それより「噂」って何なのか気になります〜!ですけど私は、その疑問よりこの男性さんへのお返事が自然と出てきました。

「あ・・はっ、はい!」
「じゃ、行くぞ。スピカ。」
「ごゆっくりどうぞ〜。」

そうして私は、このサングラスの男性さんと共に沢山のテーブルを通り過ぎて行きました。あっ・・前回来た時同様、お客さんが沢山いらっしゃってて活気付いてますね〜・・・・と、思っている内に到着したようです。

「適当に寛げ、スピカ。」
「あっ。は、はい!」

・・「適当に寛げ」って、座るだけなんですが・・あら?私、少し距離を置かれて座られてませんか?

「あぁ、そういえば自己紹介がまだだったな。俺はアトラスだ。今日おまえをここにナンパしてきた以上、ずっと相手をするから・・・よろしく頼むぜ?スピカ。」
「あっ、はい!アトラスさんですね?あの、今日はどうぞ、よろしくお願い致します・・・・えっと、あの・・アトラスさん?もしよろしければ、もう少しお傍に来て下さっても・・・・」
「フッ、スピカ。おまえ、この店は2度目か?」

アトラスさんはそう言いながら、私のすぐ隣に来て座って下さいました。この方が、嬉しいですよね!

「あ・・はい。そうです。」
「だろうな。スピカ、俺達は客に「隣に来い。」と指定されない限り、隣に座ってはいけないことになっている。そう、今さっきのおまえのように言われない限りは、自分から勝手に隣に座っちゃいけないんだ。忘れるんじゃないぜ?」

あっ、そうだったんですか〜・・・・そういえば、プレアデス先輩と初めてここに来た時も、先輩がレグルスさんに「真ん中に来て。」と仰ってから真ん中に座られましたよね?レグルスさん・・・・なるほど、納得です。

「あ・・はい、分かりました。あの、教えて下さいまして、ありがとうございます!」
「フッ・・噂通りの客だな。ナンバーホストが気に入るのも無理はないぜ・・・・知ってるか?おまえ、この間プレアデスと来店しただろう?あの時おまえらの相手をしたのは、レグルスとミザールだったな?」

えっ・・・・?あの、どうしてそのことをアトラスさんがご存知なんでしょうか・・・・?私は心の中で疑問に思いながらも、その疑問をアトラスさんに言うことなく普通に返事をしました。

「あ・・はい、そうです。」
「あいつらがおまえを気に入ったのはもちろん、オーナーまで気に入ったとなっちゃ、この店始まって以来の大混戦の予感だぜ?それに俺も加わるとなれば、ますますそれはヒートアップする・・・・いいな、悪くない。ククククッ・・・・あぁ、スピカ。おまえはさっきレグルスのことを指名していたが、あいつに毒されたか?」

えぇっ!?ど、毒されたって・・・・ですけど、レグルスさんの魅力の虜になってしまったのは確かなんですよね〜・・・・私にとってのレグルスさんは、とても大きい存在です。

「あ・・多分、そうです・・・・レグルスさんは、とても魅力的な方なので・・・・」
「ほう、今の所はレグルスか・・・・だが、いずれその内、おまえのその心を俺に傾けてやるぜ?覚悟しとくんだな、スピカ。」
「えぇっ!?」

せっ、宣言されてしまいました!と、言うか・・・改めてよく拝見すると、アトラスさんは本当に格好良い方です。お顔だけで判断してはいけませんけれど、ここのホストの皆様って、本当に美形な方ばかりですよね〜・・・・って、ちょっと待って下さい。今はアトラスさんだけですけど、後からレグルスさんも来て下さるんですよね?・・その内、皆様のあまりの素敵さにクラクラしてしまうかもしれません・・・・

「ハハハハハッ!!いいな、おまえのその顔!鳩が豆鉄砲くらった顔そのものだぜ!・・っと、それより。そろそろ一杯どうだ?スピカ。」
「あ、はい・・・」

そうして相変わらずメニュー表を見せられてしまった私だったんですが・・・・すみません。お酒飲めないんです〜・・・・

「そういや〜、おまえ初めて来た時何飲んでったんだ?」
「え、えぇ〜っと。ウーロン茶です・・・・」
「はぁっ!?ウーロンだと〜!?」

す、すごい勢いでアトラスさんに驚かれてます〜!でも、無理もないです。このメニュー表、ウーロン茶の名前が書かれていませんから・・・・あの時はレグルスさんがすぐに気遣って下さって、それでウーロン茶にして下さったんですよね。

「あ・・はい。すみません!私、お酒飲めないんです・・・・」
「おいおい、マジかよ・・・・んじゃ、仕方ないな。ウーロンでいいのか?確か2本で1000ゴールドだったよな〜、あれ・・・・」
「あ、はい。そうでした・・・・あの、本当にすみません!アトラスさん!あの、お代金は払いますから、アトラスさんの飲みたいものを飲んでいただいても・・・・」
「んなことは出来ないんだよ。フッ・・まぁ、いいさ。たまにはな。」

そうしてアトラスさんはヘルプの電話を入れていたんですけど・・・・丁度アトラスさんがその電話を終えてからこちらにやって来られたのが、お待ちしていたレグルスさんでした!
キャ〜ッ、キャ〜ッ!今日も色っぽくてカッコ良くて、とっても素敵です〜・・・・って、無理もないですよね。そうそんなに人って変わりませんし・・・・

「やぁ、スピカ。失礼するよ。遅くなってしまってごめんね。」
「いえ、こちらこそ!お忙しい中こうして来て下さいまして、本当にすみません。」
「いいんだよ。おまえの為なら、問題ないさ・・・それより、アトラスと一緒だったのかい?目を光らせておかないと危険だね。アトラスは手が早いから、襲われてしまいかねないよ?」
「えぇっ!?」

なっ、なな、何ですか〜!?それ〜!?と、いうか・・・・レグルスさん、そんな楽しそうな笑顔を浮かべて仰られても、かえって困ってしまいます〜!

「フッ、レグルス。最近の俺は、そう簡単に手出しはしないぜ?むしろおまえがスピカを襲いかねん。この間は、いきなりスピカに顔を近付けたんだろう?おまえの方が余程危険じゃないか?」
「あぁ、確かにあの時は危なかったね。スピカがあまりに可愛かったものだから、つい・・ね。」

そうしてレグルスさんはお座りになられたんですけど・・・・あ。確かに私と距離を置いて座ってますね、レグルスさん・・・・寂しいです〜。

「そっ、そんな・・・・あの、それより。お傍に来ていただけませんか?レグルスさん。」
「あぁ、いいのかい?フフッ・・こんな話をしているというのに、おまえは冒険家だね。」

レグルスさんって・・・本当に、どうしてこんなに余裕があるんでしょうか?その余裕ある微笑が、とても素敵でカッコ良くて・・・・自然とレグルスさんに目がいってしまいます〜・・・・
そうしてレグルスさんが私のお隣に来て下さった時、新人のホストさんたちが来てウーロン茶とグラスを置いていって下さいました。あっ、グラスってあらかじめ多く持ってくるものなんですね。レグルスさんの分のみならず、いくつか余裕を持って置いていって下さいました。
それからすぐに、レグルスさんが私とアトラスさんの分のウーロン茶を全部注いで下さいました。

「それじゃあ、スピカ。いただくよ。今日も可愛いおまえに乾杯。」
「おまえ、相っ変わらずよくそんなセリフを平気な面して言うな・・・・まぁ、いい。俺もいただくぜ?スピカ。乾杯だ。」
「あっ、はい。乾杯です!」

そうしてお2人と乾杯して、一口ウーロン茶をいただきました。あ・・レグルスさんも合わせてウーロン茶飲んで下さってますけど、大丈夫でしょうか・・・・とても申し訳ない気分です〜・・・・

「・・ごめんね、スピカ。本当はもっとおまえの相手をしていたい所なんだけど・・・・今日は私を指名してくれているお客が多く来ていてね、またすぐに別のテーブルに行かなきゃならないんだよ。今度来てくれる時は、おまえの為に時間が取れればいいね。」
「あ・・はい!ですけど私は、そんなお忙しい中、レグルスさんとこうしてお会い出来ただけで、とっても嬉しいです。あの・・ありがとうございます。」

私が笑顔でそう言うと、レグルスさんのみならず、アトラスさんもとても驚いた表情をして私を見てました。
えぇっ!?私、また何か変なこと言っちゃったんでしょうか〜!?

「・・レグルス、よぉーーっく分かったぜ。おまえがスピカに顔を近付けた背景の裏をな・・・・」
「フフッ・・分かってくれて助かるよ、アトラス・・・・スピカ、おまえは本当に可愛いね。一気に酔わせてもらったよ。」
「えぇっ!?あ、あの、そんな!酔わないで下さい〜、レグルスさ〜ん!」
「アハハハッ・・心配してくれるのかい?スピカ。嬉しいね、ありがとう。」

・・そう仰っていても、レグルスさんは相変わらず余裕です。どうしてこんなにカッコ良いんでしょうか、レグルスさんって・・・・

「フッ・・スピカ、レグルスのことを心配することはない。確かにおまえに酔ってるようだが、余裕あるぞ〜?こいつ〜。」
「おやおや・・私とスピカの仲を、妬いてくれているのかな?」

アハハハハ。まさか、そんなことはないですよ〜、レグルスさ〜ん・・・・と、私は心の中だけで突っ込みを入れました。

「誰がんなことするか。むしろおまえの方が、俺に妬いてんじゃないのか?フッ、もっと妬かせるようなことを言おうか?レグルス。今日は、俺がスピカをこの店に連れてきたんだぜ?」
「へぇ〜。自分の常連客のことを棚に上げて客引きかい?スピカは素直で否定するようなことはしなさそうだから、おまえの言うことに従って来たんだろうけど・・・怖くなかったかい?スピカ。」

た、確かに最初は怖かったですけど・・・・今は、アトラスさんがとても良い方だと分かったので・・・・でも、少し怖いかもしれません・・・・

「あ・・はい。ちょっとだけ、怖かったです・・・・」
「アトラス、おまえはいつもそうだね。もう少しまともに客引き出来ないのかい?」
「ナンバー1だからって、そう言うのは良くないぜ?レグルス・・・・女ってモンは、知らない男に声かけられれば、どんなヤツだって怖がるさ。取り分け俺達ホストのような男は尚更だ。」
「・・・確かに、ね・・・・悪かったよ、アトラス。さすがに、元経営者に勝つのは難しいかな?」
「えぇっ!?」

ちょっと待って下さい。元経営者って、どういうことですか!?アトラスさんが・・ってことですよね!?


  

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